クリストファー・ノーラン監督の映画では、時間がとても重要な意味を持っています。 誰もが同じだけ、同じように進んでいるはずのその時間を、 体験する様々な出来事によって長く感じたり、短く感じたりするのはとても不思議なことです。 まるで個々が別の世界に生きているかのように、人と人との感覚には遠く隔たりがあるのではないでしょうか。ある人にとっての数秒は、ある人にとっては数分、あるいは数時間なのかもしれません。 彼の映画ではそんな異なる時間が交差する瞬間を描きます。 ある一点で登場人物たちの時間が交わり、お互いの行動がお互いの時間に影響を与えていくのです。
今週お届けする作品は、 夢の世界に飛び込む『インセプション』、そして史実をもとにした『ダンケルク』。 二つの作品は対照的な映画でありながら、同じように時間の交わりを描きます。 緊迫した状況で人々がすれ違う彼の映画の中で、観客である私たちの時間も彼の映画の登場人物たちと同じように交わるのかもしれません。
(ジャック)
インセプション
Inception
(2010年 アメリカ 148分 シネスコ/SRD)
2018年2月17日から2月23日まで上映
■監督・製作・脚本 クリストファー・ノーラン
■製作 エマ・トーマス
■撮影 ウォーリー・フィスター
■編集 リー・スミス
■音楽 ハンス・ジマー
■出演 レオナルド・ディカプリオ/渡辺謙/ジョセフ・ゴードン=レヴィット/マリオン・コティヤール/エレン・ペイジ/トム・ハーディー/キリアン・マーフィー/ディリープ・ラオ/トム・ベレンジャー/マイケル・ケイン
■第83回 アカデミー賞撮影賞、視覚効果賞、音響編集賞、音響録音賞受賞
© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc.
ドム・コブは人の心が無防備な状態、つまり夢を見ている間に潜在意識から貴重な秘密を盗み出すスペシャリスト。その特異な才能は産業スパイが暗躍する世界で重宝される一方、そのために彼は最愛のものを奪われ、国際指名手配されてしまう。
そんな彼に失った人生を取り戻すチャンスが。そのためには「インセプション」と呼ばれる、アイデアを盗むのとは逆に相手の心に“植え付ける”、およそ不可能とされる任務を成功させる必要があった――。
空前の大ヒット作『ダークナイト』でセンセーションを巻き起こしたクリストファー・ノーラン監督が自ら書き下ろしたオリジナル脚本を、レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙はじめ豪華キャストを起用し、壮大なスケールで映画化したSFクライム・アクション超大作。
相手の夢の中に入り込み、潜在意識の中の価値あるアイデアを盗み出す一流産業スパイの男を主人公に、彼と彼のスペシャリスト集団が夢の中で繰り広げる最後にして最も危険なミッションの行方を、複雑かつ巧みなストーリー展開と驚異の映像で描き出していく。
ダンケルク
Dunkirk
(2017年 イギリス/アメリカ/フランス 106分 シネスコ)
2018年2月17日から2月23日まで上映
■監督・製作・脚本 クリストファー・ノーラン
■製作 エマ・トーマス
■撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
■編集 リー・スミス
■音楽 ハンス・ジマー
■出演 フィン・ホワイトヘッド/トム・グリン=カーニー/ジャック・ロウデン/ハリー・スタイルズル/アナイリン・バーナード/ジェイムズ・ダーシー/バリー・コーガン/ケネス・ブラナー/キリアン・マーフィー/マーク・ライランス/トム・ハーディー
©2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
フランス北端ダンケルクに追い込められた英仏連合軍40万人の兵士。背後は海。陸・空からは敵――そんな逃げ場なしの状況でも、生き抜くことを諦めないトミーとその仲間ら、若き兵士たち。一方、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間たちを助けようと、民間船までもが動員された救出作品が動きだそうとしていた。英空軍のパイロットも、数において形成不利ながら、出撃。こうして、命をかけた史上最大の救出作戦が始まった。果たしてトミーと仲間たちは生き抜けるのか。勇気ある人々の作戦の行方は!?
『ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』と、新作ごとに圧倒的な映像表現と斬新な世界観で、観る者を驚愕させてきた天才クリストファー・ノーラン。彼が、初めて実話に挑んだ本作は、これまでの戦争映画の常識を覆す、まったく新たな究極の映像体験を突きつける。
史実をもとに描かれるのは、相手を打ち負かす「戦い」ではなく、生き残りをかけた「撤退」。生きて帰れるか、というシンプルで普遍的なストーリーを、まるで自分が映画の中の戦場に立っているような緊迫感と臨場感で、体感させる。陸海空それぞれ異なる時間軸の出来事が一つの物語として同時進行し、目くるめくスピードで3視点が切り替わる。開始早々からエンドロールまで、映像と音響がカラダを丸ごと包み込み、我々観客を超絶体験へといざなう。