天才と呼ばれる人間は「常識はずれ」である。
規格外の発想、素早い判断力、意志を貫き通す行動力。これらが備わっているからこそ、誰もなし得なかった成功を収めることができる。他人と同じことを考え、動いても成功はない。
Mac、iPhoneをはじめ、世界中で愛される製品を生み出した男、スティーブ・ジョブズ。彼は自身が思い描く完成形に対し、決して妥協をしない。少しでも不足している部分があれば、すぐさま部下に修正するよう命じた。言われた方にとっては無理難題な指示ばかりだ。その異常なまでの完璧主義がまったく新しい製品をつくり上げた。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』の主人公、トレーダーのマイケル・バーリは、誰も考えつかなかった経済破綻を予見し、大儲けのための賭けに出る。周囲からは「何をバカなことを」と鼻で笑われた。だがそんなこと彼はまったく気にしない。結果、彼は莫大な利益を得た。
ともに常識から大きくはずれた発想、行動だ。二人とも、とにかく他人の言うことに耳を貸さず、ひたすら我が道を行く。だから常に誰かと対立して、言い争いになる。他人=凡人の意見をイチイチ聞いていては、彼らにしか見えていないゴールにたどりつくことなどできないからだ。
ハッキリ言って、上司や友人にはしたくないタイプである。自分の上司がジョブズのような人間だったら、大概の人は逃げ出したくなるだろう(わたしなら泣いてしまうかも)。
でも映画の主人公としてはとても魅力的である。やはりわたしたちは映画のなかに、どこか「普通ではない人」を観たいと思っているからだ。周囲とぶつかり、危機に立たされ、もがきながら、彼らはどうやって成功をつかんだのか。その姿から学ぶことは多い。とてもマネできない生き方ではあるけれど。
(かわうそ)
スティーブ・ジョブズ
STEVE JOBS
(2015年 アメリカ 122分 シネスコ)
2016年7月30日から8月5日まで上映
■監督・製作 ダニー・ボイル
■原案 ウォルター・アイザックソン「スティーブ・ジョブズ」(講談社刊)
■製作 マーク・ゴードン/ガイモン・キャサディ/スコット・ルーディン/クリスチャン・コルソン
■脚本 アーロン・ソーキン
■撮影 アルウィン・H・カックラー
■編集 エリオット・グレアム
■音楽 ダニエル・ペンバートン
■出演 マイケル・ファスベンダー/ケイト・ウィンスレット/セス・ローゲン/ジェフ・ダニエルズ/マイケル・スタールバーグ/キャサリン・ウォーターストン/パーラ・ヘイニー=ジャーディン
■第88回アカデミー賞主演男優賞・助演女優賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞助演女優賞・脚本賞受賞、主演男優賞・作曲賞ノミネート ほか多数受賞・ノミネート
1984年。スティーブ・ジョブズは激怒していた。Macintosh発表会の40分前、本番で「ハロー」と挨拶するはずのマシンが黙ったままなのだ。マーケティング担当のジョアンナはカットしようと説得するが、ジョブズは折れない。そこへジョブズの元恋人が、5歳の娘リサを連れて現れる。認知しようとしないジョブズに抗議に来たのだ。混乱のなか、今度は突然胸ポケット付きの白いシャツを用意しろと指示するジョブズ。次々と繰り出す彼の不可解で強硬な要求に周りは振り回されるが…。
100年後もモーツァルトやダ・ヴィンチと並び称されるであろう天才、スティーブ・ジョブズ。2011年に56歳の若さで他界してから、彼がいかに素晴らしいマシンを作り出してきたかが様々な形で紹介されてきた。しかし『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督と、『ソーシャル・ネットワーク』の脚本家アーロン・ソーキンという異才たちが描くのは、パソコンの誕生話でも伝記でもない。人々の心をわし掴みにした伝説のプレゼン、それもジョブズの生涯で最も波乱に満ちた時期の3大製品発表直前の舞台裏だ。そこには信念を貫き通す生き様と驚嘆のビジネスセンス、さらには娘との不器用すぎる親子の愛が描かれている。
ジョブズには『それでも夜は明ける』のマイケル・ファスベンダー。ジョブズと闘いながら支え続けた部下のジョアンナに『愛を読むひと』のケイト・ウィンスレット。ジョブズ本人から頼まれて書かれたウォルター・アイザックソンによる伝記を原案に、膨大なセリフを制覇した実力派俳優の圧巻の演技とボイル監督のスタイリッシュな映像で魅せる、緊迫のエンタテインメントが誕生した。
マネー・ショート 華麗なる大逆転
THE BIG SHORT
(2015年 アメリカ 130分 シネスコ)
2016年7月30日から8月5日まで上映
■監督・脚本 アダム・マッケイ
■原作 マイケル・ルイス「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」(文春文庫刊)
■製作 ブラッド・ピット/デデ・ガードナー/ジェレミー・クライナー/アーノン・ミルチャン
■脚本 チャールズ・ランドルフ
■撮影 バリー・アクロイド
■編集 ハンク・コーウィン
■音楽 ニコラス・ブリテル
■出演 クリスチャン・ベール/スティーヴ・カレル/ライアン・ゴズリング/ブラッド・ピット/マリサ・トメイ/メリッサ・レオ/カレン・ギラン/ハミッシュ・リンクレイター/レイフ・スポール
■第88回アカデミー賞脚色賞受賞、作品賞・監督賞・助演男優賞・編集賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞作品賞・男優賞・脚本賞ノミネート ほか多数受賞・ノミネート
2005年、へヴィメタルをこよなく愛する金融トレーダーのマイケルは、返済の見込みの少ない住宅ローンを含む金融商品(サブプライム・ローン)が数年以内に債務不履行に陥る可能性があることに気付く。しかし、その予測はウォール街ではまったく相手にされなかった。そこでマイケルは“クレジット・デフォルト・スワップ”という金融取引に目をつけ、ウォール街を出し抜こうと画策する。
同じ頃、マイケルの戦略を知ったウォール街の銀行家ジャレットは、大手銀行に不信感を募らせるヘッジファンド・マネージャーのマークを説得し、“クレジット・デフォルト・スワップ”に大金を投じるよう勧める。さらに、今は一線を退いた伝説の銀行家・ベンも、この住宅バブルを好機と捉えた若き投資家たちから声をかけられ、彼らのウォール街への挑戦を後押しすることを決意する…。
『マネーボール』の原作者でもあるベストセラー作家マイケル・ルイスの著作「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」に基づく『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、100年に一度とも言われた世界金融危機の未来を予見した男たちの物語。強欲にまみれたウォール街の常識を疑い、一世一代の大勝負に打って出たアウトローたちの手に汗握る運命を映し出す。
リーマンショックの裏で本当にあった仰天秘話を極上のエンタテインメントに仕立てたこの企画にクリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、製作を兼任したブラッド・ピットという超豪華キャストが集結。金融業界の人間模様をユーモラスかつドラマチックに描き、賞レースを席巻した“世紀の大逆転”ムービーをご覧あれ!