ミリオンズ
MILLIONS
(2004年 イギリス/アメリカ 98分)
2006年4月15日から4月21日まで上映
■監督 ダニー・ボイル(『トレインスポッティング』『28日後…』)
■脚本 フランク・コットレル・ボイス(『バタフライ・キス』『ウェルカム・トゥ・サラエボ』)
■出演 アレックス・エテル / ルイス・オーウェン・マクギボン / ジェームズ・ネスビット
母親を亡くした12歳のアンソニーと8歳のダミアンの兄弟は新しい街に引越してきたばかり。ある朝、ダミアンのダンボールで出来た秘密基地に大量のポンド紙幣の詰まったバッグが降ってきた。イギリスの紙幣がポンドからユーロに変わるまであと12日。その前に使ってしまえ!
実利主義者の兄アンソニーは、最新式のゲームや自転車を買い、学校では金を使い権力を手に入れ、しまいには投資のために家を購入しようとする。一方、信心深く聖人マニアの弟ダミアンは、貧しい人々を助けるべきだと考えるが、この街には助けるべき貧しい人々が見あたらない。
そんな中、二人の周りに怪しい影が…。二人は無事お金を使い切れるのか?お金では解決できない大切なものとは?
ダニー・ボイルのことを人に説明するときに、ほとんどの人が口を揃えてこう説明するだろう。”トレインスポッティングのダニーボイル”と。それだけ『トレインスポッティング』は衝撃的であった、が、忘れてはいないだろうか。ダニーボイルは他にも傑作を撮っている。そう、それはダニーボイルのデビュー作『シャロウ・グレイブ』である。数ある大金を手に入れてしまった映画の中でも、会心の出来だった『シャロウ・グレイブ』。その“シャロウ・グレイブのダニー・ボイル”が、原点に帰って大金を手に入れた話をもう一度撮った。
しかし、今回のボイルは一味違う。スピード感、スタイリッシュさはそのままだが、ドラッグや狂人ウィルスなどのダークな部分は『ミリオンズ』では封印されている。それもそのはず、「自分の子供が合法的に観れる映画を作らなきゃ」と思って作られた作品なのだ。『シャロウ・グレイブ』では最終的に愛より金という結末だったが、果たして『ミリオンズ』では愛と金どちらを選択するのだろうか?また、“トレインスポッティングのダニー・ボイル”から”ミリオンズのダニー・ボイル”へと変わることができたのだろうか?
(パンプキン)
ポビーとディンガン
OPAL DREAM
(2005年 オーストラリア / イギリス 86分)
2006年4月15日から4月21日まで上映
■監督 ピーター・カッタネオ(『フル・モンティ』)
■原作・製作総指揮 ベン・ライス『ポビーとディンガン』(アーティストハウス)
■脚本 フィル・トレイル
■出演 クリスチャン・バイヤーズ / サファイア・ボイス / ヴィンス・コロシモ
(C)GAGA Communications,Inc.All Rights Reserved.「お別れだね」とキツネは言った。
「これがおれの秘密なんだ。とても簡単なんだよ。心で見なくっちゃ、よく見えない。いちばん大切なものは目に見えないんだ」
(サン=テグジュペリ『星の王子さま』)
オーストラリア、オパール採掘で有名なライトニングリッジに暮らす9歳の女の子、ケリーアンには、大切なお友達が二人います。彼らの名前はポビーとディンガン。ポビーは、赤いマントを着ていてパンクっぽい髪型をしています。ディンガンは美人で、背が高くて、おへそにきれいなオパールをはめています。ポビーもディンガンも平和主義者です。だけど、ポビーとディンガンは誰の目にも見えません。ケリーアンにしか見えないのです。
ケリーアンの11歳の兄、アシュモルはそんな妹を「イカれてる」としか思えません。ある日、ケリーアンが「ポビーとディンガンがいなくなった!」と言い出しました。いなくなった?だって始めっからいないじゃん!でも心配のあまり体調を崩したケリーアンは、日ましに弱っていってしまうのです。
酒井駒子の美しく可愛らしい表紙画が印象的な原作、『ポビーとディンガン』は、どこかに置き忘れてきた感覚を思い出させてくれるような、心に残る、でも少しネガティヴなお話でした。映画は子供二人の可愛らしさが際立つ、あたたかい良作に仕上がっています。「本人にしか見えない友達」というと、ジェームズ・スチュワートの『ハーヴェイ』を思い出しますが、こちらの方がよりシビアなリアリティを感じますね。生活かかってるかんじとか。
何を言っても誰にも信じてもらえないとき、アシュモルは初めてケリーアンの思い(=「目に見えないもの」)に気付きます。一攫千金を夢見てオパールを採掘する街の大人たちも、自分が「目に見えない夢」を求めていたことに気付くのです。『星の王子さま』のキツネは、「大切なものは目に見えない」と言いました。でもケリーアンには、ポビーとディンガンが見えています。この映画で描かれる「大切なもの」は、見えないものを信じる心です。あなたはケリーアンを信じられますか?
(mana)