焼け石に水
GOUTTES D'EAU SUR PIERRES BRULANTES
(2000年 フランス 90分)
2003年7月5日から7月11日まで上映 ■監督・脚本 フランソワ・オゾン
■原作 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
■出演 ベルナール・ジロドー/マリック・ジディ/リュディヴィーヌ・サニエ/アンナ・トムソン

★本編はカラーです

(C)ユーロスペース

70年代、ドイツ。20歳の青年フランツは、中年男性レオポルドに誘われるがまま同棲を始める。やがてフランツはレオポルドへの愛を募らせるが、関係は冷ややかになっていった。

そんなある日、女性に性転換したレオポルドの元恋人とフランツの婚約者が現れ、4人の愛は奇妙にねじれ、悲劇的な方向へ向かって転がりだすのだった。

picフランソワ・オゾンの長編3作目の『焼け石に水』は36歳で急逝したドイツの伝説的な映画・演劇人R・W・ファスビンダー(1946〜82)が19歳で書いた未発表の戯曲が原作。

二人の人間が一緒に暮らし、日常の荒波にまみれるところから次第に変質し、失墜していく関係性。愛の危うさをブラック・ユーモアとエロチシズムを漂わせて描く、四幕構成の室内劇だ。

キャスティングはベテランと新人を組ませた異色の組み合わせ。なかでも性転換した元男性ヴェラをアンナ・トムソンが怪演。インディペンデント映画界の女王の貫禄をみせている。

picファスビンダーの孤独と狂気を正面から描き切ることに成功したフランソワ・オゾン。まだ30代前半であるにもかかわらず、立て続けに才走った作品を発表、彼のエネルギッシュな快進撃は止まる気配がない。

ゲイ的視点の強調、キャンプやキッチュ趣味、バッドテイストやブラックジョークの偏愛と、フランス映画では異色な作家性と物議を醸す話題性で“フランス映画世代のトップランナー”の評価はすでに衆目の一致するところだ。


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8人の女たち
8 FEMMES
(2002年 フランス 111分)
pic 2003年7月5日から7月11日まで上映 ■監督・脚本 フランソワ・オゾン
■脚本 マリナ・ドゥ・ヴァン
■出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/エマニュエル・ベアール/イザベル・ユペール/ファニー・アルダン/ヴィルジニー・ルドワイヤン/リュディヴィーヌ・サニエ/ダニエル・ダリュー/フィルミーヌ・リシャール

■2002年ベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞受賞)

(C)ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ

1950年のフランス。クリスマス・イブの朝、雪に閉ざされた大邸宅で一家の主が殺された。容疑者は主の妻、妹、娘、義母、メイドなど主人との間に何らかの関係を持つ8人の女たち。家族だんらんの雰囲気から一転、お互いが疑心暗鬼に陥るなか、怪しくも美しき彼女たちの秘密がつぎつぎと明かされる。犯人は一体誰…?

フランスの大女優8人が一堂に会す夢の競演作。誰もが主演級という豪華アンサンブル・キャストが、まるで色とりどりの大輪の花のように咲き誇る。

これほどの女優たちに出演を快諾させたのは、今フランスで一番の人気と実力を誇るフランソワ・オゾン。熱狂的なシネ・フィルとして知られている彼は、この作品でアガサ・クリスティ風の古典的な密室推理劇の設定を借り、1950年代のハリウッドの名作を中心におびただしい数の映画から引用をしている。

特にメロドラマを撮らせたら比肩するものがいない50年代のハリウッドの名匠ダグラス・サークと、女優を美しく撮ることにかけてはハリウッド随一の巨匠アレフレッド・ヒッチコック。さらにはフランソワ・トリュフォーの作品である。

pic彼らの映画の中の台詞をそのまま引用したり、彼が愛してやまなかったドヌーヴとファニー・アルダンの二人の美しきヒロインを共演させることで、ヌーヴェル・ヴァーグにもさりげないオマージュを捧げている。

50年代ディオールの“ニュー・ルック”をモデルにした華麗な衣装、ドールハウスを連想させるカラフルな家具やセット・デザイン。歌と踊りで味付けされた本作は極上のワインのように、うっとりとするような陶酔感と楽しさを持ち合わせた一品へと仕上げられた。



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