2021.10.21

【スタッフコラム】うどん粉デザインばなし byうどん粉くん

芸術の秋ということで、先日久々に美術展に行ってきました。ずっと楽しみにしていたピピロッティ・リストという現代ビデオアーティストの展示です。なんだか口に出したくなる魔法のおまじないみたいな名前(長靴下のピッピが由来だそう)ですが、展示自体も映像作品がいろんなカタチで会場の空間全体に散りばめられていて本当に魔法のようでした。おおきな壁を一度に2面くらい使ってパノラマな映像が映されていたり、食器が置かれたテーブル上に映像が広がっていたり、映像と家具が溶け込んだリビングルームが突如出現したりとピピロッティワールドに五感フル稼働でありました。

展示がこれだけ自由だと、鑑賞方法だって何でもありなのが現代アートですよね。今回のピピロッティ展も、お客さんがベッドやクッションに横たわって見たり、ソファに座ったり、様々な姿勢で自由に一緒に映像体験できる空間になっていました。

しかし私うどん粉は、ここでひとつの壁にぶち当たってしまいます。それは現代アートによくある、このフリースタイル鑑賞することがちょっと恥ずかしい問題! 他のお客さんに見られている(いや、大して見ていない)という拗らせた自意識を勝手に発動させてしまい、いまひとつこのフリースタイル鑑賞に飛び込めない自分がいるのです。あー、何も躊躇せずそれができる人たちが本当に羨ましい。だって間違いなく作品への没入感がハンパないのですから。きっとアーティストも、お客さんが自由な映像体験することを望んでいるはず…。作品の前を鑑賞者がだらだらと、ベルトコンベアーみたいに流れていく既存の鑑賞方法は嫌だな〜と感じるくせに、フリースタイル鑑賞する勇気はないのです。今回もそんな思いを巡らせ、モジモジ鑑賞していたら一筋の光が! 同行してくれた友達が寝っ転がって見ようと誘ってくれたのです。すると同じ映像でも見る角度が違うと全然違う映像になるではありませんか。もうず〜っと見てられそうでした。嗚呼、よかった。寝っ転がってよかった。友達よ、本当にありがとう。

帰り道、展示のことを反芻して胸いっぱいになりながら、今度はひとりでもフリースタイル鑑賞ができるようになりたいと思ううどん粉でありました。

(うどん粉くん)