【2019/11/23(土)~11/29(金)】『さらば愛しきアウトロー』+『運び屋』 // 特別レイトショー『ラスト・ムービースター』

ルー

世界中で愛されるハリウッドの大スターであり続けることはどれほど困難なことでしょうか。

彼らは単に優れたパフォーマンスを求められるだけではなく、ひときわ輝く存在として世界中の人々を楽しませ、喜びを与えることがいつでも求められるのです(それは出演作だけでなく、私生活のゴシップを提供することも含まれるのかもしれません)。パブリックイメージを無残に失うこと(あるいはイメチェンに失敗すること)は単にキャリアを危うくしてしまうだけでなく、世界中のファンを悲しませてしまうことになるのですから、彼らにかかるプレッシャーは並大抵のものではないはずです。ましてやそれを何十年間も続けるとなれば。大スターは人気者であるとともに孤独な闘いを強いられる人々なのかもしれません。もちろんスターの中には生涯現役を貫き通す人もいますが、引き際を慎重に見極め一線を退く決意を固める人々もいます。

今回上映するのは三十年以上の長きにわたって私たちを楽しませてくれた大スター三人がそれぞれキャリアの最期に選んだ主演作です(イーストウッドは未だに監督として精力的活動していますが、90歳近い年齢を考えれば今回を最後の主演作に位置付けている可能性は高いと思います)。しかし誰一人として終わりにさしかかった人生への諦念など微塵も感じさせません。

監督作でもある『運び屋』でイーストウッドは自らの肉体の老いを隠すことなく、それでもスターとしての貫禄を両立できることを高らかに宣言する一方、レッドフォードは『さらば愛しきアウトロー』で自らが主宰するサンダンス映画祭で世に出た若手監督と共にキャリアを総決算するユニークな犯罪映画を作り上げました。そしてもう一人の70年代を象徴するスーパースター、バート・レイノルズは老いた晩年の姿と往年のマッチョなイメージとの落差を自虐的なユーモアも交えながら飄々と肯定する、その名もずばり『ラスト・ムービースター』という美しい作品で人生の最後を締めくくりました。

それぞれ三者三様ですが、どれもが今まで彼らを愛してきた映画ファンへのチャーミングな贈り物のような作品です。彼らが人生を賭けてきた銀幕でしっかりと受けとめて下さい。

運び屋
The Mule

クリント・イーストウッド監督作品/2018年/アメリカ/116分/DCP/シネスコ

■監督・製作 クリント・イーストウッド
■原案 サム・ドルニック
■脚本 ニック・シェンク
■撮影 イブ・ベランジェ
■編集 ジョエル・コックス
■音楽 アルトゥロ・サンドバル

■出演 クリント・イーストウッド/ブラッドリー・クーパー/ローレンス・フィッシュバーン/マイケル・ペーニャ/ダイアン・ウィースト/タイッサ・ファーミガ/アリソン・イーストウッド/イグナシオ・セリッチオ/アンディ・ガルシア

©2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS.
ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

【2019年11月23日から11月29日まで上映】

一度に13億円相当のドラッグを運んだ‟伝説の運び屋”の正体は、90歳の老人だった。

90歳になろうとするアール・ストーンは金もなく、ないがしろにした家族からも見放され、孤独な日々を送っていた。ある日、男から「車の運転さえすれば金をやる」と話を持ちかけられる。家族との関係修復のために金が必要だと思い引き受けたアールは、なんなくその仕事をこなすが、実は、それはメキシコ犯罪組織によるドラッグの運び屋だった。

気ままな安全運転で幾度も大量のドラッグを運び出すアールだったが、麻薬取締局の捜査官の手が迫っていた…。

クリント・イーストウッド監督・主演最新作は、前代未聞の実話サスペンス!

俳優クリント・イーストウッドが『人生の特等席』以来7年ぶりにスクリーンに帰ってきた。自身の監督作としては『グラン・トリノ』以来11年ぶりの主演作となる。「いまのハリウッドには自分が演じられる作品がない」と発言し、一時は俳優引退をほのめかしたこともある名優の心を動かしたのは、前代未聞の“アウトロー”の実話だった。

2011年、メキシコ最大の犯罪組織の麻薬密輸が摘発された。メキシコからデトロイトまで、大量のコカインを運んでいたのは史上最年長となる87歳の“運び屋”だった。撮影当時、モデルとなった人物と同じ87歳だったイーストウッドはシナリオを読み、「誰にも譲りたくない」と監督・主演を決めたという。

共演は『アメリカン・スナイパー』『アリー/スター誕生』のブラッドリー・クーパー、『ミスティック・リバー』『30年後の同窓会』のローレンス・フィッシュバーン、『ハンナとその姉妹』のダイアン・ウィースト、『ゴッド・ファーザーⅢ』のアンディ・ガルシアなど実力派が脇を固める。また、アールの娘役を実の娘であるアリソン・イーストウッドが扮している。

さらば愛しきアウトロー
The Old Man & the Gun

デヴィッド・ロウリー監督作品/2018年/アメリカ/93分/DCP/シネスコ

■監督・脚本 デヴィッド・ロウリー
■原作 デイヴィッド・グラン
■撮影 ジョー・アンダーソン
■編集 リサ・ゼノ・チャージン
■音楽 ダニエル・ハート

■出演 ロバート・レッドフォード/ケイシー・アフレック/シシー・スペイセク/ダニー・グローヴァー/チカ・サンプター/トム・ウェイツ

■第76回ゴールデン・グローブ賞最優秀主演男優賞ノミネート

Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

【2019年11月23日から11月29日まで上映】

ポケットに銃を、唇に微笑みを、人生に愛を。

時は1980年代初頭、アメリカ。ポケットに入れた拳銃をチラリと見せるだけで、微笑みながら誰ひとり傷つけず、目的を遂げる銀行強盗がいた。彼の名はフォレスト・タッカー、74歳。被害者のはずの銀行の窓口係や支店長は彼のことを、「紳士だった」「礼儀正しかった」と口々に誉めそやす。事件を担当することになったジョン・ハント刑事も、追いかければ追いかけるほどフォレストの生き方に魅了されていく。彼が堅気ではないと感じながらも、心を奪われてしまった恋人もいた。

そんな中、フォレストは仲間のテディとウォラーと共に、かつてない“デカいヤマ”を計画し、まんまと成功させる。だが、“黄昏ギャング”と大々的に報道されたために、予想もしなかった危機にさらされる─。

ロバート・レッドフォード俳優引退作! すべての映画ファンに贈る、愛と犯罪と逃亡の一大エンターテイメント

すべての時代に名作を刻み続けてきた本物のスター俳優が、遂にスクリーンから去ってゆく。レッドフォードが最後に演じるのは、16回の脱獄と銀行強盗を繰り返した実在のアウトロー、フォレスト・タッカーだ。監督は、サンダンス映画祭で頭角を現した『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー 』のデヴィッド・ロウリー。「この映画は思いのたけを込めたレッドフォードへのラブレターだ」と語る。

フォレストにあこがれと対抗意識を抱く刑事には『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレック。デヴィッド・ロウリー監督作へは『セインツ -約束の果て- 』『ア・ゴースト・ストーリー 』に続き三作目となる。フォレストの最後の恋人には、『キャリー』のシシー・スペイセク。そのほか、名優ダニー・グローヴァー、トム・ウェイツが脇を固める。

伝説の強盗犯とロバート・レッドフォード、二人の“愛しきアウトロー”からの最後のメッセージ。映画界の未来を託したい監督と豪華出演者が揃い踏み、世紀をまたいで燦然と輝く唯一無二のキャリアのまさに集大成となる作品が完成した。

【特別レイトショー】ラスト・ムービースター
【Late Show】The Last Movie Star

アダム・リフキン監督作品/2018年/アメリカ/104分/DCP/PG12/シネスコ

■監督・製作・脚本 アダム・リフキン
■撮影 スコット・ウィニグ
■編集 ダン・フレッシャー
■音楽 オースティン・ウィントリー

■出演 バート・レイノルズ/アリエル・ウィンター/クラーク・デューク/エラー・コルトレーン/ニッキー・ブロンスキー/チェヴィー・チェイス

©2017 Skate Girl Film LLC.

【2019年11月23日から11月29日まで上映】

人生のあらすじは、途中で変えられる。

かつて一世を風靡した映画界のスーパースター、ヴィック・エドワーズのもとに、ある映画祭から功労賞受賞の招待状が届く。歴代受賞者がデ・ニーロやイーストウッドだと聞いて、しぶしぶ参加したものの、騙しに近い名もない映画祭だと知ると、エドワーズは憤慨。だが、映画祭が行われていた場所は、彼が生まれ育った街ノックスビルに近く、過去の思い出が甦り…。

運転手役のリルに命じて向かった先は、育った家、大学のフットボールで活躍したスタジアム、最初の妻にプロポーズした岸辺。自身の人生を振り返ったエドワーズは、ある行動を起こす。

バート・レイノルズ、最後の主演作。気鋭の映画制作スタジオA24が贈る、映画愛に溢れた珠玉の1本。

『脱出』『トランザム7000』『ロンゲスト・ヤード』『キャノンボール』『ブギーナイツ』などで人気を博し、ジェームズ・ボンドとハン・ソロの役を断っていたことでも有名な稀代の映画スター、バート・レイノルズ。クエンティン・タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の出演も決まっていたが、惜しくも撮影前の2018年9月6日に82歳でこの世を去った。結果的に最後の主演作となった本作で、彼は自身をモデルにした主人公ヴィック・エドワーズ役として、奇しくも自身の人生を演じている。

落ちぶれたスターの悲哀、誤った作品選びの証拠となる過去の出演作のデータベース、スタントのし過ぎでボロボロとなった肉体…、自虐的なセリフ・パロディーともいえる役どころを、本来の持ち味でもあるユーモアたっぷりに演じ切るバート・レイノルズを愛さずにはいられない。監督、脚本を手がけたのは『デトロイト・ロック・シティ』のアダム・リフキン。気鋭の映画スタジオA24による制作で、レイノルズの永遠の魅力と映画愛に溢れた記憶に残る1本が誕生した。