【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO | 早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座

2025.08.07

【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO

「夏の野外上映」

熱い、アツい夏の8月が始まりました。私の中で、夏の映写と言ったら野外上映ですね。普段は劇場やホール、学校など屋内が多い移動映写のお仕事ですが、夏は野外上映があります。通常の屋内上映の時とは違う部分がいくつかあるのです。

上映のための準備は基本的には当日の日中に行います。炎天下での作業になるので、帽子や日焼け対策、こまめな水分補給が必須になります。まずはスクリーンの設営です。現場にもよりますが通常屋外にはスクリーンはないので、持ち込みの自立式スクリーンやロールスクリーンを、建物やトラックなどを土台に固定し設営します。もしくは、建物に白い壁があればその壁をスクリーンとして利用したりもします。大型の野外上映の時には、鉄骨と足場を組んで、その鉄骨に持ち込んだスクリーンを張ることもあります。神社の芳名板(木製の大型掲示板)の上部に下から、秋田竿燈まつりのように鉄管で持ち上げたフックと滑車を付けてスクリーンを貼ったこともあります。私は張ったことはないのですが、エアスクリーンという空気で膨らませて使用する特殊なスクリーンもあります。様々なスクリーンが屋外では登場するのです。

次にケーブルの配線です。会場にもよりますが、スクリーン周りのスピーカーの音声ケーブルや近くの建物からや電源ケーブルを映写機へ引きます。ひと巻き10~20キロ程ある蛇のようなトグロを、ヨイショ! と担ぎ結線していきます。ケーブルとの格闘が終わると汗びっしょりです。映写機はデジタルもフィルムもトラックの中や、テントなどで突然の雨でも対応できるように備えます。会場に張り巡らせたケーブルの接続部はビニールで養生を行い、雨で接触不良や漏電、お客さまが暗い野外でケーブルに引っかからないようケーブルプロテクター等での対策も併せて行います。

これで設営作業は一旦完了です。一息入れて、音響の調整や映写の映像調整を行っていきます。通常は画角からセッティングしますが、屋外なので夕暮れでやや陽が落ちてこないとスクリーンに投影する画が見えないので、音響調整後に日没の間際まで映像の調整は続きます。夕暮れと共にスクリーンに投影された映像がだんだんと見えてくるといよいよ上映スタートです。

普段の屋内上映とは勝手が変わりますが、その分様々なハプニングがつきものです。駅ビルの屋上での上映では、上映中に突然の大雨で中止になりずぶ濡れになりながら機材を逃がしたりもしました。技師の先輩たちも、「夏の暑さで上映中にフィルム映写機が画ブレを起こした時には扇風機で冷まして山田洋二監督に褒められたよ!」とか、「上野公園でボヘミアン・ラプソディーをやったら人が集まりすぎて大騒ぎだったよ!」など野外上映の武勇伝もよく聞きます。

夏の夜みんなで外に集まるお祭りのようなワクワク感、そして暗闇に映し出される映画。映写機の側の私から見えるのは、映画に一喜一憂する観客の後ろ姿です。普段と違う映画の味わいが野外上映にはあるのです。機会があれば是非体験してみて下さい。

(KANI-ZO)