【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田 | 早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座

2026.04.02

【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田

二十四節気:春分(しゅんぶん)、末候:雷乃発声 (かみなりすなわちこえをはっす)

桜の花が咲いている時期に雨が降るのは毎年のことですが、風が強かったり、花冷えで気温が急に下がったりと、どうもお花見のような外で行う宴会に相性の良い風物詩だとは思えません。今回の「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」という天候も、春の訪れを告げる雷と、「春の嵐」と呼ばれる落雷を伴う激しい風雨がおきやすい時期です。桜の方もせっかくの花をどんなつもりで咲かせているのか不思議ですが、春の訪れを一斉に盛大に教えてくれるのはやはり魅力的なものですよね。しかし、調べてみるとソメイヨシノは花粉で受粉することができないため、「接ぎ木」をして増やすことしかできないそうで、どうやらすべて一つの遺伝子、つまりクローン(!)なのだそうです。だからこそ気温の条件が揃うと一斉に咲くということらしく、代表的な春の風物詩に意外なワードが飛びこんできて驚きました。自然と人間の生活の関係はもはや自然か人工かにも関わらず、ここまで密接なのですね。

早稲田松竹で4月11日からはじまる「世界をひらくまなざし~アノーチャ・スウィチャーゴーンポンとパヤル・カパーリヤー」という特集の中に『レモングラス・ガール』という短編があるのですが、この作品は「処女の女性がレモングラスの束を逆さに植えると雨が降らない」という迷信にまつわる現場の女性スタッフたちの逡巡や、女性が社会に負わされる役割を軽快かつ鮮やかに描き出した素敵なお仕事映画です。実はこの作品は同じ特集で上映されるアノーチャ監督の『カム・ヒア』という映画の舞台裏で製作された作品なのですが、考えてみると『カム・ヒア』には雨のシーンはありません。

私がこの2作品の関係を季節のコラムで取り上げようと思ったのは、時季によっては雨の降りやすいタイの気候でこの2つの映画のスタッフたちは、雨が降らなかったら『カム・ヒア』、雨が降ったら『レモングラス・ガール』の撮影をみんなで見守る瞬間がきっとあっただろうと想像してみると面白いと思ったからです。つまり雨を降らせないためだからという理由で、女性スタッフたちが嫌がる「レモングラス・ガール」という役割を必要としない状況を生み出しているのかもしれないな、と。自然と人間の関係から生まれた迷信をもしそんな方法で別のものに変えているのだとしたら素敵ですね。

(上田)