「アウトレイジ」そして「アウトレイジ ビヨンド」は、
立派なエンターテイメントとして不思議とこちらを興奮させる。
それは人情や義理の世界の温かく、しかし重苦しい組織の関係性とは違う。
かといって生きざまを見せるような瞬間的なエネルギーの爆発とも違う。
この二つの作品での物語は、あまりにも冷静に進められていき、結末に至る。
一手ずつ確実に終わりに近づき、
その終わりまでそれぞれの駒が自分の役割を果たしていくという、
ゲームのような冷めた世界だ。
同情だとか共感だとかが入り込む隙間が無い。
つまりこの登場人物たちには心情すら感じられない。
怒号や銃声、自動車音が人間味のない空間に響いた時、
それは内面や思考を通り越し、
まるでリズムのように身体に直接働きかけてくる。
だからこそ画面で起こるむごたらしい出来事を目の当たりにしつつも、
どこまでも続いて欲しいという欲求を抑えることが出来ない。
スクリーンに映るものすべてに体が反応し、
そのリズムにすでにのってしまっているからだ。
組織の内側のパワーバランスを描く「アウトレイジ」も、
組織の間の駆け引きを描く続編「アウトレイジ ビヨンド」も、
どちらも同じように私たちを楽しませてくれる。
怒号が心地よいなんて体験は後にも先にもこの映画だけかもしれない。
アウトレイジ
(2010年 日本 109分 シネスコ/SRD)
2013年2月16日から2月22日まで上映
■監督・脚本 北野武
■製作 森昌行/吉田多喜男
■撮影 柳島克己
■衣装デザイン 黒澤和子
■大友組組長衣装 山本耀司
■音楽 鈴木慶一
■出演 ビートたけし/椎名桔平/加瀬亮/三浦友和/國村隼/杉本哲太/塚本高史/中野英雄/石橋蓮司/小日向文世/北村総一朗
■第63回カンヌ国際映画祭パルムドールノミネート
関東一円を仕切る巨大暴力団組織、山王会の若頭である加藤(三浦友和)が、直参である池元組の組長、池元(國村隼)に苦言を呈した。 加藤は池元に、弱小ヤクザ村瀬組の組長、村瀬(石橋蓮司)との蜜月を怪しみ、ただちに村瀬組をしめ上げるよう命令したのだ。焦った池元は、自分の配下である大友組の組長、大友(ビートたけし)にその役目を押しつける。後始末や面倒なことは、いつでも大友の仕事だった。しかし、最初はいつもと同じと思われたその仕事が、じつは熾烈な大下克上劇の始まりだったとはまだ誰も気づいていなかった…。
自分の欲望を満たすためならば、誰かれかまわず、手段を選ばず、叩き潰して這い上がる。彼らが生死を賭け奪い、手にしたいのは【金と権力】ただ、それだけだ。『BROTHER』(01)、『座頭市』(03)以来7年ぶりにバイオレンス・アクションに挑んだ北野武監督作『アウトレイジ』に出てくるのは、そんな極めつけの悪(ワル)ばかり。ヒーロー不在という衝撃的な異色作が誕生した。
ビートたけし、椎名桔平、加瀬亮、三浦友和、國村隼、石橋蓮司など驚くほど豪華な個性派俳優が集結し、すさまじい怒号を飛び交わせながら、一触即発のバトルを繰り広げる。 ヤクザ社会を舞台に、欲望をむき出しにし、他人を蹴落としていくこの悪(ワル)い男たちの群像劇は、いまを生きる身勝手で思い上がった人間たちをも容赦なく映し出す。生き残りを賭けたこのゲームに勝てなければ…男たちに明日はない。
アウトレイジ ビヨンド
(2012年 日本 112分 シネスコ/SRD)
2013年2月16日から2月22日まで上映
■監督・脚本 北野武
■製作 森昌行/吉田多喜男
■撮影 柳島克己
■衣装 黒澤和子
■大友衣装 山本耀司
■音楽 鈴木慶一
■出演 ビートたけし/西田敏行/小日向文世/加瀬亮/桐谷健太/新井浩文/松重豊/中野英雄/名高達男/光石研/田中哲司/高橋克典/中尾彬/塩見三省/神山繁/三浦友和
■第69回ベネツィア国際映画祭コンペティション部門正式上映
前回の抗争から5年後。先代亡きあと会長が交代して新体制となり、関東の頂点を極めた暴力団【山王会】は、ついに政治の世界にまで手を伸ばし始めた。巨大ヤクザ組織の壊滅を企てる警察組織は、山王会の過剰な勢力拡大に業を煮やしていた。そこで目を付けたのが【花菱会】だ。表向きは友好関係を保っている東西の巨大暴力団の対立を目論み、刑事・片岡(小日向文世)は裏で策略を仕掛けていく。
そんな中、驚愕の事実が持ち出される。なんと前回の抗争中に獄中で死んだはずのヤクザ、大友(ビートたけし)が生きていた! 突如出所を告げられた大友。彼を出迎える片岡に「俺が死んだって噂流したのはお前か」「誰がまたヤクザやるって言ったよ」と吐き捨てる。しかし、警察が仕掛ける巨大な陰謀と抗争の足音が、大友には着々と近づいていた――。
2010年に大ヒットを記録した前作『アウトレイジ』あの時、ヤクザ社会の熾烈な下剋上劇は決着が着いたはずだった。しかし、騙し、裏切りの火種は依然くすぶり続け、さらなる巨大な権力を手中に収めようとする男たちの思惑が揺れ動き始める――。前作を凌駕するスケールの壮絶なパワーゲーム。いったい一番悪い奴は誰なのか?
ビートたけし、三浦友和、加瀬亮、中野英雄、小日向文世ら前作の生き残り組に加え、今作では関西ヤクザの西田敏行、塩見三省、高橋克典のほか、桐谷健太、新井浩文など殺気と色気を兼ね備えた男たちが新たに登場する。決戦の行方は、これを観ずして終わらない。究極のバイオレンス・エンターテインメントがいまここに!