2025.07.24
【スタッフコラム】馬場・オブ・ザ・デッド by牛
現在当館で上映中の『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』をはじめとする音楽映画特集。上映中に流れてくる名曲の数々に心躍りっぱなしです。やはり音楽は良い…。そんなことを思いながら、そういえば最近とても印象に残る音楽映画を観たことを思い出しました。当館スタッフ内でも話題となっていた、ライアン・クーグラー監督の『罪人たち』という作品です。舞台はまだ人種差別の色濃い1930年代のアメリカ南部。双子の兄弟スモークとスタックが故郷で黒人向けの酒場をオープンするが、そこに集まったのはどうやら“招かざる者たち”で…というお話。公式サイトの言葉を引用すると、「ノンストップ・サバイバルホラー」なのですが、そう一筋縄ではいかない! と言い切れるほど様々なジャンルが散りばめられていて、中でも「音楽」がかなり重大な要素でした。個人的にとてもお気に入りの1本となったので、今回は『罪人たち』と一緒におすすめしたい、超ド級な展開に思わずビックリ! な2作品をご紹介します。
まず、この作品を観て思い出さずにはいられなかったのは、ロバート・ロドリゲス監督の『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)です。強盗殺人犯のゲッコー兄弟は、メキシコ国境を目指して逃亡を続けながら、とあるクラブで一夜を過ごすことに。しかし、そこは吸血鬼の巣窟で…!? というお話。『罪人たち』に通ずるプロットながら、ロドリゲス監督のパワフルな衝撃映像の数々に心奪われます。ゲッコー兄弟の兄を演じるジョージ・クルーニーと弟・クエンティン・タランティーノ(脚本も担当!)の他、ハーヴェイ・カイテル、ジュリエット・ルイスなどハードボイルドな豪華キャストの面々にもワクワクしちゃいますね。
そして、もし私が『罪人たち』の併映作品を選ぶなら…と勝手に妄想しているのが、ジェラルド・ブッシュ&クリストファー・レンツ監督の『アンテベラム』(22)です。黒人女性のエデンは、とある農園で囚われの身となり、過酷な労働を強いられていたが、ある日脱走を試みて…というお話。黒人差別といった重いテーマを扱いながら、中盤で思わず思考が停止してしまうほどの衝撃展開が待ち構えているのが、激オシポイントであります。『罪人たち』でも、中盤でかなりの超展開があり驚いたのですが、今思い返しても、『アンテベラム』の衝撃には勝てないかも…! と思ってしまいます。
さて、これらの作品になにか共通点はないのかなあと調べていると、クーグラー監督自身、影響を受けた作品として『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を挙げているではありませんか。ちなみに、『罪人たち』でスモーク&スタック兄弟を演じるマイケル・B・ジョーダン(一人二役!)は、「Against The Wall」(16)というブッシュ&レンツ監督の広告作品に登場しています。なにか同じルーツの上にある作品たちは、どこかで点が繋がっているのかもしれない…としみじみ感じたこの頃なのでした。
(牛)