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今週早稲田松竹で上映する映画は『The Begauiled /ビガイルド 欲望のめざめ』と『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の二本立て。

ガーリー・ムービーの旗手として、もはや巨匠の貫禄すら感じさせるソフィア・コッポラ監督が、なんとドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドの黄金コンビによる傑作スリラー『白い肌の異常な夜』をリメイクした。映画だけでなく原作に立ち返りながら、彼女が注目したのはファンズワース女学園という舞台設定だ。外部と隔たりのある女性たちの閉じきった空間と言えば、ソフィア・コッポラ監督がデビュー作から続けて描いてきた題材である。

19世紀半ばに建設されたギリシャ様式の大邸宅、メイドウッド・プランテーション・ハウスを撮影場所に選び、ヴィンテージレンズを使って撮影されたこの作品は、女性たちの知られざる歴史を繊細な光で現代に甦らせたようだ。女性たちの秘められた時間を覗きこむような体験をしながら、かすかなささやき声が聞こえてくるような静けさが、1人の男の存在で乱調へと移りつつも、美しさと狂おしさが調和しつづける。そのどこか寓話めいた語りの見事さは映画におけるサザン・ゴシックの新たな傑作と言えよう。

この時代、南部の女性たちにとっては男性に尽くすことが美徳とされていた。北軍のこの男が現れるまでは、いくらエレガントなマナーを身につけようともその手段を尽くす相手が戦争で目の前にはいなかった。彼女たちの欲望があらわになる瞬間、過剰さが運命を手から滑り落としてしまうような悲しさと恐ろしさはドン・シーゲル版とは全く異なっている。

ギリシャの鬼才、ヨルゴス・ランティモスが初めてアメリカで製作した映画は不可思議な復讐を描いたスリラーだ。彼が描くのは残酷なまでに公平な、ゲームの法則とも思えるような超自然的な力によって遂行される復讐だ。医療ミスで殺してしまった男の息子マーティンに、罪滅ぼしの気持ちから親切にし、思いつきから自分の家庭に招き入れたことをきっかけに、エスカレートしていく相手からの要求。それはほとんど自分の父親の代わりを求められているかのようだ。マーティンが宣告した内容は医師の妻と娘、息子が順番に「1. 立てなくなる 2. 何も食べられなくなる 3. 目から血を流す 4. 数時間後、死ぬ」、そして家族の1人を医師が選択して殺さなければ、この症状で1人残らず死ぬという信じられない内容だった。

「フェアではないかもしれないが、正義に近づきつつある」というマーティンが父親の身代わりを要求することの恐ろしさはその愚直さ、まっすぐさにある。いつしかその呪いのような現象は神の審判にも似た公明さで、医師の家族の欺瞞を暴いていってしまうのだ。上流階級の裕福で、安穏のした暮らしを乱す闖入者。しかし彼らが現れてから起こったことは、すべて彼らの家庭の中に「元々」潜んでいたものだったのかもしれない。

(ぽっけ)

聖なる鹿殺し
キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

THE KILLING OF A SACRED DEER
(2017年 アイルランド・イギリス 121分 DCP PG12 ビスタ) pic 2018年6月30日から7月6日まで上映 ■監督 ヨルゴス・ランティモス
■脚本 ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ
■撮影 ティミオス・バカタキス
■編集 ヨルゴス・マブロプサリディス

■出演 コリン・ファレル/ニコール・キッドマン/バリー・コーガン/ラフィー・キャシディ/サニー・スリッチ/アリシア・シルヴァーストーン

■2017年カンヌ国際映画祭脚本賞受賞・パルムドールノミネート/ヨーロッパ映画賞監督賞・男優賞・脚本賞ノミネート/インディペンデント・スピリット賞助演男優賞・撮影賞ノミネート ほか多数受賞ノミネート

©2017 EP Sacred Deer Limited, Channel Four Television Corporation, New Sparta Films Limited

彼は4つの悲劇を用意した――。

pic 心臓外科医スティーブンは、美しい妻と健康な二人の子供に恵まれ郊外の豪邸に暮らしていた。スティーブンには、もう一人、時どき会っている少年マーティンがいた。マーティンの父はすでに亡くなっており、スティーブンは彼に腕時計をプレゼントしたりと何かと気にかけてやっていた。しかし、マーティンを家に招き入れ、家族に紹介したときから、奇妙なことが起こり始める。子供たちは突然歩けなくなり、這って移動するようになる。家族に一体何が起こったのか?そして、スティーブンはついに容赦ない究極の選択を迫られる…。

第70回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞!
『ロブスター』のヨルゴス・ランティモス監督最新作
この究極の選択、あなたならどうする?

pic奇才ヨルゴス・ランティモス監督が、初めてアメリカを舞台に、コリン・ファレル、二コール・キッドマンら豪華キャストを迎えた待望の新作『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』。不条理で独創的、そして観る者に深い印象を与え、2017年カンヌ国際映画祭で絶賛を博し脚本賞を受賞した。カンヌ国際映画祭において、「ある視点」グランプリを受賞した『籠の中の乙女』、審査員賞受賞の『ロブスター』に続く3度目の受賞となった。

不穏な空気と緊張感が漂う本作は、前2作で組んだエフティミス・フィリップとのコンビで手がけたオリジナル脚本。身勝手な主人公のセリフ、神の目のような見下ろす映像、心理的に追いつめていく音楽、すべてが絡みあい見事なランティモス・ワールドが作り上げられている。

この世界観を形作るのに欠かせないのが、登場した瞬間から只者でない雰囲気をまとう謎の少年マーティン。演じるバリー・コーガンは『ダンケルク』で注目を集めた新進気鋭の俳優。彼は本作で第33回インディペンデント・スピリット賞助演男優賞ノミネートされた。

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The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
THE BEGUILED
(2017年 アメリカ 93分 DCP PG12 ビスタ)
pic 2018年6月30日から7月6日まで上映 ■監督・脚本 ソフィア・コッポラ
■製作 ソフィア・コッポラ/ユーリー・ヘンリー
■原作 トーマス・カリナン「ビガイルド 欲望のめざめ」(作品社刊)
■撮影 フィリップ・ル・スール
■プロダクションデザイン アン・ロス
■編集 サラ・フラック
■音楽 フェニックス

■出演 コリン・ファレル/ニコール・キッドマン/キルスティン・ダンスト/エル・ファニング/ウーナ・ローレンス/アンガーリー・ライス/アディソン・リーケ/エマ・ハワード

■2017年カンヌ国際映画祭監督賞受賞・パルムドールノミネート

©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

ひとりの男、狂いゆく女たち

pic1864年のバージニア州。南北戦争から隔離された女子寄宿学園に暮らす美しき7人の女性たちは、森の中で負傷した北軍兵士のマクバニーを見つけ、手当てをしてかくまうことに。突如、男子禁制の園に野生的な男性が加わったことで戸惑う女たち。ところがハンサムなマクバニーの紳士的かつ社交的な人間性が次第に明らかになるにつれ、誰もが浮き足立ち、心をときめかせるようになる。そしてそのささやかなときめきは、次第に互いを牽制しあう危険な嫉妬と野心に変化。純真な聖女たちの抑圧されていた欲望があらわになったとき、秩序を保ってきた女の園は思わぬ事態に見舞われる…。

ソフィア・コッポラが挑んだ新境地
カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した
女性の暗部をあぶり出す極上のスリラー

本作で2017年カンヌ国際映画祭の監督賞を受賞したソフィア・コッポラ。長編6作目の題材に選んだのはトーマス・カリナンの小説「The Beguiled」。1971年にドン・シーゲル監督&クリント・イーストウッド主演で『白い肌の異常な夜』として映画化されたが、ソフィアはあくまでもリメイクではなく女性視点で描くことに注力して原作小説を脚本化。これまでのイメージを大きく覆すスリラーに挑戦した。

学園をまとめる園長のミス・マーサ役にはニコール・キッドマン。そして大人から子供にまで愛想を振りまくマクバニーを演じたのはコリン・ファレル。そのほか『ヴァージン・スーサイズ』や『マリー・アントワネット』のキルスティン・ダンストが純粋な教師のエドウィナを、早熟な少女アリシアを『SOMEWHERE』のエル・ファニングが演じるなど、ソフィア作品でおなじみの女優も集結した。

うっとりするような美女たちがリボンやフリルが施されたドレスに身を包み、淑女然とした言葉遣いで会話するソフィアらしい世界観に、より精度を増した緻密かつ鋭い人物描写を融合させ、嫉妬と欲望渦巻く女性たちのダークな一面を赤裸々にあぶり出す。見るものを恐怖と耽美の世界に誘う、新境地にして集大成とも呼べる極上のスリラーが誕生した。

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