2018.06.07

【スタッフコラム】日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ

私は駅のポスターの中で、楽しみにしている広告があります。それは三和酒造さんの本格麦焼酎「いいちこ」のポスターです。通勤途中などに「いいちこ」のポスターが貼られていると、ついつい立ち止まって見てしまいます。たとえば2016年4月のポスター。新緑の中、樹を仰ぎ見るような角度で写真が撮られており、差し込む光が葉の一部を透けさせています。キャッチコピーは「翠陰(すいいん)にひとり。」。翠陰、という言葉が何とも涼しげです。

毎回きれいな写真の中に物語性が感じられるキャッチコピーが入っていて、とてもすてきなポスターなのですが、デザイン自体はお酒と関係がないもので、いったいどうしてこのポスターが生まれるのだろうとこれまで不思議に思っていました。

ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」でこんなエピソードが語られています。それはコピーライター、糸井重里さんの奥さまでもある女優の樋口可南子さんが下戸なのに、「いいちこ」のポスターがとても好きで、あるとき三和酒造さんに「いいちこのポスターの大ファンなんです」と電話をかけてしまったという話です。そのときの担当者がとても親切な人で、どこの誰ともわからない人に対して立派なポスター集を送ってくれた上、丁寧な手紙を添えてくれたとのこと。

「いいちこ」のポスターデザインは、河北秀也さんという方が手掛けています。いまでこそあの何ともいえない独特の世界観が認知されていますが、当初はやはり、三和酒造さんはポスターの中の「いいちこ」のビンがもう少し大きくてもいいんじゃないかなと思ったそうです。でも、「デザインには口出しをしない」という約束と、「いいイメージを積み重ねていって、時間の厚みをつくっていきましょう」という河北さんの言葉を信じたそうです。そのエピソードを知ったときに、私はこれまで漠然と「いいちこ」のポスターに抱いていたイメージと、商品やお客様に対して誠実であろうとする三和酒造さんの会社の姿勢のようなものが一致するような気がしました。

ちなみに私の家のパソコンのデスクトップは「いいちこ」のポスターのお気に入り画像になっています。私も樋口可南子さんと同じく下戸ですが、もしお酒が飲めたらいったいどんな味がするのだろうなと想像をめぐらせてしまいます。

「いいちこ」のすてきなポスターや、不思議なテレビCMは三和酒造さんのHPでも見られます。興味がある方はぜひ覗いてみてくださいね。

https://www.iichiko.co.jp/

(ちゅんこ)