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スウェーデンって、どんな国?

ぱっと思いつかない方が多いかもしれませんが、
実は私たちの周りにはスウェーデン生まれのものがたくさんあります。
世界中で愛される児童文学「長くつ下のピッピ」、
「ボルボ」や「サーブ」といった車、音楽では「ABBA」や「The Cardigans」、
世界中に店舗を持つ「IKEA」や「H&M」は、今や日本でも定番。
男女平等や福祉国家のモデルとして、また優れた北欧デザインの代表として、
近年のスウェーデンはますます熱い注目を集めています。

今週ご紹介する2本は、どちらもスウェーデンの映画/小説をハリウッドで映画化したもの。
題して「ハリウッド・ミーツ・スウェーデン」!

ところが、そこで描かれるのは私たちがよく知るクリーンで明るいスウェーデンではなく、
どこまでも暗く冷たく、突き刺すような痛みを伴う「閉ざされた冬」の姿です。

秘密を抱えた少女と孤独な少年の魂の出会いを描くミステリアス・スリラー『モールス』と、
スウェーデンの知られざる社会の暗部を舞台に、
風変わりな女とジャーナリストが衝撃的事件の真相解明に挑むヴァイオレンス・サスペンス『ドラゴン・タトゥーの女』

スウェーデンとハリウッドの刺激的な出会いは、一体どんな物語を生み出したのでしょうか?
それぞれの原作の詳細も交えて、以下にご紹介いたします。


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モールス
LET ME IN
(2010年 アメリカ 116分 R15+ シネスコ/SRD) 2012年5月19日から5月25日まで上映
■監督・脚本 マット・リーヴス
■オリジナル脚本 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
■原作 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト『MORSE-モールス-』(ハヤカワ文庫刊)
■撮影 グレッグ・フレイザー
■音楽 マイケル・ジアッキノ

■出演 コディ・スミット=マクフィー/クロエ・グレース・モレッツ/イライアス・コティーズ/リチャード・ジェンキンス

■放送映画批評家協会賞若手俳優賞(コディ・スミット=マクフィー /クロエ・グレース・モレッツ)ノミネート

■オフィシャルサイト http://morse-movie.com/

●あらすじ●

雪に閉ざされた町。12歳の少年オーウェンは母親と二人きりで暮らし、学校ではいじめられている。ある日、隣にアビーという少女が越してくる。彼女は雪の上でも裸足で、自分の誕生日も知らない謎めいた少女だった。何度も会ううちに、孤独を抱える二人は徐々に惹かれあい、お互いにしかわからない壁越しのモールス信号で絆を日に日に強くさせていく。やがて、オーウェンはアビーの隠された、哀しくも怖ろしい秘密を知ることになる。

時を同じくして、町では残酷な連続猟奇殺人が起こり始める。事件を捜査する刑事は、真相を追い続けるうちに2人の住む団地へとたどり着く――。そして、全てが明らかになった時、オーウェンが下す衝撃の決断とは…。

「私のこと好き?たとえ、普通の女の子じゃなくても?」最も切なくて、最も怖ろしいイノセントスリラー

pic2008年、世界中で絶賛され、60もの賞に輝いたスウェーデン映画がありました(日本公開は2010年)。『ぼくのエリ 200歳の少女』――ほの暗く神秘的な雰囲気を纏い、純真な恋と背筋も凍る残酷さを繊細な映像美で描き出した同作は、日本でも小規模公開ながら異例のヒットとなり、2011年度の映画館大賞(映画館スタッフが選ぶ2010年に最もスクリーンで輝いた映画)の19位に選ばれるなど、私たちにスウェーデン映画の存在を強く印象づけた作品です。早稲田松竹でも去年上映いたしましたので、ご覧になった方も多いかもしれません。

pic今回ご紹介する『モールス』は、『クローバーフィールド/HAKAISHA』で全世界の映画ファンを虜にしたマット・リーヴス監督が、『キック・アス』で一躍新人女優注目度NO.1となったクロエ・グレース・モレッツを主演に迎え、『ぼくのエリ〜』の舞台をアメリカに置きかえて映画化したハリウッドリメイク版。こちらも負けじと数々の作品賞や女優賞を席巻、ホラー小説の巨匠スティーブン・キングをして「この20年でNO.1のスリラー」と言わしめ、ハリウッドの実力を証明してみせました。

pic『ぼくのエリ〜』が「静けさ」「寒さ」「視線」といった沈黙の内に多くを語る作品であったのに対し、『モールス』は少女と少年の「孤独」を前面に押し出した形で描かれています。ハリウッドらしい切れ味抜群の恐怖を倍増させ、本格的なスリラーへと見事な変貌を遂げる一方、原作のダーク&ミステリアスな雰囲気や子供たちの純真さはそのまま。完成度の高いリメイクとしてはもちろん、全く別のアメリカン・スリラーとしても愉しみたい一作に仕上がっています。クロエ・グレース・モレッツの子供らしさを封印したミステリアスな演技にもご注目!

ちなみに、大元の原作である小説、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト著「MORSE-モールス-」も、映画を気に入られた方にはおススメしたい作品。どちらかというとハリウッド版に近いホラー感溢れるスリリングなストーリーは、夜ひとりで読むのにぴったり!? 映画では語られないエリの過去や、町を恐怖に陥れた事件の全貌を知ることができます。


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ドラゴン・タトゥーの女
THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO
(2011年 アメリカ 158分 R15+ シネスコ/SRD) 2012年5月19日から5月25日まで上映
■監督 デヴィッド・フィンチャー
■脚本 スティーヴン・ザイリアン
■原作 スティーグ・ラーソン
■撮影 ジェフ・クローネンウェス
■音楽 トレント・レズナー/アッティカス・ロス

■出演 ダニエル・クレイグ/ルーニー・マーラ/クリストファー・プラマー/スティーヴン・バーコフ/ステラン・スカルスガルド/ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン/ベンクトゥ・カールソン/ロビン・ライト

■<受賞>アカデミー賞編集賞/放送映画批評家協会賞編集賞 <ノミネート>アカデミー賞主演女優賞・撮影賞・音響賞/ゴールデン・グローブ女優賞・音楽賞ほか多数

■オフィシャルサイト http://www.dragontattoo.jp/

●あらすじ●

それは、40年前に疾走した少女の捜索依頼から始まった。スウェーデンを揺るがせた財界汚職事件の告発記事を書きながら名誉毀損裁判で敗訴したミカエルは、意気消沈の日々を送っていた。ある日、彼のもとにスウェーデン有数の財閥ヴァンゲルの元会長、ヘンリック・ヴァンゲルから家族史編集の依頼が舞い込む。 実はヘンリックの真の目的は、40年前に起きた親族の娘ハリエット失踪事件の真相究明だった。ヴァンゲルはハリエットが一族の誰かに殺害されたと信じていた。

成功の陰に隠された一族の血塗られた過去に気づくものの手がかりの掴めないミカエルは、天才的な資料収集能力の持ち主であるとして、ある人物を紹介される。リスベットという名の、顔色が悪くがりがりに痩せ、全身を黒い服に包んだピアスだらけの女。この小柄な女の肩口から背中にかけて、龍の刺青(ドラゴン・タトゥー)が異彩を放っていた。 そして、二人が突き止めた身も凍る真実とは――。

「誰がハリエットを殺した?」
悪だけが解き明かす悪の真実――!

pic原作は、2005年に発売されるや否や世界中で爆発的大ヒットとなった衝撃のミステリー、「ミレニアム」三部作の第一部。著者のスティーグ・ラーソンによる処女作にして絶筆作である未完の三部作が世界に与えた衝撃は計り知れず、日本でも発売一ヶ月にして20万部を超えるセールスを記録。本国スウェーデンでは「読まないと職場で話題に付いていけない」と言われるほどの社会現象を巻き起こし、映画化された第一部は人口の少ないスウェーデンでは異例の大盛況ぶりだったそうです(続いて二部・三部も映画化され、日本でも劇場公開されました)。

pic更にファンを興奮で包み込んだのが、『セブン』『ソーシャル・ネットワーク』のデヴィッド・フィンチャーがハリウッド版映画の監督を務めるというニュース。これを聞いた時点で既に「間違いない」と涎を垂らしそうになったファンの方もおられることでしょう(私です)。ヴァイオレント&サスペンスフルなストーリーときたら、フィンチャーのお家芸。全世界の期待が最高潮に達する中、公開された本作『ドラゴン・タトゥーの女』は、テンションぶち上がりのフィンチャー・ワールドが炸裂! 疾走感溢れるタイトル・シークエンスから一気に観客を引きずり込み、アドレナリンが止まらない極上の158分を味わうことができます。

pic社会派ジャーナリスト・ミカエルを演じるのは、ジェームズ・ボンド役でお馴染みのダニエル・クレイグ。渋い男の魅力に満ちながら、心を開くことのない屈折したヒーロー像で再び世界を魅了します。そして、衝撃的なのは“ドラゴン・タトゥーの女”リスベット役のルーニー・マーラ。『ソーシャル・ネットワーク』ではいかにもお嬢さんといった役柄だった彼女が、いくつものボディ・ピアスをつけ、髪を染め、眉を脱色し、煙草を吸い、パンク風のアウトフィットに身を包んでバイクを乗り回す姿は、もとが誰だったかわからないほど。痛いほどの孤独と少しの親密さ、凶暴さと可愛らしさが繊細なバランスでせめぎ合う複雑なリスベットという人物像を、原作ファンも納得の徹底的な役作りで披露しました。また、台詞の端々にスウェーデン語が使われ、キャストも北欧訛りの英語を話すなど異国情緒が香る細かい演出や、カメラワーク、アカデミー賞を受賞した編集等の優れた技巧もたっぷりとご堪能いただきたいところです。

既に映画から原作を読んだという方が続出しているようですが、こちらの面白さも半端なものじゃありません。自身も主人公・ミカエルと同じくジャーナリストであった著者が、知られざるスウェーデンの社会問題を告発しているという点でも異色の輝きを放つ「ミレニアム」三部作。読み始めたらとまらない中毒性が高い作品ですので、週末に一気読みがおススメです。未読の方は是非!

(デザイン・文 ザジ)


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