2021.12.29

【スタッフコラム】へんてこコレクション byすみちゃん

フィリピンと言えば皆さま何を思い浮かべるでしょうか? フィリピンは7000もの島がある国で、海をイメージする方が多いかもしれません。ですが、首都マニラのあるルソン島の北部にはバナウエ・ライステラスという大きな棚田が世界遺産に登録されていたり、南部にはいまも噴煙活動を続ける秀麗なマヨン火山があったりと、非常に自然にあふれている国なのです。

私はフィリピンの映画監督であるキドラット・タヒミックの作品が大好きで、タヒミック監督の地元であるバギオを訪れました。バギオは、フィリピン北部ルソン島のコルディリェラ行政地域にある都市で、フィリピンの首都のマニラからバスで6時間ほど北上したところに位置しています。標高約1500mにあり、気候は年中を通して非常に涼しく過ごしやすい地域です。バギオの街はすり鉢状になっており、巡っていると、ぐるぐると自分がどこにいるのか分からなくなっていきます。建物の色がカラフルなので、なおさら不思議な世界に紛れ込むようです。

キドラット・タヒミック監督は、フィリピンのインディペンデント映画の巨匠であり、ドキュメンタリーとフィクションが混ざり合った日記のような映画を作っています。初長篇映画『悪魔の香り』(1977)はタヒミック本人が主人公を演じていて、彼はジプニー(小型乗合バス)の運転手をしつつ、宇宙飛行士に憧れを抱いて暮らしていて、ある日運転しているジプニーをアメリカ人のビジネスマンが気に入り、そこからパリ、ニューヨーク、ドイツと旅に出るお話です。教会の塔を玉ねぎと表現するなどとてもユニークな視点で描かれるのと同時に、フィリピン社会に染み付いた植民地主義や、近代化へ疑問を投げかけていきます。タヒミック監督はその後も意欲的に作品を作り続けていて、『500年の航海』(2017)はなんと35年の歳月をかけて作られました。

作品をひとつひとつご紹介したい気持ちでいっぱいなのですが、今回はタヒミックがオーナーを務めるヘンテコで素敵な建物「Ili Likha(イリリカ)」をご紹介します! iliはルソン島の言語であるカンカナウイ語で「村」を意味し、likhaはタガログ語で「創造する」を意味しています。外観もとても面白く、まるで大きな木が家になったみたいな、非常に有機的で今にも動き出しそうな見た目です。テレビの枠が窓枠になっていたり、床がくねくねした金属の棒でできていたり、廃材で壁や床がデコレーションされていたりと、どこを見ていても飽きません。また、イフガオ族の彫刻などフィリピンの伝統的な装飾があらゆる場所にあり、複数の芸術家が力を合わせて作ったのです。なんと全体が出来上がるまでに10年もかかっております。

私が訪れた時には、1階のエントランスでフリーな音楽ライブが行われていて、2階でコーヒーとデザートを食べながら聴いていました。建物自体の面白さもそうですが、Ili Likhaに集まる人々は、みな思い思いにフードやアートを楽しんでいるようです。私がこの施設で一番感動したのが映画館! 白い大きな布が張られたスクリーンの周りには木でできた彫刻があり、椅子も、壁も、すべて木で出来ています。椅子もひとつひとつ手作りなので、座るとより特別な気分になります。なんて温かみのある映画館なのでしょうか!? 映画の上映はされていなかったのですが、この空間で観る映画は格別だろうなと思いました。そして、映画館内にもタヒミック監督が大切にしているフィリピン人の持つ本能的な感性や価値観が肌で感じられてとても幸せな気持ちになりました。もしフィリピンに行く機会があれば、ぜひ皆さんに訪れて頂きたい場所です。

まだまだご紹介したい東南アジアのへんてこシリーズ。海外に行ける日を心待ちに、今後も書いてまいります。

(すみちゃん)