息子のまなざし
LE FILS
(2002年 ベルギー/フランス 103分)
2006年7月29日から8月4日まで上映
■監督・脚本・製作 ジャン=ピエール・ダルデンヌ / リュック・ダルデンヌ
■出演 オリヴィエ・グルメ(『ある子供』『イゴールの約束』)
/ モルガン・マリンヌ / イザベラ・スパール
■2002年カンヌ国際映画祭 男優賞受賞 / パルム・ドールノミネート
■オフィシャルサイト http://www.bitters.co.jp/musuko/
オリヴィエは、職業訓練所で大工仕事を教えている。ある日、そこへフランシスという少年が入所してきた。少年は大工のクラスを希望するが、オリヴィエは手一杯だからと、それを断った。
物語は淡々と映像化される。日常生活が第三者によって説明されることがないように。ごく自然に。
フランシスという少年とオリヴィエ。全くの他人同士であるはずの二人。しかし、オリヴィエはフランシスを監視するかのように後を尾ける。フランシスを拒み、フランシスに怯え、それでもフランシスを追う。何故そこまで?オリヴィエは知っているのだ、少年が何者であるかを。
あまり語ることをしないオリヴィエの表情や、行動に垣間見る様々な感情。周囲の人間、仕事、家族。父親であるということ。オリヴィエという男を知るうちに、彼から見たフランシスという少年を知り、フランシス自身を知ることになる。
あなたは、最も憎むべき相手を、受容することができるだろうか?
自分を受け入れてくれる人を無意識のうちに求めるフランシス。ある事件から心を閉ざし、他人を受け入れることができなくなっていたオリヴィエ。互いのまなざし。そしてまた、もうひとつのまなざしがそこにはある。
(ロバ)
ある子供
L'ENFANT
(2005年 ベルギー/フランス 95分 )
2006年7月29日から8月4日まで上映
■監督・脚本・製作 ジャン=ピエール・ダルデンヌ / リュック・ダルデンヌ
■出演 ジェレミー・レニエ(『イゴールの約束』)/ デボラ・フランソワ / ジェレミー・スガール
■2005年カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞
■オフィシャルサイト http://www.bitters.co.jp/kodomo
ブリュノ20歳、ソニア18歳。出産したソニアが赤ちゃんを抱えてアパートに帰ってくると、部屋には見知らぬ男女がいた。金に困ったブリュノが勝手に二人のアパートを貸してしまっていたのだ。
本当にしょうもないチンピラのブリュノ。否、チンピラにすらなりきれておりません。どこからどう見ても、絵に描いたような行き当たりばったりぶり。金がないから盗む。働いて稼ぐのはかったるいから働かない。売れるものがあれば、とりあえず何でも売ってみる。生まれたばかりの、自分の子供も。
彼はきっと、自分のしょうもなさにすら気付いていない。彼以外の誰もが気付いているのに。ソニアが持ち合わせている母性の存在に、観ている側は救われるが、ソニアだって完璧な大人ってわけじゃない。そう、この子たちは本当に、余りにも知らなさすぎる。知らないなりに、不安に駆られながらも不器用に、必死に生きている。それが間違った方向でも。彼らは若いのではなくて、幼すぎるのだ。
この映画は極端な例だけど、大切なことやものが見えていない、って、実際私達の周りにも溢れている。そして自分の中にある、駄目な部分の存在も。それを変えようと思ったところで、果たして変えられるだろうか?そんな決意や自覚以前に、自分でも何故か解らないうちに、「意志未満の気持ちの変化」というのが、現実には起きることがある。完璧に生まれ変われなくても、少しの気持ちの変化がとても大事なときもあるのではないだろうか。
二人が落とした涙の意味を、二人は解っているだろうか。解らなくても、二人で泣きながら寄り添うことに意味はあると思う。
音楽未使用、手持ちカメラで自然光撮影というドキュメンタリータッチな作風で、徹底して貧困層の子供→大人を描き続けてきたダルデンヌ兄弟。『ある子供』は2005年のカンヌ国際映画祭で『ロゼッタ』に続き、2度目のパルムドールを受賞。今回は『ロゼッタ』ではなく、あえて『息子のまなざし』との二本立てにしてみました。どうぞご堪能ください。
(mana)