2025.07.14
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック

『Dreamin’ Wild』と『Searching b/w Finally Found Someone』
早稲田松竹では7/19(土)からビル・ポーラッド監督作『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』の上映が始まります。1979年に10代の兄弟が完全自主製作で作り上げたアルバムが、約30年後に“埋もれた傑作”として再評価され…といった実話をもとにした作品なのですが、恥ずかしながら私は未見だったので、上映を楽しみにしておりました! というのも、実は物語の主人公である兄弟ミュージシャンのDonnie & Joe Emersonのことを大分前のコラムで取り上げたことがあり(デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督作『アンダー・ザ・シルバーレイク』(2018)で名曲「Baby」を使用)、まさか彼らの物語が映画化されるとは! と驚いていました。ということで(?)『ドリーミン・ワイルド』を観る前の予習として、彼らの発表した音楽を調べて見ようと思います。
後に評価され、彼らの名前を音楽ファンに広めることとなった1979年作のアルバム『Dreamin’ Wild』。手作り感あふれつつもロック、ソウル、R&Bなどが混ぜ合わされた音楽性には、どこかセンチメンタルな印象があります。同時代的な音楽の流行といえば、パンクムーブメントから、ポストパンクとなるのでしょうか。感傷的なものを取り去り、よりタイトでシニカル、かつリズミカルなものが主流となっていたのだと思います。そう考えると、『Dreamin’ Wild』は当時の時代的なものとは切り離されていたのかもしれません。
その後、Donnie EmersonはDon Emerson名義でソロアルバムを発表しています。製作はしたものの未発表となった『Can I See You』(1983)。そしてよりカントリーミュージック色が強くなった『Through Life』(1995)と『Whatever It Takes』(1997)。調べていくとDonnie Emersonがしっかりと音楽活動を続けていたのがわかりますね。『Dreamin’ Wild』の再評価を受けて発表されたのが『Still Dreamin’ Wild: The Lost Recordings 1979-81』(2014)というアルバム。こちらは『Dreamin’ Wild』に比べると同時代的な音楽性を感じる作品になっていると思います。彼らの個性は残しつつも、より世間に名を知らしめたいという意志があるように私は感じました。
そしてなんと2024年再びDonnie & Joe Emerson名義で『Searching b/w Finally Found Someone』というシングルを発表しています。2013年6月のニューヨークで録音されたという、こちらの2曲がとんでもなく素晴らしいのです! 『Dreamin’ Wild』にあった手作り感を残しながら、シンプルかつソウルフル! 私個人としては最もお気に入りとなっています。
さて、このような感じで勝手に予習させていただきました。彼らの音楽を聞けば聞くほど、映画を観ることへのモチベーションが上がっていきますね。ちなみにレイトショーでは同監督作でありThe Beach Boysのリーダー、Brian Wilsonの半生を追った『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』も上映いたします。よろしければこちらの作品も合わせてご覧いただければと思います。
Donnie & Joe Emerson『Dreamin’ Wild』(1979)
Donnie & Joe Emerson『Still Dreamin’ Wild: The Lost Recordings 1979-81』(2014)
Donnie & Joe Emerson『Searching b/w Finally Found Someone』(2024)
Don Emerson『Through Life』(1995)
Don Emerson『Whatever It Takes』(1997)
(ジャック)