ちゅんこ
『ザ・バイクライダーズ』は、社会的変革の波が押し寄せ、より自由な社会へと若者のエネルギーが爆発した60年代アメリカで、シカゴに実在した伝説のモーターサイクルクラブの若者たちを描いている。ある意味社会のはみ出し者である彼らにとって、自分は一人じゃない、ここに自分の居場所があるのだと感じながら、チームのシンボルでもある髑髏の紋章(カラーズ)を背負って、仲間と共に風を切ってバイクに乗るのはどれほど心地が良いことだろう。仲間と一緒のときは誇らしさの象徴でもあるカラーズだが、全員一緒のときでないと身に着けられない。なぜならみんな恨みを買っているし、一人だと怖いからだ。そんな彼らの中で、喧嘩っ早くて無口なバイク乗り・ベニーの存在は明らかに異彩を放っている。クラブに属し、リーダーであるジョニーの側近でありながらも、ベニーは群れを嫌い、何ものにも縛られない。
気の合う仲間と一緒にバイクに乗るためにはじめたクラブは支部を増やしてゆき、やがて大きくなりすぎたことによって制御不可能になってしまうが、その中でベニーが選んだ人生の選択が、実のところ私には少しだけ意外に感じられた。
「誰でも何かに属したい。みんな行き場がないから仲間になった」
メンバーの一人が映画の中で言ったこのセリフのように、バイクにすべてを捧げる男たちの青春ドラマは、人は誰も一人では生きられないということを私たちに教えてくれる。
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は、1970年、ボストン近郊にある全寮制の寄宿学校を舞台にしている。アメリカ人にとって、クリスマスは家族や親戚一同が集まって過ごす大切な行事。そんな大事なクリスマス休暇に、寄宿学校に残らなければならない人たちの交流を描いた作品だ。登場人物の一人・アンガスは皮肉屋で、頭は良いがいわゆる問題児と呼ばれる生徒だ。家庭にも学校にも居場所はなく、仲の良い友人さえいない。古代史の教師ハナムは生真面目で融通が利かず、生徒からも教師からも嫌われている。料理長のメアリーはベトナム戦争で一人息子を亡くしたばかりだ。群れに属さないアンガスたちは一見気にしていないように見えるが、その表情や瞳から、彼らの孤独や悲しみが隠しようもなくにじみ出ている。それまで共通点なんてまったくなかった3人が共に過ごす中で、想像もしなかったような絆が生まれる…。
行きずりの男の家に転がり込んで自堕落な生活を送っていたルースの妊娠問題を通して、深刻な問いを軽やかなコメディに仕上げたデビュー作『市民ルース』や、仕事一筋に生きてきた平凡な主人公が、定年退職を機に第2の人生を歩み出そうとしてさまざまな出来事に直面する様子を描いた『アバウト・シュミット』など、アレクサンダー・ペインの作品はいつもどこかほろ苦さを感じさせる。『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』もまた、わかりやすい単純なハッピーエンドではない。だけど、どうしてだろう、この作品を観終えた後、私はなんとも言えないような幸せな気持ちを覚えた。嫌われ者だったアンガスたちの間に芽生えた絆は観ている私たちの心にもあたたかな灯をともし、いつしか忘れられない余韻を残す。
ザ・バイクライダーズ
The Bikeriders
■監督・脚本 ジェフ・ニコルズ
■撮影 アダム・ストーン
■編集 ジュリー・モンロー
■音楽 デヴィッド・ウィンゴ
■出演 オースティン・バトラー/ジョディ・カマー/トム・ハーディ/マイケル・シャノン/マイク・フェイスト/ノーマン・リーダス
© 2024 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.
【2025/3/22(土)~3/28(金)上映】
駆け抜けた、儚い永遠
1960年代アメリカのシカゴ。キャシーは地元のバーで偶然ベニーという青年に出会う。ベニーは無口な荒くれものだったが、キャシーは彼に惹かれていく。そんな彼は「ヴァンダルズ」というモーターサイクルクラブに所属していたが、時代の流れとともに、クラブも変化をはじめ、暴力が渦巻く危険な集団へと変貌を遂げ、2人も危険な渦に巻き込まれていくのであった。
バイクを愛した男たちの自由と破滅の軌跡――実在した伝説的モーターサイクルクラブのインスパイアムービー
ハリウッドの豪華スター陣が初共演を果たした話題作『ザ・バイクライダーズ』。監督・脚本を務めたのは『テイク・シェルター』『MUD -マッド-』のジェフ・ニコルズ。本作は、アメリカの写真家ダニー・ライオンが、60年代シカゴに実在したバイカー集団“Outlaws Motorcycle Club(アウトローズ・モータサイクル・クラブ)”の日常を描写した1st写真集「The Bikeriders」(1968年初版)にインスパイアされている。劇中では架空のクラブ名“ヴァンダルズ”として、その創立から数年間の軌跡が事実を基に描かれる。
本作のストーリーテラーであるキャシーを演じたのは『最後の決闘裁判』のジョディ・カマー。キャシーのパートナーであり、ヴァンダルズで異彩を放つ存在ベニーには『エルヴィス』、『デューン 砂の惑星PART2』などのオースティン・バトラー。ヴァンダルズのカリスマ的リーダーのジョニーには『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、『ヴェノム』シリーズで知られるトム・ハーディ。そのほか、『ブレット・トレイン』のマイケル・シャノン、『チャレンジャーズ』『ウエスト・サイド・ストーリー』のマイク・フェイスト、「ウォーキング・デッド」シリーズのノーマン・リーダスなど個性派たちが顔を揃えた。
バイクを愛するアウトサイダーたちの唯一の居場所(クラブ)が、誰も予想だにできない形へと変貌していく――彼らを取り巻く状況の変化とともに、クラブはより邪悪な犯罪組織へと発展し、対立と憎悪を生み出すようになる。60年代アメリカを舞台に、インタビュー形式で綴られる伝説的モーターサイクルクラブの栄枯盛衰。半世紀以上にわたって私たちの想像の中に生き続けてきた象徴的なアウトロー・バイカーと、彼らが辿った反抗的な文化が、生々しくも儚さを携えてスクリーンに蘇る――ここに、バイク映画の歴史に名を刻むクールな1作が誕生した。
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
The Holdovers
■監督 アレクサンダー・ペイン
■脚本 デヴィッド・ヘミングソン
■撮影 アイジル・ブリルド
■編集 ケビン・テント
■音楽 マーク・オートン
■出演 ポール・ジアマッティ/ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ/ドミニク・セッサ/キャリー・プレストン/ブレイディ・ヘプナー/イアン・ドリー/ジム・カプラン/ジリアン・ヴィグマン/テイト・ドノヴァン
■第96回アカデミー賞助演女優賞受賞・作品賞ほか3部門ノミネート/第81回ゴールデングローブ賞主演男優賞・助演女優賞受賞/2023年全米批評家協会賞助演女優賞受賞/英国アカデミー賞助演女優賞・キャスティング賞受賞ほか5部門ノミネート ほか多数受賞ノミネート
Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.
【2025/3/22(土)~3/28(金)上映】
この日々を、きっと忘れない
1970年、ボストン近郊。名門バートン校の生徒たちは、誰もが家族の待つ家に帰り、クリスマスと新年を過ごす。しかし、留まらざるを得ない者もいた。生真面目で融通が利かず、生徒からも教師仲間からも嫌われている古代史の教師ハナム。勉強はできるが反抗的で家族に難ありの生徒アンガス。ベトナム戦争でひとり息子カーティスを失ったばかりの料理長メアリー。雪に閉ざされた学校で、反発し合いながらも、孤独な彼らの魂は寄り添い合ってゆく――。
孤独な魂が寄り添い合う…ほろ苦く、あたたかな、良質ドラマの新たな金字塔が誕生!
本作は、二度のアカデミー賞脚色賞に輝く巨匠アレクサンダー・ペイン監督最新作。日常から生まれる心の機微を繊細に紡ぎ出し、巧みなストーリーテリング、映像の美しさが高く評価され、アカデミー賞をはじめ、数多くの俳優賞、作品賞、脚本賞を受賞。主演の名優ポール・ジアマッティは生真面目でいて、切ない過去を感じさせる精密な演技を見せ、本年度アカデミー賞主演男優賞にノミネート、ゴールデングローブ賞で主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。さらに、アカデミー賞のほか、全米の助演女優賞を総なめにしているダヴァイン・ジョイ・ランドルフが、息子を失った料理長の孤独を言葉少なに体現し、新人のドミニク・セッサが家族との複雑な関係を繊細に演じる。ペインの細い糸を織り成すような丁寧な演出と3人の見事な名演が融合し、小さな心のひだの動きが刻まれた、静かなマスターピースとして結晶した。
【レイトショー】市民ルース
【Late Show】Citizen Ruth
■監督 アレクサンダー・ペイン
■脚本 アレクサンダー・ペイン/ジム・テイラー
■撮影 ジェームズ・グレノン
■編集 ケヴィン・テント
■音楽 ロルフ・ケント
■出演 ローラ・ダーン/スージー・カーツ/カートウッド・スミス/メアリー・ケイ・プレイス/ケリー・プレストン/M・C・ゲイニー/ティッピ・ヘドレン/バート・レイノルズ/ダイアン・ラッド
Images Courtesy of Park Circus/Paramount
協力:Gucchi’s Free School
【2025/3/22(土)~3/28(金)上映】
出産か? 中絶か? 深刻な問いを軽やかなコメディに仕上げた家族映画の名匠の原点!
酒浸りでシンナー中毒のルースは、行きずりの男の家に転がり込んで自堕落な生活を送っていたが、その男にも放り出されてしまった。ホームレスとなり、路上でオーバードーズして倒れていたところを逮捕されたルースは、警察の検査で妊娠していることを告げられる。行くあてのないルースは裁判官に中絶を促されるが、拘置中に出会った親切な夫婦に保釈してもらい、考えを改め出産するよう諭される。実はその夫婦は狂信的な人口中絶反対派だったのだ。そこに夫婦と敵対する中絶権利擁護派も加わって、ルースの妊娠問題は大騒動に発展していくのだが……。
アレクサンダー・ペイン監督・脚本のデビュー作『市民ルース』。自主映画として制作された本作であるが、スタッフには共同脚本のジム・テイラーや撮影のジェームズ・グレノン、編集のケヴィン・テント、音楽のロルフ・ケントなど、その後のペイン監督作品を支えるスタッフが集まった。キャストも豪華で、主演のローラ・ダーンをはじめ、バート・レイノルズやティッピ・ヘドレンなど大物が顔を揃えている。本作はサンダンス映画祭でプレミア上映され、ミラマックスの配給で劇場公開された。