2022.01.27

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第21回「ファブリックの女王、アルミ・ラティア」

去年の12月、Bunkamuraミュージアムで開催されている「ザ・フィンランドデザイン展 ―自然が宿るライフスタイル」に行ってきました。なかでも印象的だったのは、日本でも人気のあるファッションブランド「marimekko(マリメッコ)」の展示です。ファブリックや服、それらを手掛けたデザイナーの紹介だけでなく、当時の広告まで展示されています。マリメッコは一般的なスタジオ撮影から、フィンランドの豊かな自然へ飛び出して写真を撮影し、それまでのファッション広告とはまったく異なるアプローチで自分たちの理念を世の中に発信していったそうです。ファッションに限らず、広告表現において今ではすっかり当たり前となった方法がマリメッコから始まったという事実に私は衝撃を受けました。

そんなマリメッコの創始者、アルミ・ラティアという女性のことをもっと知りたくなり、映画『ファブリックの女王』を鑑賞してみました。開始早々、今まで観てきたクリエイターの伝記ものと同じく、普通の劇映画だと思っていた私にまたしても衝撃が。映画は劇中劇の手法をとっていて、アルミ・ラティアの人生を舞台にすることになり、女優のミンナ・ハープキュラが稽古をしながら彼女の人生に思いを馳せていく、という設定で物語が進んでいくのです。この斬新な手法に加え、舞台美術の布や衣装が全部マリメッコのファブリックで出来ているところも含めて魅力的な作品です。

アルミ・ラティアの功績は、才能あるデザイナーを集めていままでにない柄や色づかいのプリント生地を作り、オートクチュールからプレタポルテへとファッションを発展させ、ファッションからライフスタイルの提案へ事業を拡大させたこと。そして、多くの女性クリエイターを雇用し、助け合いながら愛をもってマリメッコというブランドを作り上げていったこと。ここまでは展覧会や書籍などで知ることができますが、映画では、そうしたアルミ・ラティアの功績をたどると同時に、いままで知ることのなかった彼女の気性の激しさが露わになります。仕事に熱中するあまり家庭はうまくいかず、酒浸りになり、散財も止まらない。決して成功だけではない、彼女の波乱万丈な人生は、あのカラフルでポップで明るく可愛らしいマリメッコのテキスタイルからは想像もできません。この映画を観てマリメッコというブランドに、アルミ・ラティアと共にブランドを作り上げていった人たちに余計興味が沸いてしまった、しかまる。なのでした。

(しかまる。)