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女優■カトリーヌ・ドヌーヴ

1943年10月22日、パリ生まれ。両親も俳優で、姉は女優の故フランソワーズ・ドルレアック。60年に姉と共に出演した『Les portes claquent』で本格的な女優活動を始め、ロジェ・ヴァディム監督作『悪徳の栄え』で大注目を浴び、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジャック・ドゥミ監督の名作『シェルブールの雨傘』で国際的スターの座を確固たるものとする。その後、男性恐怖症の殺人者を演じたロマン・ポランスキー監督の『反撥』、昼だけ娼婦となる主婦役を演じたルイス・ブニュエル監督の傑作『昼顔』、同じくブニュエル監督作でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『哀しみのトリスターナ』、フランソワ・トリュフォー監督作『暗くなるまでこの恋を』など、鬼才・名匠の傑作に多数出演し、匂い立つような妖艶さで観客を魅了。映画出演作は100本を超える。

90年代に入ってもその魅力は衰えず、レジス・ヴァルニエ監督作『インドシナ』でアカデミー賞主演女優賞にノミネート、セザール賞主演女優賞を受賞、ニコール・ガルシア監督作『ヴァンドーム広場』でベネチア国際映画祭女優賞受賞、フランソワ・オゾン監督作『8人の女たち』ではベルリン映画祭銀熊賞とヨーロッパ映画賞女優賞を女優8人全員で受賞、また08年のカンヌ国際映画祭では第61会記念特別賞を受賞するなど、永遠に輝き続けるフランスの大女優である。

■出演作品
・『パリジェンヌ』(61)
・『悪徳の栄え』(63)
『シェルブールの雨傘』(64)
・『世界詐欺物語』(64)
・『反撥』(64)
・『ピストン野郎』(64)
・『ロシュフォールの恋人たち』(66)
・『城の生活』(66)
『昼顔』(67)
・『恋のマノン』(67)
・『めざめ』(68)
・『別離』(68)
・『うたかたの恋』(68)
・『暗くなるまでこの恋を』(69)
・『幸せはパリで 』(69)
・『哀しみのトリスターナ』(70)
『ロバと王女』(70)
・『哀しみの終るとき』(71)
・『ひきしお』(72)
・『リスボン特急』(72)
・『モン・パリ』(73)
・『赤いブーツの女』(74)
・『哀しみの伯爵夫人』(74)
・『恋のモンマルトル』(75)
・『ハッスル』(75)
・『うず潮』(75)
・『愛よもう一度』(76)
・『銀行』(78)
・『夢追い』(79)
『終電車』(80)
・『海辺のホテルにて』(81)
・『ハンガー』(83)
・『フォート・サガン』(84)
・『女たちのテーブル』(85)
・『夜のめぐり逢い』(88)
・『恋路』(91)
・『インドシナ』(92)
・『私の好きな季節』(93)
・『百一夜』(94)
・『メフィストの誘い』(95)
・『夜の子供たち』(96)
・『ヴァンドーム広場』(98)
・『見出された時』(「失われた時を求めて」より)(99)
・『ポーラX』(99)
・『夜風の匂い』(99)
・『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)
・『イースト/ウェスト 遙かなる祖国』(00)
・『ヤング・ブラッド』(01)
・『家路』(01)
・『雲 息子への手紙』(01)
『8人の女たち』(02)
・『逢いたくて』(02)
・『永遠の語らい』(03)
・『キングス&クイーン』(04)
・『ストーン・カウンシル』(05)
・『輝ける女たち』(06)
『ペルセポリス』(07/声の出演)
・『アニエスの浜辺』(08)
・『クリスマス・ストーリー』(08)
・『隠された日記 母たち、娘たち』(09)
・『しあわせの雨傘』(10)

ほか多数

■アワード
・英国アカデミー賞主演女優賞ノミネート
 『昼顔』
・セザール賞主演女優賞受賞
 『インドシナ』『終電車』
・セザール賞主演女優賞ノミネート
 『しあわせの雨傘』
・セザール賞助演女優賞ノミネート
 『Palais royal!』
・ヨーロッパ映画賞女優賞受賞
 『8人の女たち』
・ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞
 『8人の女たち』
・ヴェネチア国際映画祭女優賞受賞
 『ヴァンドーム広場』
・カンヌ国際映画祭特別賞受賞
・アカデミー賞主演女優賞ノミネート
 『インドシナ』

ブロンドのロングヘア、吸い込まれそうな大きな瞳、スッとのびた鼻…
誰もがご存知、ヌーヴェルヴァーグを代表する女優カトリーヌ・ドヌーヴ。
その圧倒的な美しさは、かつて世界中を魅了しました。

あ、今「かつて」って言っちゃいました。ファンの方に怒られてしまうかも?だけど、ちょっと言い訳させて下さい。私だってドヌーヴファンなんですから! 『シェルブールの雨傘』の憂いを一杯に含んだ眼差し、『昼顔』の気品を漂わした妖艶さ、と思ったら『ロバと王女』の驚くほど可憐な王女様ルックなどなど…(ちなみに全部早稲田松竹で上映してます!)、あぁもうあげたらきりがない、同じ女性なら一度はあの完璧な美女になってみたいと思いますよね。

でも、その若かりし頃の美しさにひけをとらないほど、最近のドヌーヴの輝きはすごいのです。大女優としての貫録はもちろん半端じゃないけれど、年を重ねても、というより年を重ねたからこそ出せるチャーミングさが、私の大好きなところ。きっと彼女はとても感覚が鋭くて、好奇心が人一倍強い人なのでしょう。

かつて雑誌のインタビューで「女優になるための必要条件は?」と聞かれたドヌーヴは、
「存在感と感受性。才能は二次的な条件だと思います。」
と答えています。存在感と感受性。まさに今のドヌーヴそのもの!

今週は、そんな彼女の魅力を十二分に味わえる二本立て。
『クリスマス・ストーリー』はアルノー・デプレシャン、『しあわせの雨傘』はフランソワ・オゾン、どちらも今日のフランス映画界を牽引している名監督です。

監督に操作されている単なる俳優ではなく彼女がひとつの形式を創り出しているのが見てとれる。――僕にとってカトリーヌ・ドヌーヴはヌーヴェルヴァーグの偉大な映画作家のひとりなんです。 アルノー・デプレシャン

シナリオに取り掛かる前に、まずはドヌーヴに主役のオファーをしたんだ。彼女が快諾してくれなかったら、シナリオすら書かなかったし、本作は存在しなかったよ。 フランソワ・オゾン

ウ〜ララ〜、二人とも手放しの賛辞です。若き巨匠たちとの仕事を楽しみながら、軽やかに、そして華やかに役を演じるドヌーヴ。こんな女優、世界中どこを探したってひとりだけ!さぁ、ドヌーヴという魔女が仕掛けるフランス映画の魔法に、たっぷり浸ってみるとしましょう。

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クリスマス・ストーリー
UN CONTE DE NOEL
(2008年 フランス 150分 シネスコ・SRD)
2011年6月11日から6月17日まで上映
■監督・脚本 アルノー・デプレシャン
■脚本 エマニュエル・ブルデュー
■撮影 エリック・ゴーティエ

■出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ジャン=ポール・ルシヨン/アンヌ・コンシニ/マチュー・アマルリック/メルヴィル・プポー/イポリット・ジラルド/エマニュエル・ドゥヴォス/キアラ・マストロヤンニ

■2008年カンヌ映画祭特別賞(カトリーヌ・ドヌーブ)/2009年セザール賞9部門ノミネート・最優秀助演男優賞(ジャン=ポール・ルシヨン)/ニューヨーク・タイム誌が選ぶ「この10年のトップ50・第9位」(フランス映画最高ランク)

■オフィシャルサイト http://a-christmas-story.jp/

““すべての人生は驚きに満ちている!”
『二十歳の死』で鮮烈なデビューを飾ったアルノー・デプレシャン、
原点回帰とも集大成ともいえる最新作が誕生。”

picクリスマス。フランスのルーベという田舎町で、母ジュノンの病気をきっかけに疎遠になっていた子供たちが集うヴュイヤール家。“クリスマスに家族が再会”なんて聞いたら誰もが想像するのが、ファミリー向けの素敵な感動ストーリー。けれどもそこはデプレシャン(というかフランス映画)、見事に観客の期待を裏切ってくれます。

ヴュイヤール家が最初に授かった長男ジョセフは、幼くして白血病を発症。骨髄移植が必要な愛する子を救うため、夫婦は次男アンリを生むのですが、不運にも骨髄は不一致。ジョセフは6歳で神に召され、その時からアンリは“役立たず”となったのでした…。

影絵風の一見可愛らしい導入部分からしてもうおかしい。この家族、てんでバラバラです。

picまずドヌーヴ演じる母ジュノン。病を受け入れ良くできた人のように見えるけど、子供に向かって平気で「あんた嫌い」と言ってしまうあたり、わりと自分勝手です。可哀そうな次男アンリは相当ひねくれて成長してしまったのか、大人になっても一家の問題児。まじめな長女エリザベートはアンリを全身で嫌っていて追放までする始末。末っ子イヴァンだけが温和で普通な人かと思ったら、奥さんを従兄弟に寝取られてるのに、優しく見守ってるし…。

正直言って私の理解の範囲をとうに超えている家族像なのですが、なぜか「まぁ、これもありなのかな」と思わせてしまう妙な説得力があります。そしてそれこそがこの映画の魔法。花火や雪が舞う美しいクリスマスの景色は、破綻したヴュイヤール家の人々や私たち観客をふいに包み込み、ひと時の輝きを与えてくれるのです。

picけれど、フランス映画界きっての超(ほんとに超!!)豪華キャストが集結しているのが、本作を名作たらしめている最大の理由ではないでしょうか。デプレシャン作品常連のマチュー・アマルリック、エマニュエル・ドゥヴォスはじめ、アンヌ・コンシニ、イポリット・ジラルド、ジャン=ポール・ルシヨン、キアラ・マストロヤンニ、メルヴィル・プポー、そして我らがカトリーヌ・ドヌーヴ!“トリュフォーの再来”といわれるデプレシャン監督、よくぞここまで集めてくれました。

これだけの大スターが一同に介していて、それでもなお一際引き立つドヌーヴの魅力ってすごいもの。娘キアラとの共演も観ているこちらがニヤニヤしてしまいます。監督は彼女の役を「エレガントなごう慢さ」と表現していますが、まさにその通り。わがままだけどどこかチャーミングな母ジュノンを体現し、今までの数々の功績とあわせ、ドヌーヴは見事カンヌ国際映画祭特別賞を受賞しました。

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しあわせの雨傘
POTICHE
(2010年 フランス 103分 ビスタ・SRD)
2011年6月11日から6月17日まで上映
■監督・脚本 フランソワ・オゾン
■撮影 ヨリック・ル・ソー
■音楽 フィリップ・ロンビ

■出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ジェラール・ドパルデュー/ファブリス・ルキーニ/カリン・ヴィアール/ジュディット・ゴドレーシュ/ジェレミー・レニエ

■2010年セザール賞5部門ノミネート/第57回ベネツィア国際映画祭コンペティション部門出品

■オフィシャルサイト http://amagasa.gaga.ne.jp/

★プリント劣化のため、本編上映中お見苦しい箇所がございます。ご了承の上ご鑑賞いただきますようお願いいたします。

““そうよ、人生は美しい”
フランソワ・オゾン×カトリーヌ・ドヌーヴ
『8人の女たち』のタッグが贈る、愛すべきサクセス・ストーリー!”

pic現代の壊れかかった家族の話に続き、こちらは40年前のブルジョワ一家の物語。趣味のポエム作りに励むスザンヌ・ピュジョルは、優雅で退屈な毎日を送る主婦。雨傘工場を経営している夫ロベールは典型的な亭主関白で、スザンヌはいわゆる“お飾りの妻”なのです。そんなある日、雨傘工場でストライキが起こり、監禁されたロベールはショックで心臓発作、あれよあれよという間にスザンヌが工場を経営する羽目に…。

テンポのよい演劇タッチのコメディーは、オゾンとドヌーヴにとって、『8人の女たち』で証明された通りお手の物。いざ、物語の始まり始まり〜…と、まずいきなり私たちの目に飛び込んでくるのが、ドヌーヴまさかの全身赤ジャージにカーラー頭!は、迫力満点…こんなことを往年の大女優にやらせてしまうのがオゾンだし、逆にいうとドヌーヴの身軽さですね。なんだか個人的に最近の松坂慶子を思い出すのは私だけでしょうか。

とにかく、始めから終りまで、ドヌーヴの華麗なるコメディアンヌぶりに圧倒させられる本作。なかでもジャージ姿ばりに強烈なのが、『終電車』で忘れ難い共演をしたジェラール・ドパルデューとのディスコ・シーン。かつて恋仲で、今では市長となったババンを演じるドパルデューとのペアダンスは、ベタすぎる音楽とベタすぎる振付で、思わず吹き出してしまうほどおもしろい!ノスタルジックを笑いで表現してしまう監督のセンスに脱帽です。

pic夫ロベールを演じたのは、エリック・ロメール作品でお馴染みのファブリス・ルキーニ。ドヌーヴとのちぐはぐな夫婦の様子がこれまたぴったり。ちなみに息子ローラン役のジェレミー・レニエは、『ある子供』や『ロルナの祈り』などダルデンヌ兄弟作品の常連。くらーいダルデンヌ調に溶けこんでいた彼とは似ても似つかない程、爽やかな笑顔を爆発させています。(爽やか過ぎてむしろうさんくさい…)

こうしてみると『クリスマス・ストーリー』にも負けないくらいの豪華共演。もちろん「女性映画の名手」オゾン監督ですから、俳優任せのただのコメディだけで終わらせず、70年代の女性運動などの社会背景を盛り込んで、彼らしいユーモアたっぷりの風刺劇になっています。こうゆう小粒な作品でもこの完成度、さすが映画の本家おふらんすです。

そして、その偉大なるおふらんす映画史のなかで、半世紀(!)もの間トップに君臨し続けるカトリーヌ・ドヌーヴ。まさに“フランス映画に咲くバラ”(ぜひ、早稲田松竹の6月チラシの表紙をご覧ください!)。名だたる監督たちと共に数多くの傑作を生み出してきた彼女が、次に選ぶのはどんな作品なのでしょう。まだまだ私たち映画ファンを楽しませてくれるに違いありません。 (パズー)



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