【2024/2/24(土)~3/1(金)】『首』『乱 4Kデジタル修復版』『御法度』

もっさ

「僕は以前からビート君の映画が好きでね」
巨匠・黒澤明が生前、好きな映画100本を選んだ中に、北野武監督の『HANA-BI』があった。「『その男、凶暴につき』を見たときから、才能があると思った」(*1)のだという。そんな黒澤明監督に「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と言わしめた企画が、今回上映する北野武監督最新作『首』である。

本作でもひぇ~となる描写やお得意のバイオレンスがありながら、ゆるりとした笑いが入るなど独特な北野ワールドが全開だ。こんな狂った織田信長は見たことがないし、「全員悪人??アウトレイジじゃねぇか!!」と途中ツッコミ入れながら思わずクスクス笑ってしまう。だが、ふざけて見えるシーンが映える(?)のも、こだわって撮り直したという合戦のシーンや、ピッタリとしか言いようのない豪華キャスト陣の熱演があってこそ。加えて、渋いのにスタイリッシュで、煌びやかなのにシンプルな衣装たちにもご注目(担当したのは衣装界の巨匠・黒澤和子氏…なんと黒澤明監督の長女!)。

『首』と同じ戦国時代を舞台に、愛憎渦巻く悲劇を描く黒澤明監督の『乱』。アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を獲得した本作だが、中でもよく語られるという城の炎上シーンは圧巻だ。4億円もかけた城を燃やし、仲代達矢演じる一文字秀虎がその火の中から出てくるまで、ワンカットで撮影されたのだとか。全編にわたる鬼気迫る演技も凄いが、特にこのシーンはぜひ、大画面で目に焼き付けていただきたい。

ビートたけしを主演に迎えた大島渚監督の『御法度』。中でも目を惹くのは新選組の男たちを翻弄する美男・惣三郎を演じる松田龍平だ。お世辞にも演技が上手いとは言い難いが(…だって撮影当時、現役高校一年生、映画初出演、初演技!)、どうしようもない魅力が炸裂する。本作には『首』に出演している浅野忠信や、北野作品の常連である寺島進の若き日の姿も目にすることができる。

「出る時は必ず主役でなきゃいけませんよ、脇役はだめですよ、自分で監督なさい、あなたは日本のチャップリンになれる…」(*2)
『戦場のメリークリスマス』で「ハラ軍曹役」に抜擢するもっと前から、ビートたけしを映画界に誘っていたという大島渚監督。こんな未来が見えていたのだろうか。

北野武監督は『首』の完成報告会見で、大きなセットを組んだのにワンカットしか撮影しなかったことに対し「大島渚監督や黒澤明監督に“大事なシーンは引きで撮るべきだ”と言われたことが印象に残っていて、それが(撮影の時の)癖になっている」(*3)――そう語っている。

ビートたけしから映画のキタノへと導いた黒澤明監督と大島渚監督。その意志を受け継ぎながらも、たけしイズムを存分に発揮した映画『首』が狂い咲く。二人の恩師とのつながりを感じられる上映プログラムをとくとご堪能あれ!

*1) 文藝春秋BOOKS「“世界のクロサワ”が選んだ古今東西の名画」より抜粋
*2) CINEMORE「『戦場のメリークリスマス』大島渚×デヴィッド・ボウイ×ビートたけし×坂本龍一 異色の戦争映画が実現するまでの軌跡」より抜粋
*3) MusicVoice「西島秀俊「えっ!?ワンカットのために!?」黒澤明と大島渚の教えを貫く北野武」より抜粋


Kubi

北野武監督作品/2023年/日本/131分/DCP/R15+/シネスコ

■監督・脚本・編集 北野武
■製作 夏野剛
■プロデューサー 福島聡司
■原作 北野武『首』(角川文庫/KADOKAWA刊)
■撮影 浜田毅
■編集 太田義則
■音楽 岩代太郎

■出演 ビートたけし/西島秀俊/加瀬亮/中村獅童/木村祐一/遠藤憲一/勝村政信/寺島進/桐谷健太/浅野忠信/大森南朋/六平直政/大竹まこと/津田寛治/荒川良々/寛一郎/副島淳/小林薫/岸部一徳

■第76回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門正式出品/第47回日本アカデミー賞優秀助演男優賞ほか5部門ノミネート

©2023 KADOKAWA ©T.N GON Co.,Ltd.

【2024/2/24(土)~3/1(金)まで上映】

狂ってやがる。

天下統一を掲げる織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こし姿を消す。信長は羽柴秀吉、明智光秀ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長、軍司・黒田官兵衛の策で捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を殺さず匿う。村重の行方が分からず苛立つ信長は、思いもよらない方向へ疑いの目を向け始める。だが、それはすべて仕組まれた罠だった。

果たして黒幕は誰なのか? 権力争いの行方は? 史実を根底から覆す波乱の展開が、“本能寺の変”に向かって動き出す。

構想30年、日本が世界に誇る映画監督北野武、待望の最新作!

『その男、凶暴につき』『HANA-BI』『座頭市』『アウトレイジ』3部作など衝撃的な問題作を次々に発表し、世界中の映画ファンを魅了し続けてきた北野武監督の最新作。北野監督が初期の代表作の1本『ソナチネ』と同時期に構想し、30年もの長きに渡って温めていた本作は、巨匠・黒澤明が生前「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と期待していた念願の企画の映画化だ。“本能寺の変”が、戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な人物の野望と裏切り、運命とともに描かれ、キレ味抜群のバイオレンスと笑いをはじめとした北野ワールドのエッセンスが全開する。

北野武自らが“本能寺の変”を策略する羽柴秀吉を飄々と演じ、織田信長に複雑な感情を抱く明智光秀を西島秀俊が演じる。加瀬亮が狂乱の天下人・信長を怪演し、浅野忠信と大森南朋も秀吉を支える軍師・黒田官兵衛と弟の羽柴秀長をユーモアたっぷりに演じ切る。さらには秀吉に憧れる百姓・難波茂助を演じる中村獅童が北野組に初参戦。他にも木村祐一、遠藤憲一、桐谷健太、小林薫、岸部一徳らが歴史上の重要人物に独自のキャラでなりきっている。

信長の跡目をめぐるさまざまな欲望と策略が入り乱れ、燃え上がる本能寺から血肉が飛び散る“山崎の戦い“へと突き進むクライマックスのスペクタクルも本作の見どころ。そのスケールと迫力は北野武作品史上随一! 戦国エンターテインメントの全貌がついに明らかになる!

乱 4Kデジタル修復版
Ran

黒澤明監督作品/1985年/日本・フランス/162分/DCP/ビスタ

■監督・脚本・編集 黒澤明
■エグゼクティブプロデューサー 古川勝巳
■プロデューサー セルジュ・シルベルマン/原正人
■脚本 小国英雄/井手雅人
■演出補佐 本多猪四郎
■撮影 斎藤孝雄/上田正治
■音楽 武満徹

■出演 仲代達矢/寺尾聰/根津甚八/隆大介/原田美枝子/宮崎美子/野村武司(野村萬斎)/井川比佐志/ピーター/油井昌由樹/加藤和夫/松井範雄/植木等

■第58回アカデミー賞衣装デザイン賞受賞・監督賞ほか2部門ノミネート/第43回ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞ノミネート/全米批評家協会賞作品賞・撮影賞受賞/第9回日本アカデミー賞音楽賞受賞・助演男優賞ノミネート

©KADOKAWA 1985

【2024/2/24(土)~3/1(金)まで上映】

父と息子の、愛憎に彩られた悲劇を描く一大スペクタクル。壮絶な骨肉の争いが、いま始まる——

戦国時代。情け容赦なく他の武将たちを滅ぼしてきた猛将・一文字秀虎は七十歳を迎え、家督を三人の息子に譲ろうとする。乱世にも関わらず息子たちを信じて老後の安楽を求める父に異を唱える三男の三郎を、秀虎は追放してしまう。だが一の城と二の城の城主となった太郎と次郎は、三郎の案じた通り、秀虎に反逆し、血で血を洗う争いが始まる。その陰には、実の父と兄を秀虎に殺された太郎の正室・楓の方の策謀があった…。

世界の巨匠・黒澤明が多大な年月と製作費を注ぎ、執念で完成させた最高傑作!

構想10年、製作費26億円…
『羅生門』『七人の侍』など数々の名作を生み出した黒澤明監督が、晩年に到達した最高傑作。毛利元就「三本の矢」の故事から着想を得て、シェイクスピア「リア王」の世界観とも通じた本作は、1985年日本映画三位の配収実績を残し、アカデミー賞ほか国内外で数々の映画賞を受賞するという快挙を達成した。

監督自身が「人類への遺言」だと語る本作は、裏切りや憎しみの中で殺し合う絶望的な人間の姿を“天からの視点”で俯瞰した究極の悲劇であり、それまでの黒澤作品に見られた作家性が凝縮された集大成とも言える。激しい騎馬合戦や燃え上がる城のダイナミズム、伝統演劇を取り入れた色彩豊かで観念的な様式美は、観る者をただただ圧倒させ映画の世界に引き込む。

キャストは狂気と孤独の主人公を演じた仲代達矢を筆頭に、寺尾聰、根津甚八、隆大介、原田美枝子、宮崎美子、野村武司(野村萬斎)、井川比佐志、ピーターら豪華実力派が結集。さらに、黒澤組のベテラン陣ほか各界を代表する最高のスタッフが参加し、日本映画史上最大規模のプロジェクトが実現した。

人間の果てなき愚かさ、家族を巡る愛憎…争いの絶えない現代社会に向けて、黒澤明はなお普遍的な問いを投げかける。世界に冠たる不朽の反戦叙事詩が、今再びスクリーンに蘇る!

御法度
Taboo

大島渚監督作品/1999年/日本/100分/35mm/ヨーロピアンビスタ/SRD

■監督・脚本  大島渚
■製作総指揮 大谷信義
■製作 大島瑛子/中川滋弘/清水一夫
■原作 司馬遼太郎
■撮影 栗田豊通
■音楽 坂本龍一

■出演 ビートたけし/松田龍平/武田真治/浅野忠信/崔洋一/的場浩司/トミーズ雅/伊武雅刀/神田うの/吉行和子/田口トモロヲ/桂ざこば/坂上二郎

■第53回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品/第23回日本アカデミー賞新人杯優勝受賞・作品賞ほか8部門ノミネート

©1999 松竹/KADOKAWA/BS朝日/IMAGICA/松竹ブロードキャスティング

【2024/2/24(土)~3/1(金)まで上映】

わたしが狂っているのか?

幕末の京都。血気盛んな男たちの集団「新選組」にひとりの美少年が入隊する。彼の妖しいまでの美貌をめぐって、男たちの中を駆け巡る嫉妬とうわさ、そして憶測。「局中法度」「軍中法度」という厳しい戒律の下、抗争と殺戮に明け暮れていた新選組が、狂気を帯びた混乱に陥っていく…。

俺はすべての御法度を破ってきた。―大島渚

異色のキャスト、一流のスタッフが揃った大島渚監督のセンセーショナルな時代劇!司馬遼太郎の短編小説集「新選組血風録」収録の「前髪の惣三郎」と「三条磧乱刃」が原作。映画『戦場のメリークリスマス』以来となる監督・大島渚、主演・ビートたけし、音楽・坂本龍一のトリオ復活、松田優作の息子・松田龍平(当時16歳)の初出演などで話題となった。厳しい戒律によって結束を固めてきた新撰組に、妖しい美貌の少年が入隊したことから起こる衆道の騒動を描いた時代絵巻。