セレブの種
SHE HATE ME
(2004年 アメリカ 140分 )
2007年3月17日から3月23日まで上映
■監督・脚本 スパイク・リー
■原案・脚本 マイケル・ジャネット
■出演 アンソニー・マッキー/ケリー・ワシントン/エレン・バーキン/モニカ・ベルッチ/バイ・リン
子供を望むレズビアンへの「種付け」報酬=1回1万ドル。男が手にしたのは莫大な報酬か?それとも…。
ハーバードでMBAを取得し、大企業に勤めるエリート黒人のジャック。ある日、上司に社内の不正を報告したことで、会社はクビになり、資産も凍結されてしまう。一夜にして一文無しになったジャックの元に折り良く現れたのは、ジャックと交際中にレズビアンに目覚めて別れた元彼女。大金を支払う代わりに、自分と新恋人のアレックスに“種付け”して欲しいと持ちかける。
優秀な“種”を売る彼の噂はあっという間に広まり、子供を授かりたいレズビアンたちが列をなす程の人気ビジネスに発展。1回1万ドルという高額な報酬と引き換えに再びリッチな生活を手にしたジャックだったが、彼を待っていたのは…。
子孫繁栄のために「種をばらまきたい」のが男の本能なら、女の本能は「よりよい種を選ぶ」こと。どうせなら超一流の遺伝子が欲しい、でも精子バンクのデータなんてあてにはならない。学歴、人種、目の色が解っても、実のところハゲでブサイクかもしれないし!だったらちゃんと顔の見えるエリートの方が…、ねえ?
『25時』と『インサイド・マン』の間に、スパイク・リーが28日間で撮りあげた『セレブの種』。ただの生殖ビジネスの話じゃありません。企業サスペンスに家族ドラマに法廷劇、人種差別問題もあるかと思えば、ロマンスもあり、エロもあり、果ては『ゴッドファーザー』まで!と、とにかく山盛り大サービス。ちょっとコレ詰め込みすぎなんじゃないの?とは思うものの、面白ければOK!な140分間です。「セレブ」の意味はイマイチわかりませんが、たったの一晩で何人も妊娠させちゃうジャックって、確かにある意味「超一流」かも。
カポーティ
CAPOTE
(2005年 アメリカ 114分)
2007年3月17日から3月23日まで上映
■監督 ベネット・ミラー
■原作 ジェラルド・クラーク
■脚本 ダン・ファターマン
■出演 フィリップ・シーモア・ホフマン/キャサリン・キーナー/クリフトン・コリンズ・Jr/クリス・クーパー
■オフィシャル・サイト http://www.sonypictures.jp/movies/capote/
「神が才能を授け給うにしろ、必ず鞭を伴う。いや鞭こそ才能のうちなのだ、自らを鞭打つ」
──(カポーティ『カメレオンのための音楽』)
売れっ子小説家・ハリウッドに愛された脚本家・社交界の花形・ゴシップの帝王・不世出の天才──トルーマン・カポーティ。『ティファニーで朝食を』『遠い声 遠い部屋』などの傑作小説を生み、没後20年以上を経て今なお“天才作家”の呼び名をほしいままにすると共に、数々のスキャンダラスなゴシップで“伝説の作家”としても記憶されている。1959年、すでに人気作家だったカポーティは、カンザス州の田舎町で起きた惨殺事件の小さな新聞記事に目を留める。彼の最高傑作『冷血』誕生秘話は、ここから幕を開けた。
映画『カポーティ』は苦しみの物語である。焦点は『冷血』を書くカポーティの苦しみに当てられている。彼は殺人犯であるペリーに、自分と同じ“におい”を感じ取った。単なる取材対象者としてペリーを見ている一方で、純粋な人間同士として、心を通わせていく。しかし、ペリーが死刑にならなければ、小説は完成しない。カポーティはペリーの死を恐れると同時に、作家として彼の死を切望せずにいられないのだ。
書けるのなら、悪魔に魂を売っても構わない。傑作とは、そう思える人にしか生むことができないのかもしれない。穏やかな「いい人」に優れた作品など作れるだろうか?私はそうは思わない。
カポーティは、アメリカ文学の新しい時代の幕開けとなった『冷血』の後に、一冊の本も完成していない。『冷血』以後の彼は、本格的な作品は書けなくなってしまったのだ。この映画を観ると痛いほどにその理由がよく解る。
カポーティを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンは、普段の映画での発声とは別人のような高い声で、過去のどの出演作品よりも多い台詞を発す。彼のような性格俳優には主演作品は限られるが、これは彼にうってつけの作品であることを証明している。彼もまた鞭を持った俳優なのだ。
(mana)