【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。 | 早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座

2025.06.12

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第37回「元気をくれる服」

流行の色、素材、デザイン、スタイリング…毎日色んな情報に溢れる現代。私はたまに「自分が何を着たいのか」よりも「いま何を着るべきか」という思考に陥って、ファッションを心から楽しめない時期が来てしまいます。そんな時に元気づけてくれたのは、皮肉なことにファッションの展示でした。

原宿で開催されていた「ロエベ クラフテッド・ワールド展 クラフトが紡ぐ世界」はスペイン発祥のラグジュアリーブランドであるロエベ初の大規模な展覧会。ブランド創立の歴史から、ロエベのアイコンともいえる「パズルバッグ」の製造過程まで余すところなく見せてくれました。他にもジブリ作品とのコラボなど魅力的な展示がある中で、これ無料で見ていいんですか?! と私が大興奮したのは、ジョナサン・アンダーソンが手がけたコレクションの数々。2013年からクリエイティブ・ディレクターを務め、ロエベを人気ブランドにした立役者。今年の3月に退任が発表された彼の功績を称えるかの如く、これまでデザインした服を纏ったマネキンたちがずらっと並んだ展示ブースは、足を踏み入れた瞬間に思わず「わぁ…」と感嘆の声が漏れてしまいました。

この素材でこんな形が作れるんだ! といった面白さ、カラフルで自由なフォルムの服を前に気持ちが弾みます。それだけでなく、じっくり目を凝らしてみると、パッと見ただけでは分からない遊び心あふれるディティールに気づき、だまし絵的なデザインを得意とするアンダーソン氏の魅力にあっという間に虜になってしまいました。写真撮影可能な展覧会でもなるべく網膜に焼き付けようと心がけているのですが、またいつか元気がなくなってしまった時に、この服たちからパワーをもらえるかも…と、直感的に好き! と思ったルックをパシャパシャと写真に収め大満足。

いままでは、自分が好きなファッションを身に着けることで服から元気をもらえている感覚があったのですが、自由で素敵なファッションって、見るだけでこちらを元気にしてくれるものだなと気づかされたのでした。そして、私も誰かにとって見るだけで元気を与えられるファッションが出来ていたら最高だな…とオシャレのモチベーションを一段高くしてくれた、そんな展示でした。

余談ですが、ジョナサン・アンダーソン氏は近年ルカ・グァダニーノ監督の作品『チャレンジャーズ』や『クィア/QUEER』で衣装デザインを手掛けているそう。今後の活躍がますます気になります。

(しかまる。)