2021.11.03

【スタッフコラム】シネマと生き物たち byミ・ナミ

子どもの頃、「ドードーを知っていますか―わすれられた動物たち」という本をとても大事にしていました。ドードーをはじめ、リョコウバトやフクロオオカミといった、もう地球上から姿を消してしまった動物たちを、宝石のように美しく彩色した絵本でした。目に麗しい見た目の一方で、どのように動物たちが絶滅していったか、いかに人間が愚かな破壊を繰り返してきたかが書かれた内容は、絵本にしてはとてもシビアだったことを記憶しています。その動物たちの一種に、オーロックスという牛がいたのでした。

今回ご紹介するドキュメンタリー映画『彼女の名前はエウローペーだった』では、絶滅してしまったオーロックスという野生種の牛をよみがえらせようという試みが語られます。その方法はさまざま。まず、1920年代よりドイツ人のヘック兄弟がベルリンおよびミュンヘンの動物園において、現存するウシの中からオーロックスに近い特徴をもつものを交配させその姿をよみがえらせようと挑みます。このウシは体形や性質はオーロックスに近いものの体格はいくぶん小柄にはなっているそうです。映画の中では遺伝子研究で近似種と掛け合わせたりする本格的な挑戦も描かれます。中でも私が共感したのは、オーロックスの原寸大フィギュアを作る作業でした。今はもう失われた存在に魅了されきった男女がディスカッションをし、「ああだったに違いない」「こうだったはず」と、毛色や角の大きさなどを考えていきます。そして出来上がったリアルな1/1スケールのオーロックスを野原へ連れ出して写真を撮影するのです。その情熱、偏愛ぶりには愛おしさすらおぼえてしまいました。人間が破壊したものを、またもう一度人間が取り戻そうとする営みは皮肉なようでもありますが、何度でもやり直そうとする執念のようなものも感じます。

「ドードーを知っていますか―わすれられた動物たち」は、引っ越しの途中でどこかへ行ってしまったようで、今は手元からなくなってしまいました。それでも『彼女の名前はエウローペーだった』で、立体で再現されたオーロックスの瞳を目にしたとき、絵本に描かれていた彼らの大きくて優し気でありながら悲しい眼差しを思い出したのでした。どうにかしてもう一度手に入れて、読み直したいなと思っています。

https://bookmeter.com/books/1695555

(ミ・ナミ)