【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田 | 早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座

2025.10.02

【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田

二十四節気:秋分(しゅうぶん)、次候:蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)

長かった夏の暑さもようやく落ち着き、秋らしくなってきましたね。秋のお彼岸を過ぎて、これからどんどん日が短くなっていきます。気温や天候が変化して夏は長く、春秋は短く感じられますが、巡る太陽の角度や日照時間はずっと変わらないのはありがたいところ。大事な季節感を失わずにすみます。この時季を【蟄虫坏戸(ちっちゅうかいこ)】と言い、巣ごもりをする虫たちが土で入口を塞いで越冬の準備をすることを表しています。巣ごもりをする虫とは、成虫で越冬するテントウムシ、カメムシ、ハチ、アリ、またクワガタの一部、そして蟄虫にはヘビやカエル、トカゲなども含まれているそうです。この天候は2月の節季である【啓蟄(けいちつ)】の初候【蟄虫啓戸(ちっちゅうけいこ)(すごもりのむしとをひらく)】と冬を挟んで対になっています。

日本には古くから虫を飼う風習があり、平安時代には多くの歌が詠まれていますが、平安貴族は虫籠に入れた虫の鳴き声を聞いて楽しむ遊びをしていたそうです。江戸時代には庶民にも広がり「虫売り」という職業があったとか。そのうちには養殖もさかんになり、スズムシや松虫、キリギリス、カンタン、ホタルなど多くの虫を取り扱っていました。「虫聴き」と言えば有名なのがラフカディオ・ハーン(小泉八雲)です。まだ日本に外国人の少ない時代に終生日本に暮らした彼(アイルランド系でギリシャ出身)が、人間の魂が蝶や蛍や蜻蛉の姿で帰還するという民俗信仰に深く共鳴し「虫を真に愛する人種は、日本人と古代ギリシャ人だけである」とまで言っていたそうです。日本の風習や物語を収集していた彼の著作には虫に関するものも多いですが、著作『怪談』は有名で、1964年に小林正樹監督(『切腹』は最近当館でも上映しましたね)で映画化されました。最後に住んだ終焉の地が大久保であったため、新宿区には彼に関する旧跡が多く残っており、小泉八雲記念公園や旧居跡、雑司ヶ谷霊園にはお墓もあります。ちょうど先日始まったNHKの朝の連続テレビ小説『ばけばけ』は名前は異なり小泉八雲と、その妻である小泉セツさんをモデルにした物語。ぜひ鑑賞後に秋の新宿巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

(上田)