2017.10.26

【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO

今回は、早稲田松竹の日常から飛び出し、国立近代美術館フィルムセンター初の70mmフィルム上映『デルス・ウザーラ』(1975年、黒沢明監督)へと行ってきました。

私とフィルムの出会いは、学生時代の実習で16mmに触れた事でした。フィルムに関する作業はとてもアナログで、手作業が好きな私に合っていました。また、フィルムのカメラや編集機材、映写機は男心をくすぐる武骨なギアやローラーが剥き出しで見ているだけでワクワクし、動き出すとロマンいっぱいです。そんな私はまだ見た事のない、より大型の70mmフィルムやその専用機材に興味を持つようになりました。しかし、現在の日本では70mmフィルムを上映できる映画館はないそうで、今回の貴重な上映を知り、足を運んだというわけです。

今回の上映は、35/70mm兼用のドイツ製映写機を2台使用し、上映中は映写室で技師さんが、重さ15キロものフィルムを15~20分おきにフィルムを交換するという「巻掛け」と言われる方法で映写すると紹介されました。35/70mm両方のフィルムを兼用できる映写機の構造を妄想し、上映素材に合わせた映写機のパーツの入れ替えや、調整は大変だろうけど楽しそうだなと、まだ見ぬ世界に思いを巡らせ私の心は踊りました。

現在、70mmを上映する事は、それを扱う技術や人材、機材確保が困難なため難しいそうです。そんな状況の中、スクリーンに映し出された『デルス・ウザーラ』は、私の心に美しく刻まれました。そして、映画は、沢山の人の努力があって初めて力を持つと、至極根本に気づかされたのです。人と関わりながら、今もなお変化を続ける“映画”の魅力を再確認できた貴重な体験となりました。

(KANI-ZO)