【2022/2/12(土)~2/18(金)】『最後の決闘裁判』『DUNE/デューン 砂の惑星』

まつげ

今週の二本立ては“巨匠リドリー・スコット『最後の決闘裁判』×異次元の天才ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』”。本作は、二人のフィルモグラフィ中でも最重要作品となるのではないだろうか。何故ならば、両作品が完成するまでに沢山の不思議な巡り合わせがあるからだ。それは運命なのか、それとも必然なのだろうか。

リドリー・スコットは、常に決闘・対決を作品の土台に据えてきた。19世紀フランスを舞台に15年にわたって戦い続ける二人の騎士を描いた長編デビュー作『デュエリストー決闘者ー』(1977)。そして未知なる相手との対決を描き、SF映画の金字塔となった『エイリアン』(1979)『ブレードランナー』(1982)。古代ローマ時代の皇帝と皇太子の権力争いに巻き込まれて奴隷に身を落とした元ローマ軍将軍が、復讐のために剣闘士として過酷な運命に立ち向かう『グラディエーター』(2000)ではアカデミー賞作品賞を受賞した。

またリドリー・スコット監督の作品には『エイリアン』のリプリーや『テルマ&ルイーズ』(1991)の二人の女性のように、勇ましく戦う女性主人公が描かれてきた。特に『テルマ&ルイーズ』は今も議論を呼ぶフェミニズム映画のレガシーであり、自由を抑圧される2人の主人公たちの姿は忘れ難い。『最後の決闘裁判』で描かれる決闘の発端となった自分を襲った人物に声を上げたマルグリッドにもそのエモーションは受け継がれ、自由を抑圧され、声をあげても無視されてしまうその姿は現代女性を取り巻く問題にも対峙している。争いごとを二人の騎士による命がけの決闘によって解決する歴史上最後の決闘裁判と、その存在を無き者にされてきた中世の女性の声なき声を描くことによって、女性映画と対決映画の二つが合流したのが、本作『最後の決闘裁判』なのだ。

『DUNE/デューン 砂の惑星』の原作であるフランク・ハーバートの傑作長編SF小説「DUNE」の長大で重厚な物語は、SF映画に影響を与え、原作の映画化に数々の監督たちが挑戦しているが、完成までこぎつけたのはデヴィッド・リンチだけであった。アレハンドロ・ホドロフスキーも資金難により断念したのは有名だが、リドリー・スコットも『ブレードランナー』撮影のためプロジェクトを離れた一人である。そのバトンが次世代に渡り、12歳の頃この原作小説を読んで、SF映画を作る夢を抱くきっかけとなったと語ったのがドゥニ・ヴィルヌーヴである。

ドゥニ・ヴィルヌーヴが映画ならではの時制表現を使って映画化した『メッセージ』(2016)や、リドリー・スコットから不朽の名作の続編を引き継いだ『ブレードランナー2049』(2017)を完成させ、SF映画監督としてキャリアを重ねた。そして、満を持して今を輝くトップランナーたちと共に『DUNE/デューン 砂の惑星』を完成させたのだ。幼少期から読んでいた原作を忠実に映像化し、主人公の母親ジェシカを筆頭に女性の存在を強調させ、男女の境界のエッセンスを用いることで現代にも通じるテーマを孕んだ作品へと昇華させている。

二人の監督が積み重ねてきたキャリアは繋がり、映画の神様の悪戯なのか本作へと導いた。ドゥニ・ヴィルヌーヴは次のように語っている。「私にとって『DUNE/デューン 砂の惑星』は、映画へのラブレター。これが長年私が夢見て、思い描きそして成就させた作品だ。」二人は映画に愛をもって、真摯に作り続けてきた。そして、これからもそうであろう。本作はその大きな節目の作品であり、一つの集大成と言えるだろう。

最後の決闘裁判
The Last Duel

リドリー・スコット監督作品/2021年/アメリカ/153分/DCP/PG12/シネスコ

■監督 リドリー・スコット
■原作  エリック・ジェイガー「決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル」(早川書房刊)
■脚本 ニコール・ホロフセナー/ベン・アフレック/マット・デイモン
■撮影 ダリウス・ウォルスキー
■編集 クレア・シンプソン
■音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

■出演 マット・デイモン/アダム・ドライバー/ジョディ・カマー/ベン・アフレック/ハリエット・ウォルター/ナサニエル・パーカー/サム・ヘイゼルダイン/マイケル・マケルハットン/アレックス・ロウザー/マートン・ソーカス

© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

【2022年2月12日から2月18日まで上映】

生死を賭けた〈真実〉が裁かれる――

中世フランス――騎士の妻マルグリットが、夫の旧友に乱暴されたと訴えるが、彼は無実を主張し、目撃者もいない。真実の行方は、夫と被告による生死を賭けた“決闘裁判”に委ねられる。それは、神による絶対的な裁き――。勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者はたとえ決闘で命拾いしても罪人として死罪になる。そして、もしも夫が負ければ、マルグリットまでもが偽証の罪で火あぶりの刑を受けるのだ。果たして、裁かれるべきは誰なのか?

リドリー・スコット監督が挑む、衝撃の〈実話〉ミステリー!

600年以上前にフランスで行われた、決闘によって決着をつける「決闘裁判」。この史実を基に、暴行事件を訴えた女性とその夫、そして被告の3人の命を懸けた戦いを映し出す。マット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレックら豪華キャストの出演に加え、「キリング・イヴ Killing Eve」でエミー主演女優賞を受賞した新星ジョディ・カマーが、女性が声を上げることのできなかった時代に立ち上がり、裁判で闘うことを決意する女性マルグリットに熱演し、一役注目を浴びた。

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』以来、24年ぶりとなるマット・デイモンとベン・アフレックのタッグに、ニコール・ホロフセナーが参加した共同脚本をもとに、名匠リドリー・スコットがメガホンをとった本作。『羅生門』を彷彿とさせる3部構成など、圧巻の演出とスケールで挑む歴史スペクタクルが誕生した。

DUNE/デューン 砂の惑星
Dune

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品/2021年/アメリカ/155分/DCP/シネスコ

■監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
■原作 フランク・ハーバート「デューン 砂の惑星」(ハヤカワ文庫SF刊)
■脚本 ジョン・スパイツ/ドゥニ・ヴィルヌーブ/エリック・ロス
■撮影 グレイグ・フレイザー
■編集 ジョー・ウォーカー
■音楽 ハンス・ジマー

■出演 ティモシー・シャラメ/レベッカ・ファーガソン/オスカー・アイザック/ジョシュ・ブローリン/ゼンデイヤ/ジェイソン・モモア/ハビエル・バルデム/ステラン・スカルスガルド/デイヴ・バウティスタ/スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン/チャン・チェン/シャロン・ダンカン=ブルースター/シャーロット・ランプリング

©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

【2022年2月12日から2月18日まで上映】

全宇宙から命を狙われるひとりの青年に、未来は託された――

アトレイデス家の後継者、ポール。彼には”未来が視える”能力があった。宇宙帝国の皇帝からの命令で、その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる、過酷な≪砂の惑星デューン≫へと移住するが、それは罠だった…。そこで宇宙支配を狙う宿敵ハルコンネン家との壮絶な戦いが勃発! 父を殺され、巨大なサンドワームが襲い来るその惑星で、ポールは全宇宙のために立ち上がる――

これが、未来型シネマ・エクスペリエンス! 壮大なる宇宙戦争の幕が上がる

『ブレードランナー2049』『メッセージ』の天才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、かつてデヴィッド・リンチ監督によって映画化もされたフランク・ハーバートのSF小説の古典を新たに映画化。「キャリア史上最も重要な作品」と監督も断言する、誰も観たことのないスペクタクル・アドベンチャーを作り上げた。

主人公となるポール役を『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメが務めるほか、『スパイダーマン』シリーズのゼンデイヤ、『アクアマン』のジェイソン・モモア、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、オスカー・アイザック、レベッカ・ファーガソンらこれ以上ない豪華俳優陣が出演している。