【2021/10/30(土)~11/5(金)】『ダーティ・ダンシング』『テルマ&ルイーズ』

ミ・ナミ

今週の早稲田松竹は、現代に見直したいフェミニズム映画の名作の上映です。

夫に従属する日々を過ごす主婦のテルマと、恋人はいるものの結婚には踏み切れないでいるダイナーの中年ウェイトレス・ルイーズという親友同士の二人が旅に出るも、悪い巡りあわせから逃避行を繰り広げていくことになる『テルマ&ルイーズ』。避暑地を家族と訪れた17歳の少女が恋とダンスで成長していく『ダーティ・ダンシング』。いずれも、女性の生き方を時に刺激的に、時にみずみずしくとらえた名品です。

『テルマ&ルイーズ』は、夫や見ず知らずの男性からの抑圧や性暴力に晒される主人公ヒロイン、テルマとルイーズの姿がリアリティを以て描かれます。彼女たちの怒りはしかし、悪夢の逃避行という様相とは少し違うものです。テルマをレイプしようとした男に放たれた銃弾は、まるで観客であるすべての女性たちに「立ち上がれ!」と促す信号弾のようです。本作を担当したカーリー・クーリが「自分の運命を支配し、生き生きとした姿を見せる女性。そのような女性が登場する、これまで見たことがない作品を切望していたんです」と語るように、風を切ってメキシコへ向かおうとするオープンカーの二人の姿には爽快感がみなぎっています。

一方の『ダーティ・ダンシング』も、女性をエンパワメントすることが作品の鍵を握っているのです。劇中に登場するペニーという女性の妊娠が発覚し、ヒロインであるベイビーが中絶のために奔走するというエピソードがあります。中絶というフェミニズムにおける今日的テーマは、本作の脚本を書いたエレノア・バーグスタインによればベイビーが恋に落ちる理由や初体験、ダンスを習うきっかけになっており、映画の中で大きな核となっているのです。映画の舞台となっている1963年当時は、女性解放運動が盛んになり始めた頃でした。エレノアの「可愛い服やセックスにあふれた恋愛映画に道徳的側面を盛り込めば人の考え方を変えられる」という意識が、よくあるラブストーリーに突風を吹き込んだのです。

ヒロインたちの生き生きとした姿が今なお色鮮やかであり、アクチュアルな問いもはらんだ今週の二本立て。彼女たちの勇姿をぜひ目に焼き付けて下さい。

テルマ&ルイーズ
Thelma & Louise

リドリー・スコット 監督作品/1991年/アメリカ/130分/ブルーレイ/シネスコ

■監督 リドリー・スコット
■製作 リドリー・スコット/ミミ・ポーク
■脚本 カーリー・クーリ
■撮影 エイドリアン・ビドル
■音楽 ハンス・ジマー 

■出演 スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス/マイケル・マドセン/ブラッド・ピット/ハーヴェイ・カイテル

■1991年アカデミー賞脚本賞受賞・主演女優賞・監督賞ほか2部門ノミネート/ゴールデングローブ賞脚本賞受賞・作品賞・主演女優賞ノミネート/全米批評家協会賞助演男優賞受賞

© 1991 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

【2021年10月30日から11月5日まで上映】

男たちよホールド・アップ! すべてが快感。女たちのルネッサンス!

ドライブ旅行へ出かけた平凡な主婦のテルマとダイナーの中年ウェイトレス・ルイーズ。だが、途中のバーでレイプされそうになったテルマを救うため、ルイーズは男を射殺してしまう。二人の旅は一変して悪夢のような展開に──。若い男を道連れに逃亡資金を工面する日々を過ごすが、警察の追跡は次第に激しくなる…。

自由を求めて女たちが突っ走る! リドリー・スコットが90年代初頭に世界に放った傑作ロードムービー!

1991年公開。犯罪者となった女ふたりの冒険と友情を描くロードムービー。アメリカン・ニューシネマを思わせる展開、いまだ世にはびこる男性優位主義に激しく抵抗するヒロイン像は鮮烈で、世界中で大ヒットを記録。その年のアカデミー賞に多数ノミネート、脚本賞を受賞した。監督は『エイリアン』『ブレードランナー』『グラディエーター』など、独特の映像美でつねに時代をリードする作品を世に送り出している名匠リドリー・スコット。

主演は『アトランティック・シティ』『デッドマン・ウォーキング』のスーザン・サランドン、『ザ・フライ』『偶然の旅行者』のジーナ・デイヴィス。実生活でも親友だった二人は揃ってアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。また、本作が出世作となった若かりし頃のプラッド・ピットがヒッチハイカー役で出演しているのも見逃せない。音楽は、『ブラック・レイン』以降ほどんどのリドリー・スコット作品を担当しているハンス・ジマー。

ダーティ・ダンシング
Dirty Dancing

エミール・アルドリーノ監督作品/1987年/アメリカ/101分/DCP/ビスタ

■監督 エミール・アルドリーノ
■脚本 エレノア・バーグスタイン 
■撮影 ジェフ・ジャー
■編集 ピーター・C・フランク
■振付 ケニー・オルテガ
■主題歌 「タイム・オブ・マイ・ライフ」ビル・メドレー&ジェニファー・ウォーンズ

■出演 パトリック・スウェイジ/ジェニファー・グレイ/ジェリー・オーバック/シンシア・ローズ

■1987年アカデミー賞主題歌賞受賞/ゴールデン・グローブ賞歌曲賞受賞・作品賞・男優賞・女優賞ノミネート/インディペンデント・スピリット賞新人作品賞受賞

©ARTISAN PICTURES INC. All Rights Reserved.

【2021年10月30日から11月5日まで上映】

あなたに触れて、私の中で何かが変わった――。

フランシスは17才。裕福な医師の家庭に育ち、両親からいまだに“ベイビー”と呼ばれている箱入り娘だ。その夏、家族で訪れた湖畔の避暑地。ダンスホールのきらびやかな光の下、華麗なステップで観客を魅了する若きダンサーにフランシスの目は釘付けになった。男の名はジョニー。情熱的なマンボのリズムに合わせ、力強く官能的なダンスを繰り広げるその姿に圧倒され、彼女の心はそれまで感じたことのない興奮に震えた。運命的な出会いの後、ジョニーからダンスの猛特訓を受けることになったフランシスは、彼のパートナーとして晴れの舞台に立つのだがーー。

世界各国で爆発的なヒット! 恋のときめきを瑞々しく描いた青春映画の名篇

1987年に公開された本作は、世界各国で爆発的なヒットを記録。その年のアメリカ映画の世界興収11位にランクインした。愛しい人を一途に想い、ダンスの練習に励むジェニファーのひたむきな演技、彼女との出会いによって思いもよらぬ自身を知ることになるパトリックの繊細な演技はそれぞれ高く評価され、ゴールデングローブ賞主演女優賞&主演男優賞のダブル・ノミネートに結びついた。

監督は本作のほかに『天使にラブ・ソングを…』でも知られるエミール・アドリーノ。振り付けは『ハイスクール・ミュージカル』やマイケル・ジャクソンとの仕事が有名なケニー・オルテガ。クライマックスを華やかに飾るナンバー「タイム・オブ・マイ・ライフ」も大ヒットし、その年のアカデミー賞・ゴールデングローブ賞・グラミー賞、各主題歌賞のトリプル受賞に輝いている。

80年代屈指のダンス・ムービーであり、さらには恋のときめき、出会いによって新たな世界が広がる喜びを描いて、今なお瑞々しい青春映画の名篇がスクリーンに蘇る。