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ハラハラドキドキ!
今週は、その衝撃の展開に思わず息を呑む二本立て。 『ゴーン・ガール』『誰よりも狙われた男』をお届けいたします。 なんといっても、この二本は、いわゆる“ネタバレ厳禁”映画。 ですので、あまり物語に触れないよう、注目ポイントをピックアップしてみました!

<その1>原作にご注目!

『ゴーン・ガール』の原作はアメリカで600万冊以上売れた、ギリアン・フリンが描くミステリー小説。 彼女の作品は常に話題となり、その全てが映像化されています。 しかも、本作『ゴーン・ガール』では脚本も手掛け、ハリウッド・フィルム・アワード脚本賞を受賞しています。 執筆作は3作と少ないながらも、今、大注目の作家なのです!

一方、『誰よりも狙われた男』は、ジョン・ル・カレが描くスパイ小説が原作。 ル・カレは1963年の「寒い国から帰ってきたスパイ」でエドガー賞長編賞を受賞し、世界的に評価されました。 映画化された作品は数多く、『ナイロビの蜂』『裏切りのサーカス』などは記憶に新しいですよね。 自身もイギリスの情報機関M16に所属していたというのは有名な話。固定のファンも多い、まさしくスパイ小説の大家といえます!

<その2>実在の人物がモデル?

『ゴーン・ガール』には元ネタとなる事件があります。 2002年にアメリカで起こった「スコット・ピーターソン事件」です。 幸せそうに見える夫婦に起こった悲劇――その詳細はここでは紹介しませんが…。 本作主演のベン・アフレックは、その事件の容疑者である夫、スコット・ピーターソンにそっくりなんです。 見た目云々だけではなく、妻の失踪やら、マスコミの事件への関わり方など、作品のヒントになったであろう点が沢山です。

そして、『誰よりも狙われた男』の主人公・バッハマンが狙いをつけた、ロシアからハンブルグに密入国したイッサという男。 彼のモデルになったのは、アメリカ軍にテロ容疑の濡れ衣を着せられて拘束された、トルコ系ドイツ人のムラット・クルナズ氏。 ジョン・ル・カレは彼との交流があり、原作の巻末では彼の弁護士に謝意を捧げています。

<その3>俳優たちの快(怪?)演!

『ゴーン・ガール』で失踪した妻・エイミーを演じたロザムンド・パイクは、 本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。 イギリス出身の彼女は『007/ダイ・アナザー・デイ』('02)のボンドガールに抜擢されていますが、 私は『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』くらいしか観たことがなく、『ゴーン・ガール』の彼女にはびっくり! 美しさの中に狂気を持ち、 ちょっぴりお茶目なエイミーを嫌味も無く、さらりと演じているのです! この作品が彼女の出世作になること間違いなしの見事な演技です。

そして、『誰よりも狙われた男』の主人公・バッハマンを演じるのは名俳優、フィリップ・シーモア・ホフマン。 『カポーティ』『ザ・マスター』など数々の傑作で、どうしたって目の離せない魅力を見せてきました。 しかし、昨年2月に、薬物の過剰摂取により46歳という若さで急逝。 本作は彼が最後に遺した主演作です。スパイという孤独な世界で生きる、哀愁漂う中年の男。 そんな男が迎えるラストには、どうしてもホフマン自身の映画人生のラストと重なり、 あのやるせない雄叫びが胸を締めつけます。映画に生きた彼の姿を、ぜひ、スクリーンで観収めてください。

最後に、『誰よりも狙われた男』のインタビューでのフィリップ・シーモア・ホフマンの言葉を載せて…。

「もしこの映画を観て、何も感じないのであれば・・・視野が固まっているね(笑)
この映画は必ず心を揺さぶる。広い視野と心で観れば素晴らしい議論を巻き起こすだろう。」

ちょっと現実離れしているような物語に見えますが、どちらもとても人間臭い、感情豊かな二作品。
ぜひ、心を揺さぶられ、どんどんこの世界に惹き込まれていってください!

(もっさ)

誰よりも狙われた男
A MOST WANTED MAN
(2014年 アメリカ/イギリス/ドイツ 122分 DCP シネスコ) pic 2015年6月6日から6月12日まで上映 ■監督 アントン・コービン
■原作 ジョン・ル・カレ「誰よりも狙われた男」(早川書房刊)
■製作総指揮 ジョン・ル・カレ/テッサ・ロス/サム・イングルバート/ウィリアム・D・ジョンソン
■脚本 アンドリュー・ボーヴェル
■撮影 ブノワ・ドゥローム
■編集 クレア・シンプソン

■出演 フィリップ・シーモア・ホフマン/レイチェル・マクアダムス/ウィレム・デフォー/ロビン・ライト/グリゴリー・ドブリギン/ホマユン・エルシャディ/ニーナ・ホス/ダニエル・ブリュール

その瞬間、
世界の全てが敵となった。

picドイツの港湾都市ハンブルク。諜報機関でテロ対策チームを率いる練達のスパイ、ギュンター・バッハマンは、密入国したイッサという若者に目をつける。イスラム過激派として国際指名手配されていたイッサは人権団体の若手弁護士、アナベル・リヒターを介して、銀行家のトミー・ブルーと接触。彼の経営する銀行に、イッサの目的とする秘密口座が存在し ているらしい。

一方、CIAの介入も得たドイツの諜報界はイッサを逮捕しようと迫っていた。しかしバッハマンはイッサをあえて泳がせ、彼を利用することでテロリストへの資金支援に関わる“ある大物”を狙おうとしていた――。

孤高の名優が遺した最後の主演作!
スパイ小説の大家ジョン・ル・カレが仕掛ける、
“現代”の<リアル>謀報戦。

pic原作は映画化作品『裏切りのサーカス』の大ヒットが記憶に新しいスパイ小説の大家、ジョン・ル・カレの傑作ミステリー。冷戦時代の東西対立といったわかりやすい構図ではなく、“9.11”以降のテロ対策を軸にした現代の諜報戦をリアルに描き出し、従来のスパイ物の多くと一線を画す。監督は『コントロール』『ラスト・ターゲット』のアントン・コービ ン。スタイリッシュな映像感覚と、伏線に伏線を重ねた繊細なストーリーテリングでル・カレの世界を独自に昇華し、知的で高品質のエンターテイメントに仕立て上げた。

pic主演は、『カポーティ』でアカデミー賞主演男優賞に輝き、『ザ・マスター』での鬼気迫る演技で我々を魅了したフィリップ・シーモア・ホフマン。映画人たちから絶大な尊敬と信頼を得ている彼だが、昨年、46歳という若さでこの世を去ってしまった。自ら生命を削るような魂の演技と、その裏に隠された深い孤独。そのホフマンが遺した最後の主演作となった。共演はレイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォー、ロビン・ライトなど、錚々たる実力派の俳優たちが群像劇でもある本作の輪郭をしっかり固めている。

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ゴーン・ガール
GONE GIRL
(2014年 アメリカ 149分 DCP R15+ シネスコ) pic 2015年6月6日から6月12日まで上映 ■監督 デヴィッド・フィンチャー
■原作 ギリアン・フリン「ゴーン・ガール」(小学館刊)
■脚本 ギリアン・フリン
■製作 アーノン・ミルチャン/ジョシュア・ドネン/リース・ウィザースプーン/セアン・チャフィン, p.g.a
■撮影 ジェフ・クローネンウェス, ASC
■編集 カーク・バクスター, A.C.E.
■音楽 トレント・レズナー/アッティカス・ロス

■出演 ベン・アフレック/ロザムンド・パイク/ニール・パトリック・ハリス/タイラー・ペリー/キャリー・クーン/キム・ディケンズ/パトリック・フュジット/エミリー・ラタコウスキー/ミッシー・パイル

■2014年アカデミー賞主演女優賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞作品賞・主演女優賞ほか2部門ノミネート/英国アカデミー賞主演女優賞・脚色賞ノミネート/放送映画批評家協会賞脚色賞受賞・作品賞ほか4部門ノミネート/ほか多数受賞・ノミネート

本当に大切なものはいつも
失って初めてわかる

picNYでライターをしていたニックは、美しく洗練されたエイミーと出会い、大恋愛の末に結ばれた。結婚後、ニックの出身地であるミズーリ州の小さな街に移り住んだふたりは、洒落た邸宅で何不自由なく暮らしているように見えた。

picしかし、結婚5周年の記念日に、エイミーは突然姿を消してしまう。部屋は荒らされ、キッチンには争った跡が残る。警察 は他殺と失踪の両方の可能性を探るが、当然のごとくニックにも捜査の手が及ぶ。暴走するメディアによって夫婦の隠された素性が暴かれ、ニックは窮地に立たされてしまう。エイミー失踪事件は、アメリカにおける家庭内犯罪を象徴する事件のように見えたが…。

鬼才デヴィッド・フィンチャー監督が描く
男と女の刺激的サイコロジカル・スリラー

pic『ソーシャル・ネットワーク』『ドラゴン・タトゥーの女』で世界中の映画ファンを虜にしてきたデヴィッド・フィンチャー監督の最新作『ゴーン・ガール』。独創的な映像表現と力強いストーリーテリングでアメリカ映画界を牽引してきたトップ監督が選んだ題材は、失踪事件を起こした若い夫婦の姿だ。原作はアメリカで600万冊以上を売り上げた同名小説 。原作者のギリアン・フリンは本作の脚本も手掛けている。夫のニック役を演じるのは、監督・主演作『アルゴ』でアカデミー賞作品賞を受賞したベン・アフレック。妻のエイミー役を、『アウトロー』の英国女優ロザムンド・パイクが演じている。

誰よりも長い時間を一緒に過ごしてきたパートナーの知られざる秘密が次々と暴かれていく。デヴィッド・フィンチャー監督が仕掛ける衝撃の展開にあなたは耐えられるか――。

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