【2019/10/29(土)~10/25(金)】『グリーンブック』『ビリーブ 未来への大逆転』

もっさ

今週お届けする映画は、実話をもとにした作品『グリーンブック』と『ビリーブ 未来への大逆転』の二本立てです。テーマは“差別のない未来を歩く、私たちのためのガイドブック”。差別をテーマに扱う作品ではありますが、社会派映画というよりは、差別と向き合った人たちを描いたヒューマンドラマ。どちらも近くで見てきた家族が脚本を担当している、愛情の詰まった作品です。

『グリーンブック』は1962年のアメリカが舞台。ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒をしていたイタリア系アメリカ人、トニー・バレロンガは、黒人の天才ピアニスト、ドクター・シャーリーの運転手として雇われ、人種差別の根強い南部をツアーして回ることに。映画ではその2か月の旅を通して芽生えた友情を描いています。

脚本を手掛けたのは、トニーの実の息子ニック・バレロンガ。その当時5歳だったニックは、父トニーから何度となくこの話を聞かされていたのだといいます。父親の生き方そのものを変えたこの旅を、いつか映画化したいと考えていた彼は、幼いころからふたりの会話をテープに録音などして記録していたのだそうです。

映画化にあたり、ニックは彼らのその後の活躍を描きたい気持ちもあったといいます。だけど、シャーリーは出会いからツアーが終わるまでの2か月間を語るだけでいいと言ったのだそうです。映画を観れば、この2か月が彼らにとってどれだけ大切な時間で、その後に影響したのかが分かるはず。

いっぽう『ビリーブ 未来への大逆転』は、アメリカの女性をリードする存在である86歳の現役最高判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの若き日に焦点を当て、彼女が1970年代に挑んだ史上初の〈男女平等〉裁判の行方を描きます。

脚本を手掛けたのはルースの甥であるダニエル・スティエプルマン。ルースの夫マーティンの葬儀に出席したときに「ルースとマーティンが一緒に手掛けた訴訟の中で、唯一ふたりが議論になったものがある」という話を聞き、映画化に向けて脚本を書き始めたのだといいます。

いまやアメリカではアイコン的存在にもなっているルースですが、実は彼女自身は控えめな性格。そんな彼女を支え、前に押し出してくれたのは夫のマーティンでした。彼は妻の才能にもいち早く気づき、この時代には珍しく率先して家事や育児を担って彼女の活躍を応援してくれました。ルース本人も語っていますが、彼無くしては今のルースは存在しないと言えるでしょう。

差別の壁は、まだまだ無くなることはありません。けれど、トニーとシャーリーのように互いの違いを笑い合い、認め合えたら、ルースとマーティンのように互いの良さを引き出し支え合えたら、きっと乗り越えられる。そんな勇気と優しさをくれる物語です。

ビリーブ 未来への大逆転
On the Basis of Sex

ミミ・レダー監督作品/2018年/アメリカ/120分/DCP/ビスタ

■監督 ミミ・レダー
■製作総指揮・脚本 ダニエル・スティエプルマン
■撮影 マイケル・グレイディ
■編集 ミシェル・テゾーロ 
■音楽 マイケル・ダナ

■出演 フェリシティ・ジョーンズ/アーミー・ハマー/ジャスティン・セロー/ジャック・レイナー/ケイリー・スピーニー/サム・ウォーターストン/キャシー・ベイツ

© 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.

【2019年10月19日から10月25日まで上映】

彼女の物語が、世界を変えた——

貧しいユダヤ人家庭に生まれたルース・ギンズバーグは、「すべてに疑問を持て」という亡き母の言葉を胸に努力を重ね、名門ハーバード法科大学院に入学する。1956年当時、500人の生徒のうち女性は9人で、女子トイレすらなかった。家事も育児も分担する夫のマーティンの協力のもと首席で卒業するが、女だからというだけで雇ってくれる法律事務所はなかった。

やむなく大学教授になったルースは、70年代になってさらに男女平等の講義に力を入れる。それでも弁護士の夢を捨てられないルースに、マーティンがある訴訟の記録を見せる。ルースはその訴訟が、歴史を変える裁判になることを信じ、自ら弁護を買って出るのだが──。

1970年代アメリカ。世紀の<男女平等>裁判に挑んだ、女性弁護士の爽快な感動実話。

時は1970年代、アメリカ。女性が職に就くのが難しく、自分の名前でクレジットカードさえ作れなかった時代に、弁護士ルース・ギンズバーグが勝利した、史上初の〈男女平等〉裁判。なぜ、彼女は法の専門家たちに〈100%負ける〉と断言された上訴に踏み切ったのか? そして、どうやって〈大逆転〉を成し遂げたのか? 監督は『ディープ・インパクト 』『ペイ・フォワード 可能の王国 』のミミ・レダー。ルース同様、女性として、母親として、妻としての顔を持ちながら、映画監督としての道を歩み続けてきたレダー監督がメガホンを取った。さらに脚本は、主人公のルース・ベイダー・ギンズバーグの甥であるダニエル・スティエプルマンが担当している。

ルースを演じるのは、『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞にノミネートされたフェリシティ・ジョーンズ。彼女を信じ、支え続けた夫のマーティンには『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマー。さらに、『ミザリー』のオスカー女優キャシー・ベイツが伝説の弁護士役で出演している。

貧しさと差別をバネに、弱い立場の人々と手を組んで、権力に立ち向かうルースの逆転劇に、心の拳を高く振り上げずにはいられない。

グリーンブック
Green Book

ピーター・ファレリー監督作品/2018年/アメリカ/130分/DCP/ビスタ

■監督 ピーター・ファレリー
■脚本 ニック・バレロンガ/ブライアン・カリー/ピーター・ファレリー
■撮影 ショーン・ポーター
■編集 パトリック・J・ドン・ヴィト
■音楽 クリス・バワーズ

■出演 ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ/リンダ・カーデリーニ/ディミテル・D・マリノフ/マイク・ハットン
 
■2018年アカデミー賞作品賞・助演男優賞・脚本賞受賞、主演男優賞・編集賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞作品賞(コメディ・ミュージカル)・助演男優賞・脚本賞受賞ほか2部門ノミネート/英国アカデミー賞助演男優賞受賞ほか3部門ノミネート ほか多数受賞・ノミネート

©2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER
DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

【2019年10月19日から10月25日まで上映】

行こうぜ、相棒。あんたにしかできないことがある。

時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。

ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈グリーンブック*1〉を頼りに、出発するのだが─。

*1 :グリーンブックとは、1936年から1966年までヴィクター・H・グリーンにより毎年出版された黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブック。ジム・クロウ法の適用が郡や州によって異なる南部で特に重宝された。

アカデミー賞作品賞受賞! コメディの名手ピーター・ファレリーが名優二人を主演に贈る、痛快で爽快なロードムービー。

監督は『メリーに首ったけ』、『ジム・キャリーはMr.ダマー』などコメディで知られるピーター・ファレリー。キャリア初の感動作に挑戦した本作は、アカデミー賞前戦とも言われるトロント国際映画祭で最高賞にあたる観客賞を受賞したのを皮切りに、ゴールデン・グローブ賞など賞レースを席巻。ついに2018年のアカデミー賞で作品賞を受賞した。

トニーとシャーリーを演じるのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、『イースタン・プロミス』のヴィゴ・モーテンセンと『ムーンライト』のマハーシャラ・アリ。二人の幸せな奇跡の物語を観る者の心にまっすぐ届けてくれる。マハーシャラ・アリは『ムーンライト』に続いて二度目のアカデミー賞助演男優賞に輝いた。

異なる世界に住む二人の壮大なズレに笑い、ツアーの本当の目的に胸を熱くし、極上のラストにスタンディングオベーションを贈らずにいられない、痛快で爽快、驚きと感動の実話!