2021.04.01

【スタッフコラム】へんてこコレクション byすみちゃん

昨年の春、緊急事態宣言が発令されて、家にいる時間の多かった私が夢中になったこと、それは料理でした。工夫をしたものがすぐ目の前に現れる達成感と、出来上がったものが美味しかった時の幸福感たるや! 料理が得意な友達にレシピを聞いたり、本を買ったり、どんどん意欲的になっていきました。そして自粛中になかなか出かけられない中、訪れたのが八百屋です。野菜は旬なものは色が鮮やかだったり、ふっくらしていたりと、変化が目に見えて分かります。キャベツが美味しそうだから、今日はキャベツがメインだな! と、旬に合わせて献立を考えるのが毎日の楽しみとなりました。

そんな日々に、思いを巡らせたのが映画に出てくる“野菜たち”。今回は、野菜にまつわるへんてこ映像/映画をご紹介したいと思います! 

スーザン・ピット監督の『アスパラガス』(1979)というアニメーションでは、椅子がアスパラガスに変わったり、女性がトイレに行って用を足しているのですが、何とおしりからアスパラガスが出てきたり、窓から見える風景には大きなアスパラガスが生えていたりと、まさしくアスパラガスというタイトルにふさわしく、ふんだんにアスパラガスが登場します。手描きの緩やかな線と、精密な植物や部屋の描写もため息が出るほど美しいのですが、アスパラガス自体の姿、形状の美しさや面白さを思う存分楽しめるような作品です。一つの野菜に対する視点と愛着を感じ、アスパラガスの茎周りにあるギザギザ(はかま)の色合いと、茎の黄緑色のあのバランス感覚! 自然が創り出した造形の美しさを、スーザン・ピットは捉えています。

そしてもう一つ、野菜映画と言えば、『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』(1978)でしょう! 題名にトマトと書いてあるように、この映画では巨大なトマトが人間を襲います! 実は農務省の行なっている秘密実験でトマトが凶暴化したという政治批判なども出来そうなお話ですが、そんな感じは毛頭ございません。トマトが狂暴化するといっても手作りで作られたはりぼての大きなトマトがゴロゴロ転がっているだけ。それを見て恐怖する人間たちを見ていると、嘘だろ!? と、思わず笑ってしまいます。トマトは丸くてかわいい見た目をしていますが、潰れて飛び出るトマトの汁は、服のシミになるなど、確かに攻撃性が無いわけではありません。そう思うと、この映画では野菜の違った一面を描いているとも言えます。

野菜という一見何の攻撃性もないように見えるものも、農薬を吸収し、遺伝子が組み替えられ、私たちの食事を実は静かに脅かしています。でもそれは野菜の意思ではないのです! 人間が、自分たちが生きるために、またはお金のために行動した結果でもあります。『タネは誰のもの』(2020)というドキュメンタリーでは、日本の野菜や作物のタネが、もしかしたら今までのように植えたり育てたりできなくなるかもしれない懸念を、種苗法改定案などを通して見つめています。身近に存在する野菜たち。だけどよく知らない野菜たちのこと。不格好だったり、豊作で市場に出回りすぎたりすると廃棄されてしまう事もあります。なんて悲しい末路。野菜たちの世界を想像すると、悲痛な声が聞こえてきそうです!

「私を助けて! 美味しく食べてほしいよ!」(あくまで私の妄想ですが)

これからも野菜と関わる際は、少しでも気持ちを考えたいものです。

(すみちゃん)