アイリス
IRIS
(2001年 イギリス/アメリカ 91分)
2007年10月27日から11月2日まで上映 ■監督 リチャード・エアー
■原作 ジョン・ベイリー
■脚本 リチャード・エアー/チャールズ・ウッド

■出演 ジュディ・デンチ/ジム・ブロードベント/ケイト・ウィンスレット/ヒュー・ボネヴィル


男と女、男と男、女と女、そんなことはどうでもいい。この映画は愛の映画だ。甘ったるい恋愛を描いた映画ではない。二人の人間がこの地球という星で会うべくして会い、お互いに愛し合い、困難を乗り越え光輝き、一つとなって人々を魅了する。


某スピリチュアルカウンセラーはテレビでこう言う。人間は生まれてくる前に天上界ですでに決められた相方と現世で一緒になることを約束をし、この世に降り立つと。そして、私たちは記憶のないまま、修行とも思えるこの人生の中で約束したはずの相方を探す。

本当かどうかはもちろん私にはわからないが、そうであっても何ら不思議はない。みんな心の奥底にそういった四次元もしくはそれ以上の世界の存在を意識して生きている。目に見えるものだけがこの世ではないことに気付き始めている。この映画『アイリス』はそんな天上界で約束されたような運命の二人を描いた実話ドラマだ。イギリスを代表する人気女性作家アイリス・マードックと夫のジョン・ベイリー。この二人こそが映画『アイリス』のモデルとなった人物である。

ストーリーはそのジョン・ベイリーが書いた回想録「アイリスとの別れ」を元に、二人の大学での出会いから始まる若かりし時代と、晩年アイリスがアルツハイマー病と診断されてからの時期とが巧みに交差されながら描かれていく。


ストーリーもさることながら、一番の注目はやはり俳優陣であろう。主人公アイリスを演じるのは数々の賞を受賞し、現在でも精力的に多くの作品に出演し続けている女優ジュディ・デンチである。 『恋におちたシェイクスピア』、『ショコラ』、そして007シリーズと経験豊富な彼女が今作では満を持して挑み、実在の夫ジョン・ベイリーもアイリスと瓜二つと頷かせたほどの演技は必見である!

また、『未来世紀ブラジル』『ムーラン・ルージュ』など、多彩な演技力を持つジム・ブロードベンドが夫役のジョン・ベイリーを演じ、見事2002年アカデミー助演男優賞を受賞している。若かりしアイリスを演じるは、『タイタニック』、『エターナル・サンシャイン』、最近では『リトル・チルドレン』と皆さまお馴染みのケイト・ウィンスレット。さらにさらに、若かりしジョン・ベイリーは今作で一躍脚光を浴びたヒュー・ボナヴィルである。

と、まあそうそうたる俳優陣に感心しているだけでもいいものだが、そうはいかず、今度はスタッフ陣にまで目を凝らして注目してみると、監督はなんと演劇界の重鎮リチャード・エア!そして音楽を担当するはこれまたびっくり!『ブレイブ・ハート』『アポロ13』『タイタニック』『ビューティフル・マインド』など数々の名作を支えたジェームズ・ホーナーである。どうりで音楽が素晴らしいと思ったわけだこりゃ。

夫婦とは何か?人間とは一体何なのか?そんな誰もが人生の中で一度は経験するであろう葛藤に二人はもがき、苦しみ、傷つけ合いながらも少しずつ愛を築き上げていく。

二人だから存在した愛。他の誰かとは成立しなかった愛。アイリス・マードックとジョン・ベイリーの愛。二人の愛がいま映画となり、世界中の人々に感動を与え、さらなる愛を育む。これこそ愛のパワー、映画のパワーだ!

さあ、あなたもアイリスとジョンの愛による、魂の感動体験をしに劇場に足を運んでみよう。もしかすると天上界で約束した運命の人がそこにいるかもしれない…。

(ローラ)



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あるスキャンダルの覚え書き
NOTES ON A SCANDAL
(2006年 アメリカ 92分 R-15
pic 2007年10月27日から11月2日まで上映 ■監督 リチャード・エアー
■脚本 パトリック・マーバー(『クローサー』原作戯曲・脚本)
■出演 ジュディ・デンチ/ケイト・ブランシェット/ビル・ナイ/アンドリュー・シンプソン

■オフィシャル・サイト http://movies.foxjapan.com/notesonascandal/

ロンドン郊外にある中学校で歴史を教えるベテラン教師、バーバラ。彼女は非常に厳格な上に、常に斜に構えた態度で周囲からは疎まれている存在だった。そんなバーバラの前に、若くて美しい美術教師、シーバが赴任してくる。そんなシーバを一目見て、「彼女となら、良い友情関係が築けるはず。運命の友達だわ!」と、勝手に胸をときめかせるバーバラ。

そんなある日、シーバの受け持つクラスで騒動が起こった。そこに偶然通りかかったバーバラは生徒を一喝し、騒ぎを収拾。この出来事がきっかけで、急速に親しくなって行くふたり。しかし平穏な日々も束の間。バーバラは目撃してしまう。シーバと男子生徒が抱き合っている姿を…。

と、あらすじを書くとまるで昼ドラのようですが、バーバラ役のジュディ・デンチがそれはもう、すごい。あまりの妄想炸裂っぷりに笑ってしまう…かと思ったのですが笑い事ではありません。バーバラが今までどのような人生を送ってきたか、どんな孤独を抱えて生きているのかが滲み出るような演技で、直視出来ないような痛さに襲われます。さすが、大迫力の存在感です。シーバを見つめる顔、夢に出て来そう。

バーバラは、シーバの様子を常に気にかけ、毎夜日記に彼女のことを書き綴る。シーバとの特別な絆が感じられた日には金色の星型シールが付け加えられる。ペタっと。こうした行動を見ると、まるで恋する乙女である。

気が遠くなるほどの月日を孤独に過ごし、疲れた肩は誰からも抱いてもらえない。だけどあの人はきっと分かってくれるはずだ、この空虚が。いや分かる。分からないはずがない!そうよね、私たちは同じなんだもの。このような突っ走った思い込みも、やっぱり恋する乙女(か、ストーカー)…。

少女期にはよくある気持ちである。私にも思い当たるふしがある。だけどバーバラは少女ではない。少女はやがて空想ではない恋をして、自分以外の人間と触れ合い、現実を知る。バーバラは恋をしなかったのだろうか、それとも、一度も実らなかったのか…。

あの年で男性経験も無く、人との触れ合い方を間違って、でも間違っていることにすら気付けない。ああはなりたくないわ、と思うけれど自分がそうならないとも限らない。いや、すでになってたらどうしよう!そして一見幸福なシーバも、根底にあるのはバーバラと同じ孤独である。この二人は、ある意味とてもリアルな女性像なのだ。だから怖い。

(リンナ)




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