【2019/11/16(土)~11/22(金)】『COLD WAR あの歌、2つの心』+『幸福なラザロ』 // 特別レイトショー『私の20世紀』

幸福なラザロ
Happy as Lazzaro

アリーチェ・ロルヴァケル監督作品/2018年/イタリア/127分/DCP/ビスタ

■監督・脚本 アリーチェ・ロルヴァケル
■撮影 エレーヌ・ルヴァール
■編集 ネリー・ケティエ
■音楽 ピエロ・クルチッティ

■出演 アドリアーノ・タルディオーロ/アニェーゼ・グラツィアーニ/アルバ・ロルヴァケル/ニコレッタ・ブラスキ/ルカ・チコヴァーニ/セルジ・ロペス/トンマーゾ・ラーニョ

■2018年カンヌ国際映画祭脚本賞受賞/シカゴ映画祭最優秀作品賞受賞/ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞外国語映画トップ5選出

©2018 tempesta srl ・ Amka Films Productions・ Ad Vitam Production ・ KNM ・ Pola Pandora RSI ・ Radiotelevisione svizzera・ Arte France Cinema ・ ZDF/ARTE

【2019年11月16日から11月22日まで上映】

その人は疑わない、怒らない、欲しがらない。人は愚か者と呼ぶかもしれない。これはそんな人の物語。

時は20世紀後半、渓谷で外の世界と隔絶されたインヴィオラータ村(「汚れなき村」の意)。村人たちは領主であるデ・ルーナ侯爵夫人に支配されていた。彼らの中に誰よりも働き者の若い農夫がいた。彼の名はラザロ。お人好しが過ぎるあまり仲間から軽んじられ、仕事を押し付けられていた。

ある時、侯爵夫人の美しい息子タンクレディが町からやってくる。タンクレディはラザロを仲間に引き入れて自身の誘拐騒ぎを演出し、二人は強い絆で結ばれるようになる。その頃誘拐事件を発端に、村の存在が、領主による大規模な労働搾取の事件現場として世の中に報道される。結局村人たちは、揃って住み慣れた村から出ることになるのだが、ラザロだけは…。

実際に起きた詐欺事件から着想された 寓話的ミステリー。ラザロの無垢なる魂がもたらす圧倒的な幸福感に満たされる――。

本作は、前作『夏をゆく人々』で鮮烈な印象を残し、世界が注目した才能アリーチェ・ロルヴァケル待望の監督最新作。2018年カンヌ国際映画祭では脚本賞を受賞。北米公開時には、マーティン・スコセッシが絶賛し、映画完成後にプロデューサーに名乗りを上げる異例のバックアップをするなど、観た人を感動の渦に巻き込んでいる。

1980年代初頭にイタリアで実際にあった詐欺事件を知った監督の驚きから生まれた本作。人間が享受してきた文明はそのスピードを加速させ、人間を疲弊させ、世界を荒廃させた。富める者はさらに富み、持たざる者はさらに失う現代に、世界をありのままに見つめるラザロの汚れなき瞳はあまりにも衝撃的だ。その無垢なる魂は観る者を浄化し、かつて味わったことのない幸福感を与えてくれるだろう。

ラザロ役のアドリアーノ・タルディオーロは、高校在学中に1000人以上の同世代男子の中から監督に発掘された新星。その無垢な瞳は見る者の心を溶かし、まさに現代に蘇ったラザロを体現し圧倒的だ。また今やイタリア映画界を代表する女優であり、監督の実の姉であるアルバ・ロルヴァケルが前作に続いて出演。侯爵夫人をロベルト・ベニーニの公私にわたるパートナーであり、『ライフ・イズ・ビューティフル』などで知られる女優ニコレッタ・ブラスキが演じる。 

COLD WAR あの歌、2つの心
Cold War

パヴェウ・パヴリコフスキ監督作品/2018年/ポーランド・イギリス・フランス/88分/DCP/スタンダード

■監督・原案 パヴェウ・パヴリコフスキ 
■脚本 パヴェウ・パヴリコフスキ/ヤヌシュ・グロワツキ/ピョートル・ボルコフスキ
■撮影 ウカシュ・ジャル
■編集 ヤロスワフ・カミンスキ

■出演 ヨアンナ・クーリク/トマシュ・コット/アガタ・クレシャ/ボリス・シィツ/ジャンヌ・バリバール/セドリック・カーン

■2018年アカデミー賞監督賞・外国語映画賞・撮影賞ノミネート/カンヌ国際映画祭監督賞受賞/NY批評家協会賞外国映画賞受賞 ほか多数受賞・ノミネート

【2019年11月16日から11月22日まで上映】

忘れられない歌 「2つの心」があったから…

冷戦に揺れるポーランドで、歌手を夢見るズーラとピアニストのヴィクトルは音楽舞踊団の養成所で出会い、恋におちる。だが、ヴィクトルは政府に監視されるようになり、パリに亡命する。ズーラは公演で訪れた先でヴィクトルと再会、幾度かのすれ違いを経て共に暮らし始める。しかし、ある日突然ズーラはポーランドへ帰ってしまう。あとを追うヴィクトルに、思いもかけぬ運命が待ち受けていた――。

本年度アカデミー賞3部門にノミネートされた、心と五感を刺激する極上のラブストーリー!

第71回カンヌ国際映画祭に正式出品され、見事監督賞を獲得した本作。光と影のコントラストでモノクロなのに鮮烈としか言いようのない映像と、愛し合う男女の引き裂かれてはなお一層求め合う行方の分からないストーリー展開、さらに二人の心情を奏でる音楽が絶賛された。監督は、2015年度アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『イーダ』のパヴェウ・パヴリコフスキ。物語の主人公ズーラとヴィクトルは、部分的にパヴリコフスキ監督の両親を基にしているのだと語った。

冷戦下のポーランドで恋に落ち、時代に引き裂かれたピアニストと歌手。別れと再会を繰り返して15年、過酷だがドラマティックでもあった時代に流されながらも、愛を知る者なら誰もが魂を揺さぶられる「2つの心」という名曲で結ばれ、互いへの燃え上がる想いだけは貫こうとする二人を描く。民族音楽と民族ダンス、さらにジャズにのせて、髪の毛1本、草の葉1枚、そよぐ風と揺れる水面まで、美しい映像で綴る極上のラブストーリー。

【特別レイトショー】私の20世紀 4Kレストア版
【Late Show】 My 20th Century

イルディコー・エニェディ監督作品/1989年/ハンガリー・西ドイツ/102分/DCP/R15+/スタンダード

■監督・脚本 イルディコー・エニェディ
■撮影  ティボル・マーテー
■音楽 ラースロー・ヴィドツキー

■出演  ドロタ・セグダ/オレーグ・ヤンコフスキー/パウルス・マンカー/ペーテル・アンドライ

■1989年カンヌ国際映画祭カメラドール受賞

© Hungarian National Film Fund- Film Archive/photo:István Jávor

【2019年11月16日から11月22日まで上映】

それは初めて見る あたたかな光

エジソンが発明した電球のお披露目に沸き立つ1880年、ハンガリー・ブダペストで双子の姉妹が誕生した。リリ、ドーラと名付けられた双子は孤児となり幼くして生き別れる。1900年の大晦日、気弱な革命家となったリリと華麗な詐欺師となったドーラは偶然オリエント急行に乗り合わせた。ブダペストで降りた双子は謎の男性Zと出会う。Zは彼女たちを同一人物と思い込み二人に恋をするのだが…。

『心と体と』エニェディ監督の伝説的デビュー長編作!

2017年ベルリン国際映画祭金熊賞〈最高賞〉受賞、2018年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作『心と体と』で注目されたハンガリーの鬼才イルディコー・エニェディ。『私の20世紀』は彼女のデビュー長編作であり、1989年カンヌ国際映画祭でカメラドール〈新人監督賞〉を受賞し、世界的に注目を浴びた作品だ。

物語は19世紀末から20世紀の始まりを双子の姉妹とともに辿る。マッチから電球へ、ロバから汽車へ、伝書鳩から電報へ。夢のような技術の発展とともに人間は何を失ったのか——。ポーランド人女優ドロタ・セグダが双子とその母の3役を、『鏡』『ノスタルジア』などタルコフスキー作品でお馴染みのオレーグ・ヤンコフスキーが謎めいた男Zを演じている。怒涛の20世紀の幕開けをつげる奇跡の映画が、21世紀の今蘇る!