2017.03.16
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック
「ウィーンにも日本にもKath Bloomのアルバムはあった」
リチャード・リンクレイター監督の最新作『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』や『バッド・チューニング』、または『スクール・オブ・ロック』などを観ると、皆が盛り上がるようなスタジアムロックやロック史上の有名どころの楽曲が映画に使われています。「お、これ知ってる!」と多くの人が感じるような曲がリンクレイターの映画にはあると思うのですが、私にとって印象的だったのは、ビフォアシリーズの第一作目『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』で使われていたKath Bloom(キャス・ブルーム)の「Come Here」という曲です。
イーサン・ホーク演じるジェシーとジュリー・デルピー演じるセリーヌがウィーンを散歩しながら見つけたレコード店には試聴室がありました。そこで手に取ったレコードを、狭い空間で二人きりで聴くシーンがあるのですが、彼らが聴いている曲に「あれ、この声はもしかして!」と思いあたり、その後エンドロールをチェックしているとやはりキャス・ブルームの名前が。
当時レコード店のサイケデリックコーナーを手当たり次第に購入していて、たまたま出会ったKATH BLOOM & LOREN CONNORS名義の『SING THE CHILDREN OVER / SAND IN MY SHOE』というCD。シンプルなアコースティックギターの曲でありながら、キャス・ブルームの心を揺さぶる歌声、ローレン・コナーズのギターの音色だけで何かを伝えようとしているかのような唯一無二の演奏にすぐさまファンになってしまいました。
劇中で彼らが手に取ったレコードと、私が聴いていたCDは違うアルバムなので「come here」は初めて耳にしたのですが、やはり心に残る良い曲だなあと思いました。何より、私も映画の2人と同じように何気なく手に取り、そこまで知名度があるわけでもない同じミュージシャンに出会ったという些細な事柄も恥ずかしながら嬉しく思っております(よく考えたらこじつけも甚だしい)。
さて、そのキャス・ブルーム、実は2014年に来日しております。なんと早稲田松竹にもその公演のチラシが来ており、チラシラックを整理しながら発見。ロビーで「キャス・ブルームが来る…!」と興奮したものです。もちろん見に行きました。繊細で少し近寄りがたい人柄を想像していたのですが全く違い、明るくはつらつとしたとても素敵な方でした。精神的に健康でありながら、こんなにも胸を打たれる音楽ができる彼女に、言い表しがたい人間力を目の当たりにしたのでした。また来日する機会を楽しみにしています。
(ジャック)