2025.06.05
【スタッフコラム】この推しスター! byパズー

今月の推し「レア・セドゥ」
このコラムをはじめてからだいぶ経ちますが、まだこの人を書いていなかったのか! と驚きました。今回は現代フランス映画界No.1といっても過言ではないスター、レア・セドゥについてです。
レアの経歴に触れるにあたって、避けて通れないのが彼女の家族のお話。実はレア、超超超が付くお金持ちの家の出身。祖父は“フランスのメディア王”と異名をもつ映画会社パテの元会長。大叔父はこれまた映画会社ゴーモンの会長。母は石油開発会社創始者の孫。とにかく関係者全員が何かしらの大企業の役員みたいな、仏版Wikiに「セドゥ・ファミリー」というページも存在するほどの財閥一族なのです。凄すぎるファミリーヒストリーを辿るだけでコラムが終ってしまいそう…でもレア自身は、シャイで孤独な子供時代を過ごし、映画業界に入った時も家族から興味や期待をかけられていなかったと話しています。とはいえ最高の環境で芸術に囲まれて育ったのでしょうけど。
デビューから2、3年後の2008年、クリストフ・オノレ監督『美しい人』で注目を浴びたレア。諦念と内に秘めた情熱を併せ持ったような瞳はこの頃から変わらず、一度見たら忘れられない美しさです。世界中の監督から引っ張りだこで、現在39歳ながら出演作はすでに50作近く! その中で1本挙げるなら、やはり2013年の『アデル、ブルーは熱い色』でしょうか。監督の撮影手法や過酷な労働環境の問題がのちに明るみになり、今もう一度観返すと違う感想を抱くかもしれないけれど、レアとアデル・エグザルホプロスの魂の演技のぶつかり合いにはとにかく衝撃を受けました。
ハリウッド大作などではいわゆるパブリックイメージ的な“謎めいたセクシーな女”役が多いのですが、2022年の『それでも私は生きていく』で演じたのは、育児と父の介護、新しい恋人の出現に揺れる“普通に生きてる”女性。ピクシーカットで化粧っ気なくカジュアルなワンピースを着こなすレアはめちゃくちゃキュート! これまでの強くてクールな印象を覆し、何度もぽろぽろ涙をこぼす繊細な姿に思わずもらい泣きしちゃいました。
長年のパートナーとの間に子供も一人いますが、プライベートはあまり明かさないスタイルでほとんどゴシップはありません。そのあたりに上流階級の育ちの良さを感じますね…。オファーが絶えない彼女だけにこれからも楽しみな作品ばかりが製作・公開予定。『心と体と』のイルディコー・エニェディ監督の新作ではなんとトニー・レオン様と共演だそう♪キャー! ちなみにいま日本で公開中の『けものがいる』も150分ずーっとレア出ずっぱりの近未来SF! 3つの時代のレア様を堪能できるファン必見の作品となっております。
(パズー)
©Carole Bethuel