時を越えて実現した、世界の二大巨匠の出会い

2007年12月に日本公開された、『夜顔』。『昼顔』の登場人物の38年後を描いた『夜顔』は、マノエル・ド・オリヴェイラがルイス・ブニュエルに捧げたオマージュです。『夜顔』を観る前に、予習として『昼顔』を観てから劇場へ向かった人は私だけではないはず!『昼顔』『夜顔』の2本立てを今か今かと待ち望んでおりました皆様、お待たせいたしました。

昼顔
BELLE DE JOUR
(1967年 フランス 100分)
pic 2008年6月21日から6月27日まで上映 ■監督 ルイス・ブニュエル
■原作 ジョセフ・ケッセル
■脚本 ジャン=クロード・カリエール/ルイス・ブニュエル
■出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ジャン・ソレル/ジュヌヴィエーヴ・パージュ/ミシェル・ピコリ/フランソワーズ・ファビアン

1967年、ジョセフ・ケッセルの小説をもとに映画化された『昼顔』。
人気の絶頂にいたカトリーヌ・ドヌーヴを主演に、ルイス・ブニュエルが描いた秘密と情欲の物語。

あらすじをお話する前にひとこと。
もしまだ『昼顔』をご覧になったことがなければ、出来ることならばあらすじとストーリーを読まないままに観ていただきたいと思います。現実と妄想が入り組んでいる今作品。セヴリーヌと共に、その得体の知れない世界に足を踏み入れてください。

<それでも知りたい人のためのあらすじ>
外科医である夫ピエール(ジャン・ソレル)と妻セヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は誰から見ても幸せな夫婦だと言えた。実際妻は夫を慕い愛していたし、夫もまた美しい妻に優しい良き夫だった。しかしいつの頃からか、セヴリーヌは悩ましい妄想を見るようになる。

馬車の鈴が鳴る音とともに、不思議な妄想がセヴリーヌを責めたてる。湧き上がる情欲に葛藤するセヴリーヌだったが、悪魔のささやきを聞き入れてしまったように、引き寄せられるまま向かう先は・・・。

昼間は秘密クラブに通い、夜は愛する夫の胸で眠る貞淑な妻という二重生活を送り始めるセヴリーヌ。夫を愛しているのに、どうして?とうとうある日、秘密クラブの事が夫の友人アンリ(ミシェル・ピコリ)に知られてしまう。破綻する二重生活の結末とは。

監督ルイス・ブニュエル(1900-1983)はスペイン出身。サルバドール・ダリとの共同制作作品『アンダルシアの犬』(女性の眼球が切られるという衝撃的な映像…!)が話題となり、その処女作の作品性からシュールレアリスム映画監督と言われますが、実際にはその範疇に留まらない多様な作品を生み出しています。

余談ですが・・・個人的には、セヴリーヌを求めて執着するマルセル(ピエール・クレマンティ)に注目していただきたい。気に入ったものは求めて求めて放さないマルセル。ぎらぎらした瞳でこちらを見ているのです。怖過ぎる!(ファンの方がいらっしゃったらごめんなさい)


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夜顔
BELLE TOUJOURS
(2006年 フランス/ポルトガル 70分)
pic 2008年6月21日から6月27日まで上映 ■監督・脚本 マノエル・ド・オリヴェイラ
■出演 ミシェル・ピコリ/ビュル・オジエ/リカルド・トレパ/レオノール・バルダック

■オフィシャルサイト http://www.alcine-terran.com/main/yorugao.html

巨匠、マノエル・ド・オリヴェイラによる「秘密」と「欲望」についての考察、『夜顔』。『昼顔』の登場人物による、続編のようでそうでない、駆け引きとユーモアの物語。

『昼顔』の登場人物の38年後を描くのはマノエル・ド・オリヴェイラ監督。そしてカトリーヌ・ドヌーヴが演じたセヴリーヌ役を受け継ぐのはビュル・オジエです。どうしてカトリーヌ・ドヌーヴが同じ人物の役を演じないのか、そんな野暮な質問は無意義です。“『夜顔』は『昼顔』の続編のようでそうではない。”のですから。

<あらすじ>
ある日の夜。パリのコンサート会場で、アンリ(ミシェル・ピコリ)はかつての友人の妻で今は未亡人となったセヴリーヌ(ビュル・オジエ)と偶然に再会する。コンサート終了後、アンリはセヴリーヌのあとを追うが、彼女は彼から逃げるようにタクシーに乗り去ってしまう。やっとのことで彼女を見つけたアンリは、胸に秘めていた過去の衝撃的な出来事の真実を打ち明けたいという口実で、無理矢理ディナーの約束を交わす。38年前のあの夜、セヴリーヌ、夫ピエール(ジャン・ソレル)、アンリの間に起こったこととは…

監督のマノエル・ド・オリヴェイラ(1908−)はポルトガル出身。現役映画監督では最高齢だと言われる彼は、今年12月に100歳を迎えます。70歳を過ぎた頃からはほぼ1年に1作のペースで映画を撮り続け、『夜顔』撮影後も変わらず新たな制作に励んでいる様子。ミシェル・ピコリと並んでいると、一体どちらが年長なのかわからないほど若く見えるオリヴェイラ。今後も10本、20本と撮り続けて欲しいと願います。

主演のビュル・オジエとミシェル・ピコリは馴染みのふたりで、以前から映画・舞台で共演しています。オリヴェイラの『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(1972年)の他、今年4月から公開されたジャック・リヴェット監督作品『ランジェ公爵夫人』でも好演しています。ビュル・オジエへの『夜顔』の出演依頼は、ミシェル・ピコリを介して行われたそう。

さて、ぜひ観ていただきたいのはふたりのディナーシーン。美しく設えられたホテルの一室、蝋燭の炎が燃える。ふたりが黙々とディナーを過ごすこのシーンは、ワンカットで撮られているそうです。蝋燭の減り具合は自然に流れた時間に等しいという訳です。

そして『昼顔』を観た人は皆さん気になっていることと思いますが、あの“謎の箱”が『夜顔』にも登場します。お楽しみに!

・・・でも箱の中身は、簡単には明かされない。それは人生の秘密なのかもしれません。

さあ、今週はどっぷりと、2人の巨匠の世界に浸ってください。

(sone)


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