ふとした瞬間に昔のことを思い出して、後悔したり、やり直せたらなあと思うことがあります。
楽しかった記憶に思わずニヤリとするのと同じように、辛かったことや恥ずかしい失敗に振り回されるなんてことも。
そんな過去の出来事を『ショート・ターム』『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』の両作品は暖かく見つめています。
『ショート・ターム』の舞台は、心に問題を抱える十代の少年少女が暮らすグループホーム。
傷ついた彼らを見つめるケアマネージャー・グレイスの表情、会話の節々に表れるユーモアが、
シリアスなテーマを扱った作品全体に優しい雰囲気を作り出します。
自身の妊娠や新しく入所してきた少女ジェイデンとの関係で、グレイス本人も、
ショートタームで暮らす彼らのようにトラウマを克服しようとするのです。
些細な気遣いとシンプルな会話のやりとりの積み重ねに時間をかけていく登場人物たち。
アイコンタクトや笑顔一つで、彼らの関係性が巧みに描かれています。
一方『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』の主人公ティムは、
ある日自分にタイムトラベル能力があることを教えられます。
過去に戻っては自分の失敗をやり直す一生懸命な彼のかわいらしさに、親近感を覚えるはずです。
さまざまな問題をやり直していく中で、過去に戻ることと、今ここで暮らすことの違いは何なのか彼は考えます。
タイムトラベルという突飛な設定が、今の暮らしの彩り方を少しずつ明らかにしていくのです。
良かったこと、悪かったことを整理してみると、新たな一歩を踏み出す気力に満ちてくることもあります。
新しい年度の始まりは、生活環境や人間関係の変化で慌ただしい時期です。
そんな四月も終りを向かえ、ゴールデンウィークでようやく一息つけるという人も多いのではないでしょうか。
忙しく暮らす日々に区切りをつけ、自分のことや周囲のことを見つめ直すのも、たまには良い機会かもしれません。
優しさに出会えるこの二つの映画が、そんな時間へと導いてくれるはずです。
ショート・ターム
SHORT TERM 12
(2013年 アメリカ 97分 ビスタ)
2015年5月2日から5月8日まで上映
■監督・脚本 デスティン・クレットン
■製作 マレン・オルソン/アッシャー・ゴールドスタイン/ジョシュア・アストラカン/ロン・ネイジャー
■撮影 ブレット・ポウラク
■編集 ナット・サンダーズ
■音楽 ジョエル・P・ウェスト
■出演 ブリー・ラーソン/ジョン・ギャラガー・Jr./ケイトリン・デヴァー/ラミ・マレック/キース・スタンフィールド
ティーンエイジャーをケアするシェルター“ショート・ターム”で働く20代のケアマネージャー、グレイスと、同僚でボーイフレンドのメイソン。子供が出来たことをきっかけに、2人の将来はささやかならがも幸せなものになるかと思われたが、実は、グレイスの心には、メイソンにも打ち明けられない深い深い闇が横たわっていた。
そんなグレイスの心を次第に開いてゆくのは、やはり同じように心に傷を負ったショート・タームの子供たち。新しく入所してきた、頭が良くて優しい少女ジェイデンや、ストイックでまっすぐな少年、マーカスだった。
SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)映画祭2013でのワールドプレミア以降、世界中で30もの映画賞を受賞した『ショート・ターム』。実名レビュー評価サイトRotten Tomatoes(ロッテン・トマト)で満足度99%を記録し、名実共に最高の評価を得ているヒューマン・ドラマ映画の真骨頂だ。
監督・脚本は、本作が長編2本目となる新人監督デスティン・クレットン。オスカー女優ジェニファー・ローレンスに注目され、ローレンスが主演、プロデューサーを務める新作の監督に抜擢されている。主役のグレイスを演じたのは『ドン・ジョン』のブリー・ラーソン。次世代を担うハリウッドの最注目女優である彼女の演技も本作の見どころのひとつだ。
ひとりぼっちで生きるのではなく、誰もが大切な人と一緒に明日を生きる喜びに気づかせてくれる――優しくて愛おしい感動作が誕生した。
アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜
ABOUT TIME
(2013年 イギリス 124分 シネスコ)
2015年5月2日から5月8日まで上映
■監督・製作総指揮・脚本 リチャード・カーティス
■製作 ティム・ビーヴァン/エリック・フェルナー/ニッキー・ケンティッシュ・バーンズ
■製作総指揮 ライザ・チェイシン/アメリア・グレンジャー
■撮影 ジョン・ガレセリアン
■編集 マーク・デイ
■音楽 ニック・レアード=クロウズ
■出演 ドーナル・グリーソン/レイチェル・マクアダムス/ビル・ナイ/トム・ホランダー/マーゴット・ロビー/リンゼイ・ダンカン
イギリス南西部に住む青年ティムは、両親と妹、そして祖父の、風変りだけど仲良しな家族と暮らしている。しかし、自分に自信のないティムは彼女がいないのが悩み。そして迎えた21歳の誕生日、父から衝撃の事実を知らされる。一家に生まれた男たちにはタイムトラベル能力があるというのだ…。
やがて弁護士を目指してロンドンへ移り住んだティムは、チャーミングな女の子メアリーと出会い、恋に落ちるのだが――。
『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』などで敏腕脚本家として名をあげ、大ヒット作『ラブ・アクチュアリー』で長編監督デビューを果たしたリチャード・カーティス。3作目にして最後の監督作となるのが本作である。「時間を巻き戻せたら違う道を選んでいた」という、生きていれば誰しもの頭をよぎる思いをベースに、恋人、友人、そして家族というかけがえのない人たちへの愛を解く人生讃歌だ。
主人公ティムを演じるのは、アイルランド出身で『スター・ウォーズ:エピソード7』に出演が決まっている期待の新星ドーナル・グリーソン。相手役には『きみに読む物語』や『ミッドナイト・イン・パリ』のレイチェル・マクアダムス。また、カーティス組常連のビル・ナイなど、実力派俳優たちが映画にリアルな重みと華を添えている。
なにげない平凡な一日が大切な一日に変わり、当たり前のように身近にいた人たちに感謝をしてまた大好きになる…。そんな世代を超えた普遍的なメッセージは、世界中で感動の嵐を巻き起こし、本国イギリスでは初登場1位を獲得。日本でも半年以上のロングヒットを記録した。