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『終電車』に出演したカトリーヌ・ドヌーヴは、
女優を最も魅力的に撮る世界の三大監督に、
ジョージ・キューカー、イングマール・ベルイマンとともに、
トリュフォーの名を挙げました。
そして時に“女優に捧げられた映画”と言われるくらい、
トリュフォーの撮る女性たちはどの作品でも本当に美しい。
いや、美しいだけでなく、確固とした意志と行動力を持った
芯の強い女性たちといえます。
今週上映の4作はそうしたトリュフォー監督独自の
女性への眼差しが感じられるラインナップ。
トリュフォーが愛した女優たちの魅力を、是非ご堪能ください。(ミスター)

トリュフォー

1932年パリ生まれ。父親は設計技師で母親は雑誌社の秘書だった。生後すぐから祖母や叔母に預けられ、両親から愛された記憶を持たないという。そんな彼の孤独を癒したのは書物と映画だった。

初等教育を終え商店の使い走りをしていたが、映画に夢中になっていた彼は、47年にシネクラブを結成し、文化機関である「労働と文化」の映画部門を担当していたアンドレ・バザンと出会う。ところがシネクラブの上映会のトラブルから少年鑑別所に贈られ、バザンによって救い出される。彼の助手となったものの、バザンは病に倒れ、トリュフォーは職場を追われてしまう。そして工場勤めをしていたところ、女性誌「エル」の文芸部長に出会い、編集部で働くことになる。この頃、日参していたシネマテークやシネクラブで、エリック・ロメール、ジャック・リヴェッド、ジャン=リュック・ゴダールらと知り合っている。

50年、失恋の痛手から思いあまって兵役に志願。インドシナへの赴任直前に脱走を企てて失敗し、軍の刑務所に入れられる。ここでもバザンが働きかけ、52年に解放される。翌年、バザンのすすめで「カイエ・デュ・シネマ」誌に映画批評を書き始める。ここで伝統的なフランス映画を切り捨てた「フランス映画のある種の傾向」という論文を発表したため、“フランス映画の墓掘人”と恐れられるようになった。

その後も過激な批評を「アール」誌などに発表し続けていたが、54年には16ミリの短編習作を作り、また「勝手にしやがれ」のシナリオの原形も執筆している。56〜57年にはロベルト・ロッセリーニの助監督になり企画に参加するものの、実際の撮影は行われていない。

57年に初めて35ミリで撮った短編『あこがれ』を経て、58年に長編処女作『大人は判ってくれない』の撮影に入った。そしてこの作品は、撮影開始直後に亡くなったバザンに捧げられ、59年カンヌ映画祭に出品。監督大賞を受賞する。65年には敬愛するアルフレッド・ヒッチコックに50時間ものインタビューを行い、『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』として出版している。

68年、アンリ・ラングロワがシネマテークを解雇された事件をきっかけに、シネマテーク擁護委員会を作り抗議運動を起こす。同年、5月革命の流れの中で、ゴダールらとともにカンヌ映画祭を中断させる

。73年には、『アメリカの夜』でアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞。77年にはスティーヴン・スピルバーグの『未知との遭遇』に出演。

83年の夏、『日曜日が待ち遠しい!』の次の作品の脚本に取りかかっていたところ発作に襲われ、脳の手術を受ける。入院中には、ファニー・アルダンとの間に女の子が生まれている。84年10月、脳腫瘍のためこの世を去る。享年52歳だった。モンマルトル墓地で営まれた葬儀には2000人もの参列者が訪れたという。

filmography

・王手飛車取り('56)(未)出演
・水の話/プチ・シネマ・バザール('57〜'89)監督
あこがれ('58)監督/脚本/台詞
・勝手にしやがれ('59)原案
大人は判ってくれない('59)監督/原案/脚本/台詞
ピアニストを撃て('60)監督/脚本/台詞
突然炎のごとく('61)監督/脚本/台詞
二十歳の恋(アントワーヌとコレット)('62)監督/脚本/台詞
柔らかい肌('63)監督/原案/脚本/台詞
・マタ・ハリ('64)脚本
・彼女について私が知っている二、三の事柄('66)製作
・華氏451('66)監督/脚本
夜霧の恋人たち('68)監督/原案/脚本/台詞
・黒衣の花嫁('68)監督/脚本
・野性の少年('69)監督/脚本/出演
・暗くなるまでこの恋を('69)監督/脚本
・家庭('70)監督/脚本
・恋のエチュード('71)監督/脚本
私のように美しい娘('72)監督/脚本/台詞
・映画に愛をこめて アメリカの夜('73)監督/脚本/出演/製作
・アデルの恋の物語('75)監督/脚本/製作
・トリュフォーの思春期('76)監督/脚本/製作
・恋愛日記('77)監督/脚本/製作
・未知との遭遇('77)出演
・緑色の部屋('78)監督/脚本/出演
・逃げ去る恋('78)監督/脚本/製作
・未知との遭遇 特別編('80)出演
終電車('80)監督/原案/脚本/台詞
・隣の女('81)監督/脚本/製作
日曜日が待ち遠しい!('82)監督/脚本
・小さな泥棒('88)原作
・フランソワ・トリュフォー/盗まれた肖像('93)出演

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ピアニストを撃て

pic(1960年 フランス 82分 シネスコ/MONO)
2011年1月1日から1月3日まで上映 
■監督・脚本・台詞 フランソワ・トリュフォー
■脚本 マルセル・ムーシー
■撮影 ラウル・クタール
■音楽 ジョルジュ・ドルリュー
■出演 シャルル・アズナヴール/マリー・デュボワ/ニコル・ベルジェ

雪の中で繰り広げられる美しく秀逸なラスト・シーン
シャルル・アズナヴールの切ない演技が光る酒脱な一編

シャルリは、パリの場末のカフェのピアノ弾きだった。郊外でひっそり暮らす彼は二人の兄の悪事によって、ギャングとのいざこざに巻き込まれることになる。シャルリはウェイトレスのレナと共に逃げだし、彼女の部屋に向かった。シャルリには、悲しい過去があった。彼の本名はエドゥアール。かつては有名なピアニストだったが、妻が体を売って名声を得たとわかり、その妻は自殺。シャルリは名前を捨てて、レナと人生をやり直そうとしていた。しかし、2人が逃げ込んだ先で銃撃戦が始まり…。

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日曜日が待ち遠しい!

pic(1983年 フランス 112分 ビスタ/MONO)
2011年1月1日から1月3日まで上映
■監督・脚本 フランソワ・トリュフォー
■撮影 ネストール・アルメンドロス
■音楽 ジョルジュ・ドルリュー
■出演 ファニー・アルダン/ジャン=ルイ・トランティニャン/フィリップ・ローデンバック

永遠に語り継がれるトリュフォーの遺作は
ロマンチックで痛快な恋物語

不動産会社の秘書・バルバラは、日頃から犬猿の仲だった社長・ジュリアンにクビを言い渡される。しかし同じ日、ジュリアンは二つの殺人事件に巻き込まれ窮地に立たされる。助けを求められたバルバラが彼の無実を証明するため力を貸すうち、二人は恋に落ちた。ところが、一転してバルバラはジュリアンを警察に引き渡してしまい…。モノクロームのスタイリッシュな画面に、トリュフォーの最後の恋人となったファニー・アルダンの美しさが際立つ。

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終電車

pic(1980年 フランス 132分 ビスタ/MONO)
2011年1月4日から1月7日まで上映 
■監督・原案・脚本・台詞 フランソワ・トリュフォー
■撮影 ネストール・アルメンドロス
■出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ジェラール・ドパルデュー/ジャン・ポワレ
■セザール賞作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞

トリュフォーが描く大人の恋愛決定版!

1942年、ナチス占領下のパリ。モンマルトル劇場の支配人のルカはユダヤ人であるがゆえに、密かに地下室に身を隠していた。そんな中、代わりに劇場を切り盛りする妻で女優のマリオンは、新しい演し物「消えた女」で主役を務めることになっていた。夫を愛するマリオンだが、やがて相手役の新人ベルナールに魅かれていく。やっと迎えたパリ解放の時、そこには意外な結末が…。

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柔らかい肌

pic(1964年 フランス 118分 ビスタ/MONO)
2011年1月4日から1月7日まで上映 
■監督・原案・脚本・台詞 フランソワ・トリュフォー
■撮影 ラウル・クタール
■音楽 ジョルジュ・ドルリュー
■出演 ジャン・ドサイ/フランソワーズ・ドルレアック/ネリー・ベネデッティ

女性心理と中年男の情念を巧みに描いた
サスペンスフルな物語

ピエール・ラシュネーは文芸誌の編集長で、評論家としても有名だった。妻フランカと娘との暮らしも順風満帆に見えたが、ピエールは若い客室乗務員・ニコルと恋に落ちてしまう。ニコルとの新しい生活を夢見て家を出たピエールはプロポーズするが、彼女はそれを拒絶したのだった。孤独になったピエールは妻に謝罪の電話を入れるが、それは彼女が出かけたすぐ後のことだった。フランカは旅先の写真から愛人の存在を知ってしまい、夫がいつも行くレストランへ向かっていたのだ。その手には、猟銃が握られていた…。

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