【2023/2/18(土)~2/24(金)】『ザ・メニュー』『ドント・ウォーリー・ダーリン』 // 特別レイトショー『アムステルダム』 

ぽっけ

今週の早稲田松竹は『ドント・ウォーリー・ダーリン』と『ザ・メニュー』の二本立て。

『ザ・メニュー』の料理人たちが世界で最高のおもてなしをする孤島。レストランを囲むこの島の自然から生まれる食物は自然として完全に調和した生態系を形成していて、このレストランで起こっていることはその営みの中ではとても些細なことなのだとシェフは話します。弱肉強食の食物連鎖、そうした生命の平等な循環のなかでは、それらは残酷であれど悪意をもたらすことはありません。しかし料理人とそれを食べに来る客との関係はどうなのでしょうか。調理し給仕する、食べる、支払う。ただこれだけならばシンプルでバランスが取れた関係なのかもしれません。ただ、このレストランは世界でも屈指の料理人たちが集まった、最高のお金持ちでも滅多に訪れることのできないレストラン。それだけで済むほどシンプルではありません。

『ドント・ウォーリー・ダーリン』の舞台は周囲と交流のない砂漠の中にある一つの街。そこで流れる音楽、インテリア、ファッションは古き良き50年代のアメリカのものばかり。カラフルでかわいいビジュアルの背後に良き妻や良き暮らしという「男性中心社会の良識」を隠していたことは21世紀に生きる私たちにはもう自明の事実です。ハリウッドではこうした時代背景の作品を描くときに、その作品のテーマに直接的に関係ないときにさえこうした女性たちの置かれた状況に対して無頓着な作品へ批判が行われるようになりました。

監督のオリヴィア・ワイルドは自身が俳優として出演するときにも、そうした問題と向き合わざるを得ない経験もありました。クリント・イーストウッド監督作『リチャード・ジュエル』における女性記者役がFBIから情報を得るために枕営業をしたという描写がハリウッドが描く女性記者のステロタイプとして描かれていて、事実と異なると指摘を受けたのです。彼女は問題が女性記者の話題だけに集中することへの違和感を表明しました。なぜ女性記者と同様に、FBIの男性が情報を提供したという、この映画が描いた推論に対しては指摘されないのかという違和感です。オリヴィア・ワイルドはそれを「不公平なダブルスタンダードだ」と指摘しました。

物事を両面から見ることはときに難しいものです。しかし、夫婦にとって理想の暮らしや世界最高のレストラン、ある意味でユートピアとも思われた舞台が一転してディストピアへと陥っていくことができるのは、その両面が共通する部分で接しているからなのではないでしょうか? 正常なら、いや「正気」ならそのことに気づいてもおかしくないはずのことに、なぜか我々は気づくことができません。階級や貧富の差でしょうか? 男女の差? 常識や考え方の差? それとも誰かに忖度して、身動きがとれなくなっているのでしょうか。在っても仕方ないかもしれないそれぞれの差。しかしそれは誰かを締め付け、苦しめているのに気づかない理由にはなりません。今週は他者にそんな痛みを与える昏さに向けられた啓発的な作品たち。

ドント・ウォーリー・ダーリン
Don't Worry Darling

オリビア・ワイルド監督作品/2022年/アメリカ/123分/DCP/PG12/シネスコ

■監督 オリビア・ワイルド
■製作 オリビア・ワイルド/ケイティ・シルバーマン/マリ・ユーン/ロイ・リー
■脚本 ケイティ・シルバーマン
■原案 キャリー・バン・ダイク/シェーン・バン・ダイク/ケイティ・シルバーマン
■撮影 マシュー・リバティーク
■編集 アフォンソ・ゴンサウベス
■音楽 ジョン・パウエル

■出演 フローレンス・ピュー/ハリー・スタイルズ/オリビア・ワイルド/ジェンマ・チャン/キキ・レイン/ニック・クロール/クリス・パイン

©2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

【2023/2/18(土)~2/24(金)上映】

<現実>か<悪夢>か――幸せな日常が<混沌の世界>へ変貌していく

完璧な生活が保証された街で、アリスは愛する夫ジャックと平穏な日々を送っていた。そんなある日、隣人が赤い服の男達に連れ去られるのを目撃する。それ以降、彼女の周りで頻繁に不気味な出来事が起きるようになる。次第に精神が乱れ、周囲からもおかしくなったと心配されるアリスだったが、あることをきっかけにこの街に疑問を持ち始める――。

一度、踏み入れたら逃れられない極限のユートピアスリラー

2019年に公開された『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で長編監督デビューを果たし数々の映画賞を席巻したオリビア・ワイルド。今後ハリウッドを牽引するフィルムメーカーの一人として大きな期待が寄せられている。そんなオリビア待望の長編第二作目『ドント・ウィーリー・ダーリン』は、完璧な生活が補償された街に住み、平穏で幸せな日々を送っていた主人公・アリスの周りで頻繁に起きる“不気味な現象”を描いた本格スリラー。予測できない展開で観るものを惹きつけ、恐怖と欲望が入り乱れる“ユートピアスリラー”を作り上げた。

主人公・アリスを演じるのは『ミッドサマー』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』『ブラック・ウィドウ』など数々の作品で存在感を見せるフローレンス・ピュー。アリスの夫・ジャックを<ワン・ダイレクション>のメンバーにしてソロアーティストとしても活躍、さらに『ダンケルク』で俳優として高い評価を受けたハリー・スタイルズが務める。さらに、クリス・パイン、ジェンマ・チェンら豪華キャストが世にも奇妙な世界観を彩っている。

ザ・メニュー
The Menu

マーク・マイロッド監督作品/2022年/アメリカ/107分/DCP/R15+/シネスコ

■監督 マーク・マイロッド 
■製作 アダム・マッケイ/ベッツィー・コッチ
■脚本 セス・リース/ウィル・トレイシー
■撮影 ピーター・デミング
■編集 クリストファー・テレフセン
■音楽 コリン・ステットソン 

■出演 レイフ・ファインズ/アニャ・テイラー=ジョイ/ニコラス・ホルト/ホン・チャウ/ジャネット・マクティア/リード・バーニー/ジュディラス・ライト/ポール・アデルスタイン

■2022年ゴールデン・グローブ賞男優賞・女優賞ノミネート

©2022 20th Century Studios. All rights reserved.

【2023/2/18(土)~2/24(金)上映】

死ぬほど素敵な夜(ディナー)へ、 ようこそ。

世界で最も予約の取れないレストラン、ホーソン。全てを美食のために捧げるこのレストランのチケットを獲得したのは、著名料理評論家、人気映画俳優、エンジェル投資家など、選び抜かれたゲストたち。天才的なセンスとカリスマ性に満ちた伝説のシェフが振る舞うのは、芸術的なまでに美しく、完璧なコース料理の数々。しかしそこには想像もできないサプライズと、思いもかけない結末が添えられていた…

極上のスリルに満ちた、驚愕のフルコース・サスペンス!

本年度エミー賞で最多25ノミネートを成し遂げた「メディア王〜華麗なる一族〜」の製作陣が再集結し、同作を超える情熱とアイディアを注ぎ込んだ『ザ・メニュー』。監督は大ヒットTVシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」の6つのエピソードを手掛け、世界中の注目を集める俊才マーク・マイロッド。

ボーイフレンドと共にレストランを訪れる主人公マーゴには、配信ドラマ「クイーンズ・ギャンビット」や『ラストナイト・イン・ソーホー』などで圧倒的な存在感を放ち、今ハリウッドで出演オファー殺到中のアニャ・テイラー=ジョイ。迎える伝説のシェフ、スローヴィクには、『グランド・ブダペスト・ホテル』『キングスマン:ファースト・エージェント』の名優レイフ・ファインズ。さらにニコラス・ホルト、ジョン・レグイザモほか、一癖も二癖もある俳優陣が集結した。

【特別レイトショー】アムステルダム
【Late Show】Amsterdam

デヴィッド・O・ラッセル 監督作品/2022年/アメリカ/134分/DCP/シネスコ

■監督・脚本 デヴィッド・O・ラッセル 
■製作 アーノン・ミルチャン/マシュー・バドマン/アンソニー・カタガス/デヴィッド・O・ラッセル/クリスチャン・ベール
■撮影 エマニュエル・ルベツキ
■プロダクション・ デザイナー ジュディ・ベッカー
■編集 ジェイ・キャシディ
■音楽 ダニエル・ペンバートン 

■出演 クリスチャン・ベイル/マーゴット・ロビー/ジョン・デヴィッド・ワシントン/クリス・ロック/アニャ・テイラー=ジョイ/ゾーイ・サルダナ/マイク・マイヤーズ/マイケル・シャノン/ティモシー・オリファント/アンドレア・ライズボロー/テイラー・スウィフト/マティアス・スーナールツ/アレッサンドロ・ニヴォラ/ラミ・マレック/ロバート・デ・ニーロ

©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

【2023/2/18(土)~2/24(金)上映】

歴史を変えた陰謀の“裏側”…ありえないけど、ほぼ実話

舞台は1930年代ニューヨーク――かつてオランダのアムステルダムで出会った3人は、ある殺人事件の濡れ衣を着せられ、容疑者となってしまう。強い絆で結ばれた彼らは、事件の真相を追うが、次第に全世界に渦巻く巨大な陰謀へと巻き込まれていく…。

史実とフィクションを融合させて描いた愛と友情のクライム・ストーリー

『世界にひとつのプレイブック』『アメリカン・ハッスル』の鬼才デヴィッド・O・ラッセル監督のもと、映画賞レース常連の超豪華キャストが集結した、愛と友情のクライム・ストーリー。世界の歴史を変えた衝撃的な陰謀の“裏側”を描く、ありえないけど“ほぼ実話”。時にコミカルに、時にスリリングに。スタイリッシュで予測不可能なストーリーテリングや迫真の演技はもちろん、エモーショナルな美術や衣装なども見どころ。

『バイス』のクリスチャン・ベイル、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のマーゴット・ロビー、『TENET テネット』のジョン・デヴィッド・ワシントンら名実ともにハリウッドを代表するスターが競演。さらに、世界的歌姫テイラー・スウィフトが3年振りの映画出演で華を添える。