早稲田松竹に久しぶりにやってきたホラー特集は、王道でありながらも、一味も二味もひねりがきいた通好みな二本立て! タランティーノ監督も絶賛の青春ホラー『イット・フォローズ』×グロテスク・ゴシック・ロマンスといえばこの人、鬼才ギレルモ・デル・トロ監督最新作『クリムゾン・ピーク』をお届けします!
ときめいた相手に“それ”をうつされて、生死を懸けた追いかけっこをする羽目になってしまった『イット・フォローズ』の主人公ジェイ。“それ”は誰かにこの恐怖をうつす事でしか生き残ることが出来ません。そして“それ”は普通の人間の姿で、どこからともなくしれっと、どこまででも歩いて追いかけてきます。しかも、賢いし、しつこい。
よくいるゾンビやお化けのようにワアッ!!!と襲ってくるわけじゃないんです。ドアをノックしたり、授業中は中庭で待っている礼儀正しい一面は滑稽なのですが、決して焦らず獲物を見張っています。なので画面に映る全員が“それ”に見え、どこから襲ってくるか全くわからない緊張状態に手汗、背中の脂汗は止まりません! 日常に潜んで、常に死を感じさせる“それ”との100分間レースにあなたは耐えられるでしょうか?
恋愛に疎い『クリムゾン・ピーク』の主人公イーディスが夢中になったのは、ミステリアスな英国貴族のトーマス。父親が死に天涯孤独になってしまった彼女は彼と結婚することにしました。しかし彼は大きな秘密を彼女に隠していたのです。この作品の見どころは、正直にいうと、嫁ミア・ワシコウスカVS義姉ジェシカ・チャステインの嫁義姉問題の構図ではないでしょうか。ミアの『アリス・イン・ワンダーランド』に代表される孤高で気高く、強くくじけないキャラクターは今作もいかんなく発揮されています。そんな彼女に立ち向かうのが『ゼロ・ダーク・サーティ』『インターステラー』でお馴染みの賢く、強く、朗らかなジェシカ・チャステイン。二人の間に挟まっているトーマス役のトム・ヒドルストンがヒロインに見えるほど、女性が戦い、活躍する新しいおとぎ話なんです。
王子様を見つけたその後も、自分の愛や正義や幸せをとことん追い求めていく主人公の姿はとても痛快! そして、ギレルモ・デル・トロ監督ならではの過激でグロテスクな表現は今まで以上に盛りだくさん! 20世紀初頭を舞台にしたロマンチック・ゴシック・ホラーでありながら、物語に現代的な要素を含むこの作品は監督の才能を存分に堪能することができます。
両作品とも、80年代のホラーや古典的ゴシック・ロマンスに現代的感覚を織り込んだ21世紀らしい作品です。映画愛、文学愛に溢れたオマージュが満載の、何度でも観たくなるタイムレスな魅力に溢れた二本立てをどうぞお楽しみ下さい!
クリムゾン・ピーク
CRIMSON PEAK
(2015年 アメリカ 119分 ビスタ)
2016年6月18日から6月24日まで上映
■監督・製作・脚本 ギレルモ・デル・トロ
■製作 トーマス・タル/ジョン・ジャシュニ/カラム・グリーン
■脚本 マシュー・ロビンス
■撮影 ダン・ローストセン
■編集 ベルナ・ビラプラーナ
■音楽 フェルナンド・ベラスケス
■出演 ミア・ワシコウスカ/ジェシカ・チャステイン/トム・ヒドルストン/チャーリー・ハナム/ジム・ビーヴァー/バーン・ゴーマン/ レスリー・ホープ/ダグ・ジョーンズ/ジョナサン・ハイド/ブルース・グレイ
イーディスは、幽霊を見ることができる。初めて見たのは10歳、死んだ母親だった…。やがてイーディスはトーマスと恋に落ちる。彼女の父親の不可解な死をきっかけに二人は結婚、トーマスの姉ルシールと一緒に、屋敷に暮らすことに。冬になると地表に露出した赤粘土が雪を赤く染めることから、【クリムゾン・ピーク】と名付けられた山頂にある広大な屋敷。イーディスが新たな生活に慣れるにつれ、深紅の亡霊たちが姿を現し、彼女に警告する。「クリムゾン・ピークに気をつけろ」。果たして、その言葉の意味とは? そして、この屋敷に隠された秘密とは?
ギレルモ・デル・トロ監督の力強いイマジネーションは、自ら創り出したジャンル“ゴシック・ロマンス”へとふたたび大きく舵を切った。気高いロマンスを創出しながらも、壮大な視覚表現、豊かなキャラクター造形、感動的な演技が私たちの心を鷲づかみ、最後は衝撃的な終幕へと導いてくれる。
出演は、『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ、『インターステラー』のジェシカ・チャステイン、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』のトム・ヒドルストン、『パシフィック・リム』のチャーリー・ハナム。
『デビルズ・バックボーン』『パンズ・ラビリンス』の脚本・監督や、『永遠のこどもたち』『MAMA』といったホラーサスペンスのプロデューサーとして実績のあるデル・トロ監督は、心理的な戦慄とオペラ的な優雅さをユニークに組み合わせ、ホラーストーリーを暗黒のおとぎ話への領域へと押し上げる。そのイメージは映画が終わった後でも長く心から消えないだろう。
イット・フォローズ
IT FOLLOWS
(2014年 アメリカ 100分 シネスコ)
2016年6月18日から6月24日まで上映
■監督・製作・脚本 デヴィッド・ロバート・ミッチェル
■製作 レベッカ・グリーン/ローラ・D・スミス/デヴィッド・カプラン/エリク・ロメスモ
■撮影 マイケル・ジオラキス
■編集 ジュリオ・C・ペレッツ4世
■音楽 ディザスターピース
■出演 マイカ・モンロー/キーア・ギルクリスト/ダニエル・ゾヴァット/ジェイク・ウィアリー/オリヴィア・ルッカルディ/リリー・セーペ
■2015年インディペンデント・スピリット賞監督賞、撮影賞、編集賞ノミネート/2015年放送映画批評家協会賞SF・ホラー映画賞ノミネート
19歳のジェイは男と一夜をともにするが、その後、男が豹変。縛り付けられたジェイは「“それ”に殺される前に誰かにうつせ」と命令される。“それ”は誰かにうつすことができる。“それ”はうつされた者にしか見えない。“それ”はゆっくりと歩いて近づいてくる。“それ”はうつした相手が死んだら自分に戻ってくる。そして、“それ”に捕まったら必ず死が待っている。果たしてジェイは、いつ、どこで現れるか分からない“それ”の恐怖から逃げきることができるのか――。
あまりの恐さと面白さから話題が話題を呼び、全米では急遽拡大公開となり、ボックスオフィスTOP10に3週にわたりランクイン。辛口批評家サイト「Rotten Tomatoes」でも驚異の96%フレッシュをキープし続け、各メディア・評論家からも大絶賛された本作。ホラー映画としては異例ともいえるほど映画祭で受賞&ノミネートを繰り返し、クエンティン・タランティーノ監督からも「とにかく恐い! こんな設定のホラーは観たことがない!」と太鼓判を押された。
主人公ジェイを演じるはアダム・ウィンガード監督作『ザ・ゲスト』で客人<ゲスト>の正体に気づき奮闘する長女を演じ、印象的な演技を見せたマイカ・モンロー。そして本作のメガホンをとるのは青春群像劇『アメリカン・スリープオーバー』で性と自我に目覚めるティーンたちを絶妙なタッチで描いたデヴィッド・ロバート・ミッチェル。ティーンのキャラクターがもつ独特の空気感を前作そのままに、監督が影響を受けた80年代ホラー映画へのオマージュを織り交ぜ、全く新しい青春ホラームービーがここに誕生した。