2021.10.14

【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田

二十四節気:寒露(かんろ)、次候:菊花開(きくのはなひらく)

やっと昼でも気温が下がってきましたね。10月の上旬は暖かい日が多く、まだまだ半袖の服をしまい込めませんでしたが、ようやく本格的に秋が深まってきました。珍しいことに昨年に続いて二年連続同じ節気と気候【寒露/菊花開】をご紹介することになりました。10月14日は、2021年の陰暦9月9日にあたるのでちょうど五節句のうちの一つ「重陽の節句」、別名「菊の節句」と言われています。秋の収穫祭の時期とも重なるので「栗ご飯」や蒸した菊の花に冷酒を注ぎ一晩香りをうつした「菊酒」など秋の食材で無病息災を祈ります。

日本映画ファンなら馴染みのある溝口健二監督の『残菊物語』の「残菊」は実はこの陰暦9月9日を境に残って咲いている菊のことを言うそうです。元々中国ではこの「残菊」は重陽節に間に合わなかった花として、単に時期が遅れて無用になってしまったものというニュアンスが強いらしいのですが、日本では遅くまで咲き誇る花の姿を愛でることが多いそうです。「残菊」を指して詩歌を詠む場合にも時期の差も大きく、重陽節を過ぎてすぐの菊のことを指す中国に対して、日本では冬のはじまりまで長く残って咲いた菊のことを指すのに用いることが多いそうです。日本で最初に「残菊」のことを詠んだのは菅原道真と言われ、移り去っていく時間の流れとともに、いつまでも咲き残っていく残菊を詠むことが多かったそうです。まさに様々な日本の文化につながる美意識だなと思います。一番キラキラと輝く時期だけでなく、ゆっくりと枯れていくことのなかにある良さを愛でる気持ちや、その姿の中に見出せるもの。忙しい日々の中では見逃してしまいそうですが、もう少し心に留めてみたいものです。

(上田)