インランド・エンパイア
INLAND EMPIRE
(2006年 アメリカ 180分)
2008年4月26日から5月2日まで上映 ■監督・脚本・制作 デヴィッド・リンチ
■撮影 デヴィッド・リンチ/エリック・クレーリー

■出演 ローラ・ダーン/ジェレミー・アイアンズ/ハリー・ディーン・スタントン/ジャスティン・セロー/カロリーナ・グルシュカ/ローラ・ハリング/ナオミ・ワッツ(声の出演)

ニッキー・グレース(ローラ・ダーン)は、夫で町の実力者ピオトルケ・クロール(ピーター・J・ルーカス)と豪邸に暮らしている。ある日、訪問者#1(グレイス・サブリスキー)から不気味な予言を聞き、追い返す。

キングスリー・スチュワート監督(ジェイミー・アイアンズ)は、助監督にフレディー・ハワード(ハリー・ディーン・スタントン)を雇い、ニッキーとデヴォン・バーク(ジャスティン・セロー)を主演に「暗い明日の空の上で」をクランクインする。ところが、この映画はジプシーの民話を基にしたポーランド映画「47」のリメイクで、主演の2人が撮影中に殺されたので未完になったといういわく付きの企画であった。

マリリン・レヴィンズ(ダイアン・ラッド)のTV番組「セレブ・ショー」へ、ニッキーとデヴォンが出演する。マリリンから2人の仲を疑われて、2人は鼻白らむが、ニッキーとデヴォンは映画のストーリーとリンクするように、プライヴェートでも不倫をする。結果、ニッキーは現実と映画の区別が付かなくなっていく。

正直、この映画に関してストーリーを伝える事は無意味というか、無駄な抵抗をしている感が否めない。デヴィッド・リンチ映画といえば、現実と夢の間を行き来し、次第に境界線がなくなっていく独特のスタイルで知られているが、今作『インランド・エンパイア』ではそのスタイルが最高潮に研ぎ澄まされ、結果として今までで1番難解な作品になった、とも言われている。だが、不思議なことに1番難解でありながら今までで1番リアルな感覚を覚えるのは私だけだろうか?夢の途中で目覚め、まるで夢の続きにいるような不確かな現実…あの現実感覚をこれ程リアルに描ける人間は地球上でデヴィッド・リンチしかいないのかもしれない。


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パンズ・ラビリンス
PAN'S LABYRINTH
(2006年 スペイン/メキシコ 119分)
pic 2008年4月26日から5月2日まで上映 ■監督・脚本 ギレルモ・デル・トロ
■音楽 ハビエル・ナバレテ

■出演 イバナ・バケロ/セルジ・ロペス/マリベル・ベルドゥ/ダグ・ジョーンズ/アリアドナ・ヒル/アレックス・アングロ/ロジェール・カサマジョール

イマジネーションの天才が奇跡の大傑作を生み出した!!!
必見のダークファンタジー!!!

1944年のスペイン。内戦で優しかった父を亡くしたオフェリアは、母カルメンの再婚相手、独裁者フランコに心頭するビダル大尉の元に身を寄せる。大尉の子供を宿した母は日に日に衰弱し、その義父は残忍な本性をオフェリアにちらつかせる。孤独と不安に苛まれ、森を彷徨うオフェリアが足を踏み入れたのは謎めいた迷宮(ラビリンス)。驚く彼女の前に山羊の姿をしたパンが現れ、夢のような言葉を囁く。「あなたは魔法の国のプリンスかもしれない。」空想好きなオフェリアは、その言葉を真実だと思った。少なくとも、今自分が暮らしている現実の世界よりリアルに思えたのだ…。

天才/鬼才 ギレルモ・デル・トロは人間の真実を知っている。神話は国境を越え、文化を越え、我々の心に届くことを。かの伝説的SF映画『スター・ウォーズ』の監督、ジョージ・ルーカスがストーリー構成、及びビジュアルイメージにおいて、古今東西の神話や民話から、物語の共通性を抽出し、神話に共通するストーリーパターン(原質神話)を利用したと言われているのは有名な話である。それと同じように、今作『パンズ・ラビリンス』においてギレルモ・デル・トロはパン<牧神>の神話をイメージしてストーリー構成、及びビジュアルイメージを膨らませていったと語っている。

パン<牧神>の神話がどのようなストーリーかは割愛するとして、『パンズ・ラビリンス』が第79回アカデミー賞 3部門受賞(撮影賞、美術賞、メイクアップ賞)をはじめとして、第59回(2006年)カンヌ映画祭で20分にも及ぶスタンディングオベーションがあった事など含め世界各地の映画祭で賞賛、商業的成功も収めた理由はギレルモ・デル・トロが確信を持って使った神話の力に他ならない。

ダークファンタジーの申し子といえばティム・バートンが連想されるが、今後はギレルモ・デル・トロの名も同じく肩を並べるか、越えていくのかもしれない。そんな大傑作『パンズ・ラビリンス』をどうかスクリーンで体感して頂きたい!!!


以上、2つの迷宮があなたを待っています。そして迷宮の出口で誰かが待っているとしたら、
それはあなた自身かもしれません…。

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