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今週の上映作品は、ともに芸術家の物語。『グランドフィナーレ』は引退した音楽家フレッド、『リリーのすべて』は画家のヴェイナー夫妻が主人公です。彼らは苦悩しながらも自分の人生の喜びや希望を見出していきます。

『グランドフィナーレ』の監督はパオロ・ソレンティーノ。前作『グレート・ビューティ/追憶のローマ』でアカデミー賞にも輝いたイタリアの若き巨匠です。“フェリーニの再来”ともいわれるソレンティーノの作品は、その完璧な美しさに誰もが圧倒されるはず。カメラワーク、色彩、美術やセット、音楽にいたるまで、ただ観ているだけでも満たされてしまいます。

けれどゴージャスなイメージのなかで描かれるのは、時に残酷なほどの、人間の孤独や挫折についてのドラマです。アルプスの高級ホテルでバカンスを過ごす老音楽家。彼はこの楽園の地で、長い間家族をないがしろにしてきた過去の代償と、「老い」という避けられない未来の不安とに向き合わなければなりません。そして、ホテルに集う人々もまた、それぞれの生き辛さをかかえています。映画は、音楽家を中心に奏でられる協奏曲のように、惹かれあったりすれ違ったりする登場人物たちの交流を群像劇として描いています。「些細な瞬間が人生に勝る」という監督の言葉通り、ユーモア溢れる印象的なエピソードの数々が物語のテーマを形作っています。

『リリーのすべて』のトム・フーパー監督は、『レ・ミゼラブル』を生み出したヒットメーカー。世界で初めて性別適合手術を受けた女性リリー・エルベとそのパートナー、ゲルタ・ヴェイナーの実話を映画化した本作は、アカデミー賞受賞作『英国王のスピーチ』の撮影前から構想があったものの、その内容からGOサインが出なかったそうです。それでも脚本にすっかり魅せられたフーパー監督は、エディ・レッドメインという若き名俳優を得て、素晴らしい作品を完成させました。

キューブリックの撮影スタイルに影響されたというシンメトリーな構図や、ヴェイナー夫妻が実際に描いた絵画を意識した固定カメラや抑えた色味など、どの場面の画も見応えがあります。周囲の目に屈せず、本当の自分らしくあるために果敢に生きたリリーと、もしかするとリリー以上に苦しみながらも、彼女を理解し支えた妻ゲルタ。ふたりの芸術家の勇気に、同じ表現者として尊敬の念を込めて、フーパー監督はこれまでのどの作品よりも映像やディテールにこだわっています。そして決して悲劇としてではなく、生きる喜びにフォーカスを当てた、とても真摯な映画です。

人生の美しさと苦悩に向き合った繊細な人間ドラマであり、見惚れるような映像美を堪能できる両作品ですが、それぞれの監督の映画や芸術に対するアプローチやビジョンの違いがそのまま表れています。今週は、二本の作品に共通するものとその違いにも注目していただけたらと思います。

(パズー)

グランドフィナーレ
YOUTH
(2015年 イタリア/フランス/スイス/イギリス 124分 DCP R15+ シネスコ) pic 2016年9月17日から9月23日まで上映

■監督・脚本 パオロ・ソレンティーノ
■撮影 ルカ・ビガッツィ
■編集 クリスティアーノ・トラヴァリョーリ
■音楽 デヴィット・ラング

■出演 マイケル・ケイン/ハーヴェイ・カイテル/レイチェル・ワイズ/ポール・ダノ/ジェーン・フォンダ

■2015年アカデミー賞主題歌賞ノミネート/カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品/ヨーロッパ映画賞作品賞・監督賞・ 主演男優賞・名誉賞受賞 ほか多数受賞・ノミネート

バカンスは終わり、人生が始まる。

pic 世界的にその名を知られる、英国人音楽家フレッド。今では作曲も指揮も引退し、ハリウッドスターやセレブが宿泊するアルプスの高級ホテルで優雅なバカンスを送っている。長年の親友で映画監督のミックも一緒だが、現役にこだわり続ける彼は、若いスタッフたちと新作の構想に没頭中だ。そんな中、英国女王から出演依頼が舞い込むが、なぜか頑なに断るフレッド。その理由は、娘のレナにも隠している、妻とのある秘密にあった──。

全てを手に入れた天才音楽家が見つけた人生の真実とは――?
美しいアルプスのホテルを舞台に圧倒的な映像美で描く

pic新作を発表するたびに、カンヌを始め、世界の映画祭から熱いラブコールを受けているイタリアの奇才パオロ・ソレンティーノ。 前作の『グレート・ビューティ/追憶のローマ』は、アカデミー賞外国語映画賞にも輝いた。そんな彼の最新作では、引退した音楽家がキャリアの最後に大輪の花を咲かせるべく、人生のすべてを賭けて大舞台に挑むまでの愛と葛藤を描く。

pic 主人公を演じるのは、『サイダー・ハウス・ルール』などで2度のアカデミー賞を獲得した名優マイケル・ケイン。 彼の娘に『ナイロビの蜂』でアカデミー賞を受賞したレイチェル・ワイズ。彼の親友の映画監督には、ハーヴェイ・カイテル。ホテルに滞在する元人気俳優役にポール・ダノ。また、ジェーン・フォンダは圧巻の演技で、ゴールデン・グローブ賞にノミネートを果たした。

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リリーのすべて
THE DANISH GIRL
(2015年 イギリス/ドイツ/アメリカ 120分 DCP R15+ ビスタ)
pic 2016年9月17日から9月23日まで上映

■監督・製作 トム・フーパー
■原作 デヴィッド・エバーショフ『世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語』(講談社刊)
■脚本 ルシンダ・コクソン
■撮影 ダニー・コーエン
■編集 メラニー・アン・オリヴァー
■音楽 アレクサンドル・デスプラ

■出演 エディ・レッドメイン/アリシア・ヴィキャンデル/ベン・ウィショー/アンバー・ハード/マティアス・スーナールツ

■2015年アカデミー賞歌曲賞助演女優賞受賞、主演男優賞・美術賞・衣装デザイン賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞男優賞・女優賞・音楽賞ノミネート/英国アカデミー賞主演男優賞ほか4部門ノミネート  ほか多数受賞・ノミネート

夫が女性として生きたいと願った時、妻はすべてを受け入れた。

風景画家のアイナー・ヴェイナーは肖像画家のゲルダと結婚し、デンマークで充実の日々を送っていたが、ある日、妻に頼まれて女性モデルの代役をしたことを機に、自分の内側に潜む女性の存在に気づく。それがどういうことなのかわからないまま、“リリー”という女性として過ごす時間が増え、心と身体が一致しない状況に苦悩するアイナー。一方のゲルダは夫の変化に戸惑いながらも、いつしか“リリー”こそアイナーの本質であると理解していく。

世界で初めて性別適合手術を受けた
デンマーク人リリー・エルベと、
その妻の揺るぎない愛を描いた至高のラブストーリー

今から80年以上も前にそれまでの自分と決別するために命がけで未知の手術に挑み、ひとりの女性としての人生を獲得した“リリー・エルベ”の軌跡。本作はその勇気を称える深淵なドラマであり、“リリー”に寄り添い続けたゲルダのとてつもなく大きな愛についてのラブストーリーだ。

監督は、アカデミー賞4冠に輝いた『英国王のスピーチ』、世界中を涙に包んだ『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー。主人公のリリーには『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したエディ・レッドメイン。また、リリーの一番の理解者であり続けた妻・ゲルダには『コードネーム U.N.C.L.E.』『エクス・マキナ』のアリシア・ヴィキャンデルが演じる。

誰にも理解されなくとも、お互いの味方であり続けたふたり。ふたりが育んだ無条件の愛の崇高さが観る者の胸に刻まれる。

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