2025.07.31
【スタッフコラム】うどん粉デザインばなし byうどん粉くん
来月に引越しすることが決まり、最近の休日はもっぱら部屋の荷物整理に追われているうどん粉です。長きに渡り封印されていた押入れの奥から解き放たれた大量の荷物たち。いざ広げてみると、びっくりするくらい不要なものだらけ。流れた月日がそうさせるのか、いちいち懐かしむこともなく、いい調子で断捨離していたんです。どんどん身軽になっていく爽快感に浸っていたとき、突如あらわれたのは漫画「スラムダンク」全31巻。
しかも前回の引越しの段ボールに入ったままの状態で出てきました。今の部屋で生活している間、本棚に並べられることもなく眠っていたのです。数年前の映画『THE FIRST SLAM DUNK』で盛り上がっていたときでさえ、ずーっと押入れの闇の中。なんなら我が家に存在していることすら忘れていました。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになり、作業を一時中断。とりあえず散らかっている床に全31冊をずらっと並べてみました。それを眺めていて思い出したんです。自分はこの漫画の表紙が大好きで、手放さず持っていたんだと。作品自体が色褪せない大傑作であることは無論ですが、表紙デザインも最強。自分が所有している通常の単行本に加え、スラムダンクは完全版と新装再編版が出版されています。あとに出た2バージョンの表紙もそれぞれ井上雄彦先生の描き下ろしで、各巻各キャラにフォーカスした表紙で全体の統一感を感じられる完全版、連載時には見られなかったシチュエーションでの新鮮なイラストが楽しめる新装再編版、どちらももれなく素晴らしい。連載を終えてさらにキャリアを経た井上先生が、改めてスラムダンクのキャラを描いてくれただけで感動モノであります。
それでも通常単行本バージョンに惹かれてしまうのはなぜか。今まで押入れに眠らせていた反省もかねて考えてみました。ひとつめは、表紙を眺めるだけで1巻から最終巻まで井上先生の絵柄の変遷、そして連載時ならではの熱量をぎゅっと詰め込んだ輝きを感じられるところ。だんだんと絵柄が変わっていくのは漫画あるあるですが、それを表紙でも楽しめるのはこのバージョンだけです。6年の連載で描かれたのは、春から夏までのたった3か月間。登場キャラたちのめまぐるしい成長、濃密で刹那的な瞬間を表紙からも浴びられます。ふたつめは、いろんなアプローチで表紙デザインしているところ。はじめの頃は、圧倒的な画力で少年漫画然とした正統派なデザイン、だんだんそれに加えてカラーリングやレイアウトで遊んでいるデザイン、後半はよりのびのびと楽しんでいる印象で、アートワークとしても飾りたくなるクオリティのデザインばかりです。自分のお気に入りは第29巻。主人公が所属する湘北高校バスケ部がランニングしている様子が少しラフなタッチで描かれています。躍動感がありつつも、背景を真っ白にしたシンプルなデザインで、力の抜け方がうらやましい。
新居ではちゃんと本棚に並べようと心に決めて、年季の入った漫画たちをふたたび段ボールにしまい込むうどん粉なのでした。
(うどん粉くん)