2025.05.29
【スタッフコラム】日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ
先日、無性に甘栗が食べたくなり、近場で買える店を調べてみたら、知っている店のほとんどがすでに閉店していたことを知り、ひそかにショックを受けました。かつてはどこの駅前にも天津甘栗の店がひっそりとあったイメージでしたが、考えてみたらもう久しく甘栗を買っていないかもしれない…。コンビニやスーパーなどでむき栗はよく見かけますが、皮付きの甘栗を扱う店はかなり減ってしまっています。
日本では甘栗のことを一般的に「天津甘栗」と呼びますが、これは日本独自のもので、中国では「糖炒栗子(タンチャオリーズ)」と呼ばれ、秋になり新栗が出回る時期に焼きたての糖炒栗子が店頭に並びます。実は天津甘栗という名称は産地からではなく、港の名前から由来がきています。その昔、中国河北省の燕山山脈付近で収穫された栗が天津に運ばれ、天津港から日本に輸入されたのですが、はじめて日本に甘栗が登場したのは1910年のこと。東京・浅草の仲見世で中国人の李金章が甘栗店「金升屋」を開いたのが最初と言われています。甘栗の作り方は独特で、鉄鍋の中に栗と小石を入れ、砂糖や水飴をかけながらじっくりと煎ることで、甘くてほっくりとしたおいしい甘栗ができあがります。ちなみに砂糖をかけるのは味付けではなく、熱した栗の皮が裂けにくくする(爆発を防ぐ)ためと、皮に光沢をつけるため。砂糖の甘味が中に染み込むことはほとんどないそうです。調べてみたら現在のようなスタイルの甘栗が登場したのは西暦13世紀の頃だそうで、そんな遥か昔から甘栗が食べられていたなんて驚きです。
今回、私はオンラインの販売でいくつか甘栗を試してみたのですが、店によって甘さの具合や特徴の違いが感じられて、同じ甘栗なのにこんなに違うんだと興味深かったです。その中でも私が特に好きだったのは、120年以上の歴史を誇る「樂天軒本店」の甘栗です。この店の甘栗は甘味が強く、私が求めていた甘栗のイメージに一番近いような気がして、「甘栗を食べたい!」という欲求を満たしてくれました。甘栗は比較的賞味期限が短いので、食べきれないときは密封容器などに入れてから冷凍庫で保存し、食べる前にフライパンで軽く煎ると、皮のパリッと感と栗のほっこり感が復活し、できたてに近い甘栗を楽しむことができます。機会があったらぜひ試してみてください。
(ちゅんこ)