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今週は第88回アカデミー賞でブリー・ラーソンが主演女優賞を受賞した『ルーム』、そして視覚効果賞を受賞した『エクス・マキナ』の話題作二本立てをお送りします。

『ルーム』は少女だった主人公が誘拐され、納屋(この物語では“部屋”と呼ばれる場所)に閉じ込められている7年の間に、誘拐犯との子を産み、母親になっているという重たい状況がベースとして存在しています。しかしこの映画の主観は、彼女の5歳の息子ジャックです。

誘拐された母親ジョイの辛さ、その後に彼女が苛まれる世間の動向も、その状況を把握していない子供の視線で描くと、暗く辛いだけではなく、驚きと発見の物語になっています。観ている私たちは、状況の大変さは理解しつつもワクワクしてしまうという今までにない感覚を味わえるのです。前半の“部屋”での生活は多くの人が子供時代に体験した母親と共に過ごす喜びに溢れ、後半につながる脱出劇は、新しい世界に触れた時の不安と興奮に満ちていて、さまざまな初体験を経て成長していくジャックの姿は、生きることの喜びと希望を与えてくれます。

地球に暮らす私たちが宇宙空間の大きさを想像しきれない様に“部屋”で生まれたジャックにとって、世界の範囲はとても狭いものです。しかし、監禁されていた母親のジョイにとって“部屋”は当然の日常を奪われた場所。閉じ込められているという感情は、外の世界を知っているからこそ生まれてくる気持ちなのだと、『ルーム』の親子を見ていて気づかされるのです。

一方『エクス・マキナ』に登場する女性型人工知能 (AI)ロボット・エヴァはまた少し違う方向で、閉じ込められているということを知ります。

彼女は生まれて(製造されて)から1年。『ルーム』のジャック同様、父親(=製造者)である検索エンジンシェアNO.1企業のCEO・ネイサンの山荘から出ることは許されず、本物の世界を見たことはありません。しかし、彼女の思考システムに組み込まれているのはGoogleのような検索システムです。この設定が、これまでの映画に登場してきた数々のAIロボットとエヴァとの決定的な差であり、魅力そのものなのです。

彼女は閉じ込められた世界に生まれながら、普通の人間が思いつく以上の知識と感情のデータを持ち、自分の状況を検索し、そして「閉じ込められている」と判断したのではないか。 いやいや、AIテスト(本当にエヴァが思考しているかどうかのテスト)をするために選ばれ、彼女に恋心を抱いてしまった主人公のケイレブと会話をしているうちに、感情が芽生えていったのではないか。そもそも、人の腹の底さえ読み取ることが難しい人間が、AIが本当に思考しているかどうかなんて判断がつくのだろうか。などと、この映画はシーンを追うごとに自分自身への問いかけが増えていき、いつか来るAIと共存する未来を何パターンも想像できる、画期的な近未来SFになっています。

2016年の今、人類と人工知能の関係が大きな話題となっています。『博士と彼女のセオリー』で主人公として描かれた宇宙物理学者スティーヴン・ホーキング博士は、「人工知能の進化は人類の終焉を意味する」とまで発言していました。同じ閉じ込められた世界で誕生した『ルーム』のジャックと『エクス・マキナ』のエヴァ。二作の結末の違いが、人類と人工知能の違いなんだと、一縷の希望を抱いてしまうのです。

(スタンド)

エクス・マキナ
EX MACHINA
(2015年 イギリス 108分 DCP R15+ シネスコ) pic 2016年10月8日から10月14日まで上映 ■監督・脚本 アレックス・ガーランド
■撮影 ロブ・ハーディ
■編集 マーク・デイ
■音楽 ベン・ソーリズブリー/ジェフ・バーロウ

■出演 ドーナル・グリーソン/アリシア・ヴィキャンデル/オスカー・アイザック/ソノヤ・ミズノ

■第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞・脚本賞ノミネート

正直なのは人間か? 人工知能か?

pic 検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社“ブルーブック”でプログラマーとして働くケイレブは、巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に1週間滞在するチャンスを得る。 しかし、人里離れたその地に到着したケイレブを待っていたのは、美しい女性型ロボット“エヴァ”に搭載された世界初の実用レベルとなる人工知能のテストに協力するという、興味深くも不可思議な実験だった…。

意識・感情・性、そして真実と嘘。
全てがアップデートされた
最新のSFスリラー

picIT企業のCEOが所有する山あいの邸宅に招かれ、人工知能のテストに協力することになったプログラマー。しかし実験は次第に怪しげな心理戦と化し、人間と人工知能の主従関係は崩壊していく――。 『28日後...』『わたしを離さないで』で脚本を務めるなど、数多くの話題作を手掛けているアレックス・ガーランドが満を持しての監督デビューを果たし、低予算作品ながら本年度アカデミー賞視覚効果賞を受賞、脚本賞にもノミネートした話題作が『エクス・マキナ』だ。

pic 『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』 のドーナル・グリーソン、『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデル、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』のオスカー・アイザックという、いまハリウッドで最も注目される若手実力派の3人が、物語の鍵を握る人間&人工知能を巧みに演じきる。優れたスリラーであると同時に、人間存在の根源的な意味を問う本作。スタイリッシュなヴィジュアルや音楽で彩られた、新感覚の作品が誕生した。

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ルーム
ROOM
(2015年 アイルランド/カナダ 118分 DCP シネスコ)
pic 2016年10月8日から10月14日まで上映 ■監督 レニー・アブラハムソン
■原作・脚本 エマ・ドナヒュー
■撮影 ダニー・コーエン
■音楽 スティーヴン・レニックス

■出演 ブリー・ラーソン/ジェイコブ・トレンブレイ/ジョーン・アレン/ショーン・ブリジャース/トム・マッカムス/ウィリアム・H・メイシー

■第88回アカデミー賞主演女優賞受賞、作品賞・監督賞・脚色賞ノミネート/第40回トロント国際映画祭観客賞(最高賞)受賞/第73回ゴールデン・グローブ賞主演女優賞受賞、作品賞・男優賞・脚本賞ノミネート ほか多数受賞・ノミネート

はじめまして、【世界】
閉ざされた【部屋】からの脱出。
大きすぎる世界に飛び込んだ母と息子は─。

picママとジャックが二人で暮らす狭い部屋に、今日も新しい朝が来た。歯磨き、ストレッチ、壁から壁への駆けっこ――ジャックは毎朝のルーティンを、ゲームのように楽しくこなす。今日はジャックの5歳の誕生日。けれど、出来上がったケーキに火のついたロウソクがないことにジャックは怒り出す。そんな彼をママは抱きしめるしかない。そう、この部屋にはロウソクだけでなく、いろんなものがない。窓さえも天窓一つあるだけだ。

ある日、ママは決意する。生まれてから1歩も外へ出たことがないジャックへ真実を話すのだ。ママの名前はジョイ、この納屋に閉じ込められて7年、外には本物の広い世界があるということを。そして、ママはジャックにこの【部屋】を脱出する計画を持ちかける――。

若き本格派女優と天才子役の誕生!
魂が慟哭する衝撃の感動作

pic 並み居る大作を押しのけ2015年のトロント国際映画祭で観客賞(最高賞)に輝いた『ルーム』。その快進撃は止まるところを知らず、連日のように主要賞を獲得していった。そして見事アカデミー賞主要4部門ノミネート、ママを演じたブリー・ラーソンは主演女優賞受賞という快挙を成し遂げた。ベストセラーを記録したエマ・ドナヒューの「部屋」(講談社刊)を原作に、『FRANK -フランク-』のレニー・アブラハムソンが監督を担当。脚色はドナヒュー本人が担当した。また、ジャックを演じるのはジェイコブ・トレンブレイ。恐るべき天才子役として数々の賞を受賞し、世界にその名を轟かせた。

息もできないサスペンスフルな脱出劇、母の愛だけを武器に外の世界に飛び出した息子の勇気――だが、物語はここから始まると言っても過言ではない。【部屋】を出てからのその先に、この映画の進化と輝きが待ち受けている。母と息子の絆という普遍的なテーマを、今までになかった新しい切り口で描いた本作。忘れられない劇的な体験をあなたに――。

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