しかまる。
聡明で力強く、自分の手で未来を切り開く女性像は現代では当たり前になりつつあり、映画においても定番のテーマなのではないでしょうか。今回お届けする二本でも女性の力強さが描かれていますが、一筋縄ではいきません。
『君の名前で僕を呼んで』でその名を世界に知らしめたイタリア出身のルカ・グァダニーノ監督と、『ロブスター』を初め、一貫した独特の世界観で作品を撮り続けるギリシャの鬼才、ヨルゴス・ランティモス監督。映画ファンの注目を集める彼らが最新作で描く女性たちは、野心的で自分の欲望や望みの為には時に裏切り、蹴落とし、奪い合う強かで醜い側面をスクリーンで惜しみなく披露しています。
『サスペリア』は1977年のベルリン。『女王陛下のお気に入り』は18世紀初頭のイングランド。両作とも時代設定が過去の出来事でありながら、現代に通じる女性性の抑圧と解放を時に美しく、時にグロテスクに描き観客を魅了します。世界的ヒットとなったその理由は、キレイごとばかりでは済まされない、リアルに生きる女性の本音がまざまざと映し出さているからかもしれません。自らの欲望に目覚め、貪欲なまでに求める女性たち。そして待ち受ける衝撃のラスト、物語の勝者は誰なのか…。めくるめく魔女たちの狂宴、その結末をぜひ劇場でご刮目ください。
サスペリア
Suspiria
■監督 ルカ・グァダニーノ
■脚本 デビッド・カイガニック
■撮影 サヨムブー・ムックディプローム
■音楽 トム・ヨーク
■出演 ダコタ・ジョンソン/ティルダ・スウィントン/ミア・ゴス/クロエ・グレース・モレッツ/ルッツ・エバースドルフ/ジェシカ・ハーパー/エレナ・フォキナ/アンゲラ・ヴィンクラー/イングリット・カーフェン
■2018年インディペンデント・スピリット賞 撮影賞・ロバート・アルトマン賞(アンサンブル作品賞)受賞/放送映画批評家協会賞ヘア&メイクアップ賞・SF/ホラー映画賞ノミネート
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【2019年8月24日から8月30日まで上映】
その踊りは、死を招く。
1977年、ベルリンを拠点とする世界的に有名な舞踊団<マルコス・ダンス・カンパニー>に入団するため、スージー・バニヨンは夢と希望を胸にアメリカからやってきた。初のオーディションでカリスマ振付師マダム・ブランの目に留まり、すぐに大事な演目のセンターに抜擢される。そんな中、マダム・ブラン直々のレッスンを続ける彼女のまわりで不可解な出来事が頻発、ダンサーが次々と失踪を遂げる。やがて、スージーの身にも危険が及んでいた――。
『君の名前で僕を呼んで』ルカ・グァダニーノ監督が傑作ホラーを再構築!
『君の名前で僕を呼んで』で世界中で数多くの賞に輝いた名匠ルカ・グァダニーノ監督待望の最新作は、彼が25年以上前、映画監督を目指していた当初から温め続けていた念願の企画。それはなんと、若き日の彼を虜にしたダリオ・アルジェント監督の伝説の傑作『サスペリア』のリメイクだった。
アルジェント版の設定やキャラクターをベースに語られる全く新しく、予測不可能な物語。そしてレディオヘッドのフロントマンであるトム・ヨークが劇伴を初めて手掛け、作品におぞましくも官能的なメロディをのせ、新境地を開拓。ジャンルの壁や常識をことごとく破壊し、‟恐怖と戦慄”を‟愛と癒し”を描く武器に変えて、映画史上最も感動的なホラーを作り上げた。
主人公のスージー役を務めるのは、『フィフティ・シェイズ』3部作でトップスターとなり、グァダニーノ監督作『胸騒ぎのシチリア』でも好演したダコタ・ジョンソン。舞踊団を仕切る指導者マダム・ブランには、グァダニーノ監督の初長編監督作への主演以来、たびたびタッグを組んでいる個性派女優ティルダ・スウィントン。さらにリメイク版『キャリー』主演のクロエ・グレース・モレッツ、女優だけでなく国際的にモデルとしても活躍するミア・ゴスが舞踊団の若きダンサーを演じる。そしてアルジェント版『サスペリア』でスージーを演じたジェシカ・ハーパーが、クレンペラー博士の妻アンケという重要な役で登場するのも大きな見どころの一つ。
女王陛下のお気に入り
The Favourite
■監督 ヨルゴス・ランティモス
■脚本 デボラ・デイヴィス/トニー・マクナマラ
■撮影 ロビー・ライアン
■衣装 サンディ・パウエル
■出演 オリヴィア・コールマン/エマ・ストーン/レイチェル・ワイズ/ニコラス・ホルト/ジョー・アルウィン
■2018年アカデミー賞主演女優賞受賞.主要9部門ノミネート/ゴールデン・グローブ賞女優賞〈ミュージカル・コメディ部門〉受賞、3部門ノミネート/ヴェネチア国際映画祭審査員大賞・女優賞受賞/英国アカデミー賞主要7部門受賞 ほか多数受賞・ノミネート
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
【2019年8月24日から8月30日まで上映】
最後に勝つのは私。
18世紀初頭、ルイ14世が統治するフランスと交戦中のイングランドでは、揺れる国家と王女アンを、女王の幼馴染で女官長を務めるレディ・サラが操っていた。そこにサラの従妹で上流階級から没落したアビゲイルがやってきて、召使として働くことになる。サラに気に入られ侍女に昇格したアビゲイルだったが、サラが戦争終結派と続行派に分かれた権力争いに没頭しているうちに、いつしか女王の〈お気に入り〉の座をつかんでいく――。
豪華絢爛な王室を舞台に、3人の女の愛と権力の奪い合いを描く一大エンターテインメント!
2018年のヴェネチア国際映画祭で、審査員大賞と女優賞のダブル受賞を果たしたことを皮切りに、本年度の賞レースをにぎわせてきた話題作。気まぐれで病弱、それでも頑固に国を守るアン女王を演じるのは、この役でヴェネチア、ゴールデン・グローブ賞、アカデミー賞すべてで主演女優賞の栄冠を手にしたオリヴィア・コールマン。一度は没落したが、上流階級への返り咲きを狙う侍女アビゲイルを、『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞主演女優賞を獲得したエマ・ストーン。女王の心を支配し、絶大な権力を持つレディ・サラ役を、『ナイロビの蜂』でアカデミー賞を受賞したレイチェル・ワイズが演じる。さらに、彼女たちと絡み合う貴族の男たちの役で、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィンら英国美青年が出演している。
監督は、いま世界中から熱い注目を集めているギリシャの鬼才、ヨルゴス・ランティモス。『籠の中の乙女』でカンヌ国際映画祭‟ある視点”部門でグランプリ、『ロブスター』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされ、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞、さらに『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』でもカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞。誰も真似できない独自のビジョンを保ちながら、映画ファンの間で今最も注目を集める監督のひとりである。