【スタッフコラム】馬場・オブ・ザ・デッド by牛 | 早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座

2025.05.01

【スタッフコラム】馬場・オブ・ザ・デッド by牛

旅先で出会った恐怖映画

連休真っ只中! お天気も良く、どこか遠くへお出かけしたくなりますね。私は先日、急に思い立ち関西へ旅行に行きました。退勤後に夜行バスに飛び乗り、朝から各地を周るぞ~と意気込んでいたのですが、急に決めた旅だったこともあり、行先をあまり決めすぎないフリーダム旅スタイルです。当館旅好きスタッフの「旅先で映画館に立ち寄るのを楽しみにしている」という話を聞いてから、私もあわよくばご当地映画館を訪れてみようかな~とぼんやり考えていました。

そんな今回の旅でしたが、唯一行こうと決めていたのは、兵庫県伊丹市にある「伊丹市昆虫館」です。メインの「チョウ温室」では約1000匹の蝶たちが放し飼いされた巨大温室でその姿を間近で観察することができたり、展示室では実物の200倍スケールで再現されたミツバチの模型が展示されていたり(フサフサの毛に思わずゾワゾワ~)、見どころがたくさんあり、テンション爆上げでありました。

さて、そんな「伊丹市昆虫館」を堪能したところで、次の目的地が決まっていません。そこで、先輩の話を思い出し、近くに映画館はないかな~と調べてみたところ、なんと電車で5分ほどの場所に劇場があるではないですか! しかも、ちょうどいい時間にダリオ・アルジェント監督『4匹の蠅』の上映が…。ちょうど虫の生態について詳しくなれたところで大好きな監督の恐怖映画がやっているなんて…。これはきっと運命だ! と行かずにはいられません。急いで目的地へ向かう電車に飛び乗りました。

『4匹の蠅』(71)は、イタリアが生んだホラーの巨匠ダリオ・アルジェント監督の初期作品で、『歓びの毒牙』(69)『わたしは目撃者』(70)に続く通称“動物三部作”の最終作です(いずれも原題タイトルに動物の名前が含まれていることから)。バンドマンの主人公の身の回りで起こる奇妙な殺人事件。事件の真相に迫ろうとした人間が次々と殺害され、その影には奇妙な覆面をした人物が――というサスペンススリラーです。オネエの探偵やホームレスの友達が仲間に加わったり、キャラが濃すぎる脇役たちに困惑しながらも、アルジェント作品の醍醐味である殺しの描写は初期作品ながらキレッキレ。そんな中、犯人を突き止めるべく登場した「被害者が死の直前に見たものを網膜から読み取る装置」には度肝を抜かれました。な、なんだそれは!? そんなドラえもんの秘密道具のような装置は…と思いながら見ていると、そこには“4匹の蠅”が映っていて…!? 私は最後の最後まで犯人がわからず、最後のネタばらしで思わず「ええ~!」と声を上げてしまいそうになりました。衝撃的なラストシーンは必見です!

劇場を出るとあたりは真っ暗になっていて、帰りの新幹線に揺られながら劇中で流れていたロマンチックなエンニオ・モリコーネの音楽と共に、名(迷)シーンの数々が頭を過るのでした。知らない土地で観るアルジェント作品は、今回の旅行の思い出たちを塗り替えてしまうほど、忘れられない思い出の1本となりました。皆さまも、GWの旅先でご当地映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。思いもよらない特別な1本に出会えるかもしれませんよ!

(牛)