【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。 | 早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座

2026.02.05

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第40回「ドラマはいつだって転がっている」

街で素敵な装いをしている人を見かけた時、「素敵ですね!」「そのスカートはどこで買ったんですか?」など、つい話しかけたくなってしまいます。突然そんなことされたら迷惑だろうな…と思い、いつもはその気持ちをぐっとこらえているのですが、先日そんな心のリミッターが外れてしまう出来事がありました。

ある休日のこと。駅に向かう途中で、目の前に素敵なコートを着たマダムが歩いているではありませんか! 明るい水色の生地に大きなシロクマがいくつも描かれたそのコートにシロクマ偏愛家の私は目が釘付けになってしまいました。どちらで購入されたのか気になり過ぎてうずうず…。勇気を振り絞って聞いてみると、マダムは「このコート、派手で目立っちゃうのよね~。」とはにかみながらノルウェーのLillunn(リルーン)というブランドであること、ウール100%で水がかかってもすぐに弾いて暖かいこと、日本では取扱いがないことなど親切に教えてくれました。

ほんの数分の出来事でしたが、マダムと別れた後、不思議と気持ちがあたたかくなりました。そして、この偶然の出会いに去年早稲田松竹で上映したショーン・ベイカー監督の『スターレット』がふと重なったのです。

主人公は21歳のポルノ女優ジェーン。彼女が部屋の模様替えのために訪れたガレージセールで、85歳の老婦人セイディから買った魔法瓶にはなんと大金が! ジェーンはお金を返そうとセイディの家を訪ねますが、「返品は受け付けない!」と門前払いされてしまいます。それでも諦めきれず、ジェーンはスーパーの買い物やビンゴ大会などセイディがいる場所へ偶然を装って現れます。最初こそ彼女を詐欺師と疑っていたセイディも次第に心を開いていき、パリ旅行の計画を立てるほど親密な関係へと発展します。

彼女たちのように、年齢も立場もまったく違う人と親しくなる機会を作ろうと思ってもなかなか出来ないだろうな…と思っていたのですが、きっとどこかに転がっていて私が見逃しているだけなのかもしれません。ジェーンみたいに偶然を装って近づく勇気も度胸もありませんが、あのマダムにいつか同じ場所で出会えたら…なんて、それこそ映画のような再会を想像してしまう、しかまる。なのでした。

(しかまる。)

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