【2020/8/29(土)~9/4(金)】『フォードvsフェラーリ』『リチャード・ジュエル』

ルー

クリント・イーストウッドは、俳優・監督として50年以上に渡ってハリウッドのトップスターに君臨する大スターです。しかしそんな華々しいキャリアを持ちながら、近作『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』など、英雄ともてはやされた人間の裏にある孤独や葛藤を繊細に掘り下げる作品が目立ちます。そこにはイーストウッドが密かに囚われている内なる不安が投影されているのかもしれません。

最新作『リチャード・ジュエル』は、そんなイーストウッド以外に適任な監督が想像できない程イーストウッド的な題材です。爆弾事件を最悪のシナリオから救った英雄が、一転して悪人に仕立て上げられてしまう物語を無駄のない演出で見せ切る手際はまさに熟練の名人芸です。

とはいえイーストウッドの筆致は「簡潔」ではあっても、世界を過度に「単純」に見せるものではありません。ヒーロー然としているとはいいがたいリチャード・ジュエルの矛盾した人物像から浮かび上がるのは、明快な正解も解決もありえない、世界の複雑なあり様なのです。ハリウッドの王者でありながらハリウッド的明快さを拒否するイーストウッドは、御年90歳にして今なお鋭い眼光でアメリカの理想と現実、正義のありかたを見据えているのです。

イーストウッドのアプローチとは反対に、『ナイト&デイ』や『LOGAN/ローガン』などの傑作を発表し続けるジェームズ・マンゴールドは、明快なエンターテインメントに徹する中で見えてくるリアリティに迫ろうとしているようです。

最新作『フォードvsフェラーリ』でまず驚かされるのは、1966年当時の自動車産業やカーレースを巡るメカニックや街並みの時代考証、ディテールへのこだわりであり、それがあればこそ、主人公二人の常人離れした情熱に違和感なく私たちも溶け込めるのだと思います。

きっかけこそフォード社の依頼ですが、二人にとってル・マンレースはしだいに仕事を遥かに通り越した、妄執ともいえるものになっていきます。彼らが死と隣り合わせの中でのめり込む圧倒的なスピードと轟音の饗宴は、本来であればレースに参加する人々にしか見えない光景をスクリーンに立ち上げます。圧倒的迫力に満ちた、崇高なまでに美しいランドスケープ。それもまたこの世界に確かに存在する、リアルのひとつの形なのです。

リチャード・ジュエル
Richard Jewell

クリント・イーストウッド 監督作品/2019年/アメリカ/131分/DCP/シネスコ

■監督 クリント・イーストウッド
■製作 クリント・イーストウッド/ティム・ムーア/ジェシカ・マイアー/ケビン・ミッシャー/レオナルド・ディカプリオ/ジェニファー・デイヴィソン/ジョナ・ヒル
■原作 マリー・ブレナー
■脚本 ビリー・レイ
■撮影 イヴ・ベランジェ
■編集 ジョエル・コックス
■音楽 アルトゥロ・サンドヴァル

■出演 ポール・ウォルター・ハウザー/サム・ロックウェル/キャシー・ベイツ/ジョン・ハム/オリビア・ワイルド/ニナ・アリアンダ/イアン・ゴメス

■2019年アカデミー賞助演女優賞ノミネート/ゴールデングローブ賞助演女優賞ノミネート ほか多数受賞・ノミネート

© 2019 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

【2020年8月29日より9月4日まで上映】

その日、全国民が敵となった——

1996年、警備員のリチャード・ジュエルは米アトランタのセンテニアル公園で不審なリュックを発見。その中身は、無数の釘が仕込まれたパルプ爆弾だった。事件を未然に防ぎ、一時は英雄視された彼だが、現地の新聞社とテレビ局がリチャードを容疑者であるかのように書き立て、実名報道したことで状況は一変。さらに、FBIの徹底的な捜査、メディアによる連日の過熱報道により、リチャードの人格は全国民の前でおとしめられていった。

そこへ異を唱えるため弁護士のワトソンが立ち上がる。無実を信じ続けるワトソンだが、そこへ立ちはだかるのは、FBIとマスコミ、そしておよそ3億人の人口をかかえるアメリカ全国民だった——。

巨匠イーストウッドがアトランタ爆破事件の真実に迫る、実話サスペンス

『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』『15時17分、パリ行き』『運び屋』と、実話を基に“衝撃の真実”を描いてきた巨匠、クリント・イーストウッド。40本目となる監督最新作『リチャード・ジュエル』は、1996年のアトランタで起きた爆破事件の“真実”を描く問題作。出演は、リチャード役に『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』『ブラック・クランズマン』のポール・ウォルター・ハウザー、母親役に『ミザリー』のキャシー・ベイツ、弁護士ワトソン役にサム・ロックウェル。

果たして「事実」とされた報道の「真実」はどこにあるのか。その先にある人間の尊厳はどこまで保たれるのか。SNSが人々の生活に根付き、姿なき誹謗中傷が蔓延する現代社会。いつでも被害者、あるいは加害者になってもおかしくない混沌とした時代に警鐘を鳴らす切実なテーマを、イーストウッドはふんだんに盛り込みながら普遍的なドラマとして描き出す。

フォードvsフェラーリ
Ford v Ferrari

ジェームズ・マンゴールド監督作品/2019年/アメリカ/152分/DCP/シネスコ

■監督 ジェームズ・マンゴールド
■製作 ピーター・チャーニン/ジェンノ・トッピング/ジェームズ・マンゴールド
■脚本 ジェズ・バターワース/ジョン=ヘンリー・バターワース /ジェイソン・ケラー/ジェームズ・マンゴールド
■撮影 フェドン・パパマイケル
■編集 アンドリュー・バックランド/マイケル・マカスカー/ダーク・ウェスターヴェルト
■音楽 マルコ・ベルトラミ/バック・サンダース

■出演 マット・デイモン/クリスチャン・ベイル/ジョン・バーンサル/カトリーナ・バルフ/トレイシー・レッツ/ジョシュ・ルーカス/ノア・ジュプ/レモ・ジローネ

■2019年アカデミー賞編集賞・音響(編集)賞受賞/ゴールデングローブ賞男優賞ノミネート その他多数受賞・ノミネート

© 2019 Twentieth Century Fox

【2020年8月29日より9月4日まで上映】

フェラーリを倒すため、フォードが選んだのは二人の破天荒な男たちだった。

元レーサーのカー・デザイナー、キャロル・シェルビーのもとに、巨大企業フォードから信じがたいオファーが届く。それはル・マン24時間レースで6連覇中の王者、フェラーリに対抗できる新たなレースカーを開発してほしいとの依頼だった。シェルビーは、そのあまりにも困難な任務に挑むため、型破りなドライバー、ケン・マイルズをチームに招き入れる。

しかし彼らの行く手には、開発におけるメカニックなトラブルにとどまらない幾多の難題が待ち受けていた。それでもレースへの純粋な情熱を共有する男たちは、いつしか固い友情で結ばれ、フェラーリとの決戦の地、ル・マンに乗り込んでいくのだった…。

マット・デイモン×クリスチャン・ベイル二大俳優初共演! 絶対王者に立ち向かった男たちの奇跡の物語。

本作は、伝説的な1966年のル・マン24時間レースを題材に、アメリカ最大の自動車メーカー、フォード・モーター社から途方もない仕事を請け負ったふたりの男の実話を描く。メガホンを執ったのは、『17歳のカルテ』『LOGAN/ローガン』など、多彩なジャンルのヒット作を手掛けてきたジェームズ・マンゴールド監督。極限のダイナミズムと豊かな人間味を映画に吹き込み、今の時代に伝えるべき実話をスクリーンに輝かせる。

出演は、天才カー・デザイナーとして歴史にその名を刻むキャロル・シェルビー役に『オデッセイ』のマット・デイモン。ずば抜けたドライビング・テクニックでサーキットを疾走するケン・マイルズ役に『ダークナイト』のクリスチャン・ベイル。この二大実力派スターの初共演が叶ったことも大きな話題となった。