早稲田松竹クラシックスvol.225/ジャック・リヴェット監督特集

11/16(土)・18(月)・20(水)・22(金)
彼女たちの舞台10:0016:15
パリでかくれんぼ13:0519:20
~22:10
11/17(日)・19(火)・21(木)
地に堕ちた愛10:0016:30
シークレット・ディフェンス13:1519:45
~22:40

▼チケット販売時刻▼

・各プログラム、初回10:00からの二本立て >>> 9:20
・それ以降の回/ラスト1本 >>> 各回その直前の回が始まって10分後

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<ジャック・リヴェット プロフィール>

1928年3月1日、フランス北部の都市ルーアンに生まれる。49年にパリのシネマテークでフランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメールらに出会う。ロメールが主宰するシネクラブ・デュ・カルティエ・ラタン発行の機関誌「ラ・ガゼット・デュ・シネマ」に携わるものの、「カイエ・デュ・シネマ」誌の創刊に合わせ同誌は廃刊、以後「カイエ」誌にて多くの優れた映画批評を執筆。63年から3年間に渡って「カイエ」誌の編集長を務めている。

映画監督としては49年に初の短編を、そして56年にはクロード・シャブロル製作で『王手飛車取り』を発表。60年に『パリはわれらのもの』で長編映画デビュー。以降、内容が反宗教的と判断され一時上映禁止となったアンナ・カリーナ主演の『修道女』(66)や、12時間を超える長尺作『アウト・ワン』(71)、「不思議の国のアリス」に着想を得た『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(74)など、ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちの中でも際立って独創性に溢れた作品を手掛ける。その後も『地に堕ちた愛』(84)、『彼女たちの舞台』(88)といった意欲作を発表、中でも第44回カンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞した『美しき諍い女』(91)は我が国でも多くの観客を集めた。2000年代に入っても創作意欲は衰えず、『恋ごころ』(01)、『ランジェ公爵夫人』(07)などで瑞々しい感性を見せるも、2016年1月29日、パリにて死去。87歳没。

もっさ

ジャック・リヴェットの映画って、なんだか秘密基地みたい。めくるめく空想の世界を繰り広げて、自分たちだけのお城を築き、「ここだけの話…」と秘密を共有するかのような。すっかり忘れてしまっていた冒険心が、むくむくと顔を出した。あぁ、楽しい。映画を観ながら、いろんなところへ興味が移る心が忙しい。全く想像もできない展開に驚き、気になって心に留めておいた付箋は特に回答を得られず付けっぱなし。なのに! 好きなシーンのハイライトが私の頭の中でぐるぐるめぐりだす。

ミュージカルコメディと言うから、さぞポップなのかと期待していた『パリでかくれんぼ』は、前半とても静かで肩透かし…と思えば、急に歌って踊りだす女優たちに釘づけ。衣装も小道具も、パリの街並みまでもがいちいち可愛くて目移りしてしまう。『彼女たちの舞台』は演劇学校で稽古に奮闘しながら、共同生活をする女子たちのあれこれを描く青春群像劇であり、不穏な空気を纏ったミステリー・サスペンスでもある。稽古場のピリピリした空気にドキドキするし、思ったことをズバッと口にする彼女たちの会話にヒヤヒヤもする。舞台を作り上げて上演するまでの一週間を描く『地に堕ちた愛』では、斬新な舞台演出に目を見張ってしまう。さらに現実と虚構が入り乱れるという映画の演出もさることながら、舞台であるお屋敷も立派で見応えたっぷり。『シークレット・ディフェンス』は、最初から最後までがっつりサスペンスフルなドラマで目が離せない。一方で、主人公の寝巻が和柄の浴衣なことや、特急電車(日本の新幹線的な?)の車内の様子が垣間見れること、朝食のパンが薄いな~と思ったり、ほかの作品でもよく出てくるカフェオレボウルの登場にいちいちときめいてしまったり…etc. ストーリーとは別軸で気になるポイント満載だ。

「リヴェット作品は難解だ」そんな風に語られることが多い。きっとこうなるだろう、という予想を立てることはおろか、どうなるか分からない…いや、どうなったのかさえも分からない作品もある。映画とは、物語とは、人生とは…“何か”受け取らねばと思って鑑賞していても、すっかり“リヴェットの迷宮”に迷い込んでしまうのだ。気が付けば物語は終わっていて「“何か”ってなんだい? そんなの、しゃらくせぇ!」と蹴散らされた気分だ。ひとつ言えるとしたら、どの作品も主人公の女性たちは、芯が強くて美しい。弱気になった後も立ち上がり、迷ったとしても突き進む。そんな彼女たちが自由に羽ばたく様子が実に爽快だ。あぁ、そうか。ジャック・リヴェットの映画は枠に囚われていないんだ。だから、なんのルールにも縛られない、だけど好きなことにどん欲でいられた子どもの頃に作った、いつかの秘密基地みたいだなって思ったんだよなぁ。

今週の早稲田松竹はジャック・リヴェット監督特集。かわいくて、楽しくて、ドキドキのいっぱい詰まった、リヴェット・ワールドにぜひお越しください。

彼女たちの舞台
The Gang of Four

開映時間 【11/16(土)・18(月)・20(水)・22(金)】10:00 / 16:15
ジャック・リヴェット監督作品/1988年/フランス・スイス/162分/DCP/ビスタ

■監督 ジャック・リヴェット
■脚本 ジャック・リヴェット/パスカル・ボニツェール /クリスティーヌ・ロラン
■撮影 カロリーヌ・シャンプティエ
■編集 カトリーヌ・クズマン
■音楽 モンテヴェルディ

■出演 ビュル・オジェ/ロランス・コート/フェイリア・ドゥリバ/ベルナデット・ジロー/イネス・デ・メディロス/ナタリー・リシャール

■オフィシャルサイト(「もうひとつのジャック・リヴェット傑作選2024」)
https://jacquesrivette2024.jp/

■パンフレット販売なし

©1988 PIERRE GRISE PRODUCTIONS
©2017 Les Films du Veilleur

現実と虚構のはざまで織りなされる 彼女たちの物語

女の子だけの演劇学校に通うアンナ、クロード、ジョイス、ルシアの四人組は、パリ郊外の屋敷で共同生活をおくっている。ある日、同じ演劇学校の生徒で、わけありの恋人がいるというセシルが不可解な犯罪に巻き込まれたとの噂が。同じころ、四人の彼女たちに謎めいた男がつきまとうようになって──。

男の狙いは? 犯罪の正体は? グレーに沈むパリの街。現実と虚構が交錯する、不安な空気がただようミステリーであり、心理ドラマでありながら、名キャメラマン、カロリーヌ・シャンプティエがとらえる官能的な色彩のコントラストに加え、等身大でキュートな彼女たちの衣装にインテリアと、さまざまなディティールも楽しく心踊る一作。演劇学校の先生役に、リヴェット作品に欠かせない名優ビュル・オジェ。主役を演じる女優たち五人の鮮やかな個性にも注目。

パリでかくれんぼ
Up, Down, Fragile

開映時間 【11/16(土)・18(月)・20(水)・22(金)】13:05 / 19:20(~終映22:10)
ジャック・リヴェット監督作品/1995年/フランス/169分/DCP/ビスタ

■監督 ジャック・リヴェット
■脚本 ロランス・コート/マリアンヌ・ドニクール/ナタリー・リシャール/パスカル・ボニゼール/クリスティーヌ・ロラン/ジャック・リヴェット
■撮影 クリストフ・ポロック
■音楽 フランソワ・ブレアン

■出演 ナタリー・リシャール/マリアンヌ・ドニクール/ロランス・コート/アンナ・カリーナ

■オフィシャルサイト(「もうひとつのジャック・リヴェット傑作選2024」)
https://jacquesrivette2024.jp/

■パンフレット販売なし

©Pierre Grise Productions, 1995.
©2019 Les Films du Veilleur

パリを舞台にミステリアスな冒険譚 生き生きと歌い踊るミュージカル!

パワフルな不良少女ニノン、五年間の昏睡状態から目覚めたルイーズ、「本当の母親」を探しているイダ。そして、彼女らを結びつけるひとりの男……。『セリーヌとジュリーは舟でゆく』『北の橋』『彼女たちの舞台』と、女性たちがパリを舞台に、ミステリアスな冒険に繰り出すさまを描くリヴェット監督。荷物に貼られる「こわれもの注意」、直接的には「高い・低い・傷つきやすい」の原題をもつ本作は、三人のヒロインが図書館へ、公園へ、クラブへ動きまわって、ある時はローラースケートで滑り、歌い、生き生きと舞うミュージカル!

主演の女優たち三人も脚本執筆に参加した。音楽も主役のひとりである本作には、クラブ歌手役でシャンソン歌手エンゾ・エンゾ、そして『修道女』以来20年ぶりのリヴェット映画への出演となる、ヌーヴェル・ヴァーグの女神アンナ・カリーナも特別出演。魅惑の存在感を放っている。

地に堕ちた愛 完全版
Love on the Ground

開映時間 【11/17(日)・19(火)・21(木)】10:00 / 16:30
ジャック・リヴェット監督作品/1984年/フランス/176分/DCP/ビスタ

■監督 ジャック・リヴェット
■脚本 パスカル・ボニゼール/マリル・パロリーニ/シュザンヌ・シフマン/ジャック・リヴェット
■撮影 ウィリアム・リュプチャンスキー/カロリーヌ・シャンプティエ
■音楽 フランソワ・ブレアン

■出演 ジェラルディン・チャップリン/ジェーン・バーキン/アンドレ・デュソリエ/ジャン=ピエール・カルフォン/イザベル・リナーツ/サボー・ラースロー

■オフィシャルサイト(「もうひとつのジャック・リヴェット傑作選2024」)
https://jacquesrivette2024.jp/

■パンフレット販売なし

©1983LACECILIA
©2018 Les Films du Veilleur

リヴェットの遊びごころと 実験精神満載の愛憎劇

ある戯曲を改作して上演していた女優のシャルロットとエミリーは、その戯曲の作者クレマンに呼ばれ、彼の邸宅で新作を演じることを提案される。しかしラストは決まっておらず、女性の役はひとつしかない。訳の分からぬまま1週間後の本番に向けて稽古を始めるふたりだったが、屋敷のいわくありげな住人たちと生活を共にするうち、演目と現実がリンクしていることに気づき始める……。

カメラはほとんど屋敷の敷地を出ることはないが、限られた空間を縦横無尽に使って繰り広げられる心理戦。幻視や幻聴、手品、忽然と“消えた”女の正体。いくつもの謎が散りばめられ、役割やパートナーは絶えず入れ替わり、リアルと虚構は曖昧になる。ジェラルディン・チャップリンとジェーン・バーキンというふたりのミューズを得たリヴェットの遊び心と実験精神満載の愛憎劇。

シークレット・ディフェンス
Secret Defense

開映時間 【11/17(日)・19(火)・21(木)】13:15 / 19:45(~終映22:40)
ジャック・リヴェット監督作品/1998年/フランス/173分/DCP/ビスタ

■監督 ジャック・リヴェット
■脚本 パスカル・ボニゼール/エマニュエル・クオー/ ジャック・リヴェット
■撮影 ウィリアム・リュプチャンスキー
■編集 ニコール・ルブシャンスキー
■音楽 ジョルディ・サバール

■出演 サンドリーヌ・ボネール/イエジー・ラジヴィオヴィッチ/グレゴワール・コラン/フランソワーズ・ファビアン

■オフィシャルサイト(「もうひとつのジャック・リヴェット傑作選2024」)
https://jacquesrivette2024.jp/

■パンフレット販売なし

©1997 PIERRE GRISE PRODUCTIONS/LA SEPT CINÉMA, T&C FILM AG
©2019 Les Films du Veilleur

復讐の舞台への列車がいま 動きだす──

研究所に勤めるシルヴィのもとに、ある日弟のポールが訪ねてくる。切羽詰まった表情で彼が語ったのは、事故によるものと思われていた父の死は、実は彼の右腕だった男ヴァルサーの仕業だったという驚くべき真相。いきり立つポールに先回りし、ヴァルサーが暮らす田舎の古城にひとり向かったシルヴィだったが、思いがけない事態に巻き込まれていく───。

魔術師ジャック・リヴェットが放つ大傑作サスペンス!

その魅惑的な映像マジックによって、長年にわたり映画ファンを夢中にさせてきたフランスの巨匠、ジャック・リヴェット。本作はリヴェット監督の後期を代表するサスペンスの傑作にも関わらず、長らく日本未公開だったいわくつきの作品。真実を追う姉弟、謎多き母親、幼少期に自殺したもうひとりの姉、父の死に深く関わる男。まるでギリシャ神話やシェイクスピア劇のような復讐譚として出発する物語も、リヴェットの手にかかれば亡霊のような人物たちが立ち現れては行き交う、美しい迷宮へと姿を変えていく。それぞれの思惑が対峙する古城とシルヴィが歩きまわるパリの街並み、過去と現在、現実と別天地とを結びつける電車を用いたシークエンスは本作の白眉で、これぞ映画といった魅力に満ちあふれている。

シルヴィをクールに好演するのは『冬の旅』『仕立て屋の恋』などで知られ、監督としても活躍する女優サンドリーヌ・ボネール。シルヴィの父殺しの疑いをかけられるキーパーソンの男、ヴァルサー役にはジャン=リュック・ゴダール監督『パッション』で知られるポーランドの名優、イエジー・ラジヴィオヴィッチ。またエリック・ロメール監督『モード家の一夜』のフランソワーズ・ファビアンが短い出演時間ながら曲者っぷりを発揮しているのも見どころのひとつ。<シークレット・ディフェンス=秘められた防衛>とはいったい誰が何のために仕組んだものなのか? そして陰謀と愛憎が絡みあう果てにシルヴィがたどり着く衝撃の結末とは? ヌーヴェル・ヴァーグ随一の魔術師、ジャック・リヴェットの真骨頂を目撃せよ!